第5章 ミクロレーザープロセシング

8. マスクリペアー

著者:小田嶋 孝広

1. はじめに

 近年、レーザーマスクリペアは、LSIなどの高集積半導体デバイスあるいはデジタル家電の一つとして最近特に需要が旺盛な液晶ディスプレイ(LCD)の製造工程では必要不可欠な製造設備になってきた。高集積半導体デバイスの半導体ウェハやしCD用のTFT(Thin Film Transistor)アレイ基板などには、回路パターンを転写するための原版となるフォトマスクに対し製造工程上さまざまな欠陥が発生する。フォトマスクは、写真でいうところのネガに相当するもので、露光機により回路パターンを半導体ウェハやTFTアレイに転写することで複製品を大量に生産するためのものである。フォトマスクメーカ各社ともこの欠陥の発生を最小限またはゼロにすべく多大な努力、エ法改善、工程の開発などを行ってきているが、半導体用ではデザインルールの微細化に伴って、あるいはLCD用では大面積化と同時に高精細化に伴って、欠陥の発生割合は年々増加傾向になっている。原版となるフォトマスクに欠陥が存在した状態で回路パターンを転写してしまうと、欠陥が存在した半導体ウエハやTFTアレイ基板を大量に生産することになる。レーザーマスクリペアはフォトマスクに発生するこれらの欠陥を修正することで、本来、欠陥により不良となるフオトマスクを正常品へと転換させる装置である。

2. フォトマスクについて

 半導体用のバイナリマスクの場合、一般的に厚さ2.3〜6.3mmの石英ガラス基板上に厚さ100nm前後の2層または3層のクロムなどの金属薄膜により、配線やコンタクトホールなどのパターンが張り巡らされている。パターンには一般的にクロム(Cr)やモリブデンシリサイド(MoSi)などが用いられる。また、パターンの製造、検査、修正が完了したあと、フォトマスク表面への塵埃付着防止用としての保護膜(ペリクル)が取り付けられることがある。なお、半導体デバイス製造工程では、特に縮小投影露光用のフォトマスクを通常レチクル(Reticle)と呼んでいる。露光機の縮小倍率は通常1/4倍で、回路パターンのデザインルール(ライン、スペースの最小幅)が130nmに対応するレチクルのパターンの最小のラインとスペースの幅(L&S)はそれぞれ0.5μmである。
 フォトマスクはパターンにより光がある値以下しか透過しない部分とパターンがないため光が透過する部分のみで構成されるバイナリマスクのみであったが、半導体デバイスの回路パターンのデザインルールが露光装置の光源波長を下回ってきた1990年代から、微細パターンの結像のため透過する光の位相を180度シフトさせる部分(位相シフタ)が設けられた位相シフトマスク(Phase Shift Mask)が使用されるようになった。
 一方、LCD用のフォトマスクでは、TFTアレイ基板の大型化が急速に進展している。いわゆる第7世代の製造工程で使用されるフォトマスクのサイズは、TFTアレィ基板の露光用では850mmx1,200mmであり、第8世代では1,220mmx1,400mmの大きさにもなってきている。

3. 欠陥の種類

 フォトマスクの製造工程では、回路パターンを電子線やレーザー光で描画する露光工程でのフォトレジスト層への塵埃の付着による描画不良などが原因となって様々な欠陥が発生する。
 本来、あってはならないところにできる残留欠陥、いわゆる黒欠陥として
① ブリッジ:本来オープン状態であるべき部分がショート状態になっている
② 黒点(ドット):あってはならない場所に孤立で点状に異物またはパターンが存在する
③ 突起:パターンのエッジから突き出ている
  本来、必要なパターンがなくなっている欠損欠陥、いわゆる白欠陥として
④ 欠け:パターンの一部が欠けてなくなっている
⑤ ピンホール:パターンに微小な欠損部分が発生
⑥ 脱落:必要なパターンが丸ごとなくなっている
などが発生する。(図1参照)

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