第5章 ミクロレーザープロセシング

5. エキシマレーザーリソグラフィ

著者:鳥海 実

1. 概要

 今日の高度情報化社会は、高性能の半導体デバイスを用いた情報通信網およびコンピュータが支えている。高性能の半導体素子は、電気製品の高機能化、多機能化を可能とし、新規製品を開発することにより新規産業にも展開されている。次々と高機能の半導体素子を製造できるのは、その素子の演算速度、記憶密度などの性能が年々向上しているためである。この高性能の素子を製造する方法が微細加工技術であるリソグラフィである。半導体リソグラフィは半導体産業にとどまらず、今日では情報化社会も支え、リソグラフィを応用した加速度センサーやマイクロミラーなどの新しい素子が製造され、ナノテクノロジーやマイクロメカニクスなどの新規産業に展開されつつある。エキシマーレーザーはこのリソグラフィに用いられる露光装置の光源として重要な役割を果たしている。ここでは、現在量産化が始まったArFエキシマレーザーリソグラフィを中心に説明し、実験室レベルでの二光束干渉法やリソグラフィ材料の評価方法であるQCM法などの説明も含めながら、次世代リソグラフィであるArF液浸リソグラフィの最新動向まで述べる。

2. リソグラフィ

 半導体デバイスを作製するための微細加工技術がリソグラフィである。ここでは、30年以上にわたり半導体素子の量産で用いられているホトリソグラフィを中心に説明する1〜5)
ホトリソグラフィ技術とは、電子線描画装置などで回路パターンに対応したマスクをつくり、これを介してシリコンウェハ上の感光性樹脂(レジスト)を露光し、現像によりレジスト微細パターンをつくり、このレジスト・パターンをマスクとして下地基板を加工し、所望の微細パターンを形成する微細パターン形成技術である。このリソグラフィ工程を図1に例示して、各工程を説明する。

  • (a)前処理:微細加工すべき基板には吸着した水分子などがレジストの密着性を劣化させる。そこで、シリル化処理などにより表面を疎水化して、レジストとの接着性を向上させる。更に、被加工基板上に反射防止膜を塗布し、露光時の定在波やハレーションにより解像性が悪化するのを防ぐ。
  • (b)レジスト塗布、PB:この前処理した基板の上に、フォトレジストを滴下し、3000〜6000rpmと高速回転させて、均一な膜を作成する。塗布後のレジスト膜中に残留している塗布溶媒を80〜130°C程度の温度で露光前加熱(PB:Pre-bake)して揮発させて、高分子媒体を緩和させて、膜質を向上させ、下地との接着性を向上させた後、所望の膜厚にする。
  • (c)パターン露光:次に、所望の回路パターン情報を有するマスクを介してレジスト薄膜を露光する。通常、マスクは石英基板上に遮光材としてクロムがパターニングしてある。クロムが無い部分を光が通過してレジストをパターン露光することになる。この例では露光光源に光を用いるので、ホトリソグラフィと呼んでいる。x線のような短波長の電磁波を光源として用いる場合にはX線リソグラフィ、電子線を用いる場合には電子線リソグラフィと呼んでいる。次々世代リソグラフィとして注目されているEUV(Extremeultra-violet)リソグラフィは波長13nm程度の軟X線を光源としている。
  • (d)PEB、現像、リンス、現像後加熱:露光後、90〜150°C程度の温度で加熱処理する。この露光後加熱(PEB:Post-exposurebake)により、露光時に生じた定在波の影響が低減される。また、現在のレジストは化学増幅系レジストを主に使っているが、化学増幅系レジストの場合、PEBは酸触媒反応を促進し、レジストを高感度化させる重要な工程でもある。このPEB後にレジストを現像する。現像液にはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)などの有機アルカリ水溶液が用いられている。
     レジストは、露光部分が酸性に変化するなどして現像液に溶解しやすくなるタイプをポジ型、露光部分が疎水性になるなどして現像液に溶けにくくなるタイプをネガ型と分類されている。図1ではポジ型レジストの場合を例示しており、露光部が現像により溶解除去される。
     現像後にリンスし、回転乾燥することによりレジストの微細パターンを得る。現像後加熱は、レジスト・パターンの耐熱性向上、耐エッチングの向上、接着性の改善、ピンホールの低減、脱ガスなどのために行われる。
  • (e)基板加工:このレジスト・パターンを保護膜として、下地基板をエッチング、あるいはイオン注入などの加工が行われる。レジストはこの加工の際に、「抵抗する」皮膜として働くことより、「resist」と呼ばれている。
  • (f)レジスト剥離:エッチング後に、不要になったレジストを酸素(OJプラズマによる灰化(アッシング)や90〜130°Cに過熱した剥離液(フェノールとハロゲン化物を含む有機溶剤)に浸漬させて、剥離する。このようにレジストを除去して、基板に所望の微細加工を施したことになる。
     半導体素子の作製ではこのようなリソグラフィ工程が数十回繰り替えされ、リソグラフィ工程が全製造工程の半分以上を占めている。

