第6章 材料創製
2. カーボンナノマテリアル
1. はじめに
カーボン原子から構成されるサッカーボール型C60フラーレン1)、ナノメートル直径のカーボンナノチューブ刃などが注目を集めている。これらのカーボンナノマテリアルは、sp2混成軌道からなるカーボン原子のネットワーク構造が基本となっている。数十個以上のカーボン原子から構成されるカーボンナノマテリアルは、その物理・化学的性質が原子とも、またバルク固体とも異なる新物質相であり、様々な応用が期待されている。
カーボンナノマテリアルの初めての形成やその後の研究展開には、レーザー光が大きな役割を占めてきた。グラファイトなどのカーボン材料にレーザー光を照射するとカーボン原子やそのイオン、小さなサイズのクラスタ一等が放出される3〜4)。HeやArなどの希ガス雰囲気を用いて、サイズの増大したカーボンクラスターを高濃度で生成させることができる。Heガス雰囲気を制御してレーザー蒸発を行うことにより、新たなカーボンの同素体としてCeoが選択的に生成することが1985年に発見された1)。また、カーボンクラスターや触媒金属粒子から溶融状態の粒子を形成し、カーボンを析出させることにより(通常の化学反応における触媒作用とはやや意味が異なるが、金属の触媒作用と呼ばれる)、単層のカーボンナノチューブ5〜6)を形成できる。レーザー蒸発法により、その実験室規模での初めての形成がなされた7)。
フラーレンの発見や合成に関しては、すでにいくつかの成書で記述されているので8)、ここでは、カーボンナノチューブ2)、突起状のナノホーンが集合した構造のカーボンナノホーン粒子9)、レーザー蒸発法でのみ形成できるプレートレットグラファイト粒子10)や多面体グラファイ卜1)などのカーボンナノマテリアルについて、シャドウグラフィーなど利用した成長にかかわる動的過程のin-situ解析と共に述べる。レーザー蒸発法を用いる形成では、一回のレーザーパルス照射でカーボンナノマテリアルが形成できる。レーザーパルス照射後の時間的な追跡から、成長過程について詳細な解析ができることは、他の形成法には無い優れた特徴である。以下では、特に、金属触媒の有無、レーザー照射を行う雰囲気ガス圧の影響、原料として用いるカーボン材料の影響などに焦点をあてる。金属触媒によるグラファイト化と熱エネルギーによるグラファイト化のそれぞれの寄与から、レーザー蒸発法を用いたカーボンナノマテリアル形成が達成されている。
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