第8章 レーザーと安全・環境

7. レーザーブレイジング

著者:石川 憲

1. はじめに

 光放射技術は研究、消費者向け製品、光通信、バイオフォトニックス分野に広く展開されている。家庭から工業現場まで多様な用途に適用されている。しかし、非常に低レベルの光放射でも深刻な目や皮膚の損傷を引き起し、特に図1のように小さなスポットが網膜上に集光すると危険となる。LEDやランプ製品は、網膜上では比較的大きなスポットの像となるが、これらの光源でも網膜には永久的に損傷を起こす可能性がある、特に意図的な露光が行われるバイフォトニック研究や医学環境、無意識で行われる瞬き動作の嫌悪反応や瞳の収縮などの保護的な反応が目の動作で抑制される場合には損傷を引き起こし易い。
 非イオン化放射保護(ICNIRP)に関する国際委員会は、レーザーやLEDやランプなどの非コヒーレント広帯域の放射に対して、皮膚と目に対する安全な最大露光レベルに対するガイドラインを研究開発してきた。一般に、波長、露光持続時間、それと潜在的な損傷の場所、網膜上のスポットサイズなどが露光限界を決める関数となる。
 これらの安全な使用を可能にするため、レーザー製品は危険性に応じてクラスに分けられ、クラス毎に出カパワーは特定のレベルに制限され、各クラスによって起こり得る障害のタイプ又はレベルに関連付けられている。各クラスの放射限界は、安全な露光距離と持続時間、それと目の瞳または双眼鏡を基に制限開口を設定することにより決定されている。国際規格は従来の5段階のクラス分けから、より応用に適合した7段階の新たなクラス分けを導入した。各国はその新たな規格の運用による管理を行っている。

2. レーザー事故発生状況

 レーザー事故はレーザーの発明以来、その件数は増加してきている。2005年ILSC(国際レーザー安全会議)での米国のRockwell laser industries社の過去の統計からの発表があった。表1は、過去の判明している事故データの例である。これによれば、発表時点までの1341件がレーザー事故として集積されている。レーザー技術の研究開発が盛んなレーザー先進国が上位を占めている。
 1960年からの事故件数の統計からは、10年経過する毎に事故件数はその前の10年間の約4倍に増加している。使用さる装置の累積数の増加、レーザーの用途の拡大、レーザーパワーの増加など要因が考えられるが、レーザー安全対策の一層の努力が望まれる状況にある。
 事故に遭った職種別からは、科学者、技術者、患者、工場作業者、医師看護者、学生などの順番で事故に遭遇している件数が多い。不定形作業や直接ハイパワーを放出する医用機器の周りで発生件数が多い。年齢的には、特別な傾向はない、レーザー装置のパワーレベルではCWレーザーではパワーの大きなクラス4による障害が多いが、パルスレーザーではエネルギーによる障害発生件数上の傾向は特に見られない。これはパルスレーザーではパルス1発でも瞬間的に網膜に損傷を発生し危険性が非常に大きいからである。レーザーのタイプによる事故件数ではNd:YAGが最も危険性が高く、事故につながりやすい。障害部位からは、目が70%、皮膚が27%となっている。目の障害の場合の障害発生時の状況からは、保護めがねの不使用で障害を受けたのは84%、保護めがねを持ちながら不着用で障害発生?%、めがねを着用で特性の不整合による事故が4%を占めている。適正なめがねの選択と着用で目の事故の大部分は防止できた筈である。後遺症の事例は約半分である。図2はNd:YAGレーザーによるレンジファインダーによる網膜焼損事故の眼底写真であり、完全に視力を喪失したと報告されている。

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