第6章 材料創製

1. 積層薄膜

著者:森本 章治

1. はじめに

 レーザーアブレーション現象を用いたパルスレーザー堆積(Pulsed Laser Deposition:PLD)法が最初に大きく注目されたのは、ベルコアグループによって高温超伝導体薄膜が作製されたときであった1)。その後、レーザーアブレーションによる薄膜作製は、強誘電体薄膜刃、強磁性体薄膜3)など広範な各種材料に適用され今日に至っている。高温超伝導薄膜以降の急激な発展以前にも、基礎的な研究を中心に論文が報告されているが、その拡がりは限定的であった。
 図1に、二次情報文献データベースであるScopusを用いたPLD法による薄膜作製に関する発表論文数の年次推移を示す。比較のため、同様にして検索したスパッタリング法の結果も合わせて示す。検索語は「pld」&「film」、「laser ablation」&「film」の2種類の組み合わせを用いた。スパッタリングの場合は、rsputtering」&「film」で検索した。「film」を検索語に入れたのは、他の分野の「pld」やr「laser ablation」による加工を除くためである。量産性に優れたスパッタによる薄膜作製の論文数には及ばないものの、PLD法は1986年頃の高温超伝導薄膜の作製に始まり、1990年頃の強誘電体薄膜、強磁性体薄膜、フラーレン薄膜と続いて、新材料に次々と適用され、現在も着実に発表論文数が伸びていることが分かる。
 レーザーアブレーションによる薄膜堆積は、図2で示されるように、レンズで集光したレーザービームをターゲット材料に照射することにより行われる。ターゲットからターゲット材料が除去され、基板に輸送され、加熱された基板上で堆積粒子がマイグレーションすることにより結晶薄膜が基板上で成長する。レーザーアブレーシヨンが生じる際には、プルーム(plume)と呼ばれる明るく発光する高密度プラズマがターゲット法線方向に沿って観測される。この中には発光種や非発光種からなる原子、イオン、分子、クラスタ、液滴状粒子(droplets、debris、particulates)など、種々のサイズの堆積粒子が種々の飛行速度で基板に到達する。このレーザーアブレーション現象の励起には、エキシマレーザーやYAGレーザーなど様々な種類のパルスレーザーが利用されている。なお、各種薄膜のレーザーアブレーション法による堆積に関する詳細は、ChriseyとHubler編著の著書を参照されたい彗また、後述するPLD法の一種であるレーザーMEEによる結晶薄膜のエピタキシャル成長に関して、本書の第5章第4節「エピタキシャル成長」でも詳しく述べられているので合わせて参照されたい。

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