3. レジスト

 現在、リソグラフィで用いられるレジストとしては化学増幅系レジストGが主に使用されており、そのリソグラフィ・プロセスには特徴があり、取り扱いに注意が必要である。
 化学増幅系レジストでは、感光性成分として種々の光酸発生剤(PAG:Photo acid generator)を用いている。露光部ではPAGが光吸収して、酸を発生する。PEB時にその酸が触媒反応を起こし、露光部のみで化学反応を引き起こして所望の潜像を形成する。図2でtBOC(tert-Butoxycarbonyl)保護化されたポリヒドロキシスチレンを例に化学増幅型レジストの原理を示す。未露光部はtBOC保護化されているので、アルカリ性現像液に不溶である。一方、露光部では、露光により生じた酸が触媒となり脱保護反応が起こり、ポリヒドロキシスチレンが生じる。これは酸性樹脂であるから、アルカリ性現像液に可溶になる。したがって、図2のレジストはポジ型として機能する。化学増幅型レジストは、露光により生じた酸が多数回の化学反応を引き起こす連鎖反応を利用するために高感度になり、レジストのコントラストが向上するという特徴がある。
 化学増幅系レジストを使用する際、PB、PEBの加熱工程は、レジストの感度、解像性、形状、寸法制御性と密接に関係している。特に、露光からPEBまで時間(PED:Post-exposure delay)はレジストの形状や寸法制御性に大きな影響を与える。この現象はPED効果と呼ばれ、PED効果を軽減するために、PAGや樹脂の分子構造を最適化し酸失活剤などの添加物を加えている。酸失活剤の添加は、化学増幅系の高感度性という利点を減ずるものであるが、このレジストの安定性に加え、レジストの寸法制御性、高解像性などの多くの利点があるために使用されている。また、クリーンルーム内に塩基性ガスがあると露光部に生じた酸と中和反応を起こし、酸を消費してしまう。酸が不足すると、ポジ型レジストであれば、露光部表面で十分な酸触媒反応が起こらずに、現像後には表面難溶化層が形成されたり、レジストの断面形状がT-top型になったりして問題になる。この対策として、化学フィルタを設けて塩基性ガスを除去したり、レジスト表面に保護膜を形成したり、レジストをガラス転移点以上の温度でPEして、レジスト膜を緻密にして不純物の取り込みを軽減したりする方法などがある。基板に関しても、ホウ酸リンガラス(BPSG)、スピン・オン・グラス(SOG)、反射防止膜上でレジスト・パターンの裾引きやアンダーカットなどが現れ、寸法制御性が劣化することがある。このため、専用の下地材料、基板の中和処理、UVオゾン処理やO2プラズマ処理などを用いることもある。

4. QCM法

 レジストの解像力がリソグラフィの微細加工精度を大きく左右する。このレジストの解像性を決める重要なエ程が現像過程である。そこで、現像過程の研究手法に関して付記する。高い解像性を得るために、レジストは現像中に膨潤することなく溶解することが求められる。従来、レジストの現像過程は光を用いた干渉法4)で実時間測定されていたが、レジストの膜厚が500nm以下と薄くなり、その測定精度が不足し、問題になっている。また、現像中に膨潤する場合には光干渉信号の解析が複雑であることも問題である。そこで、最近注目されている現像過程の測定方法が、水晶振動子マイクロバランス、即ち、QCM(Quartz crystal microbalance)法である7~刃・従来、QCM法は真空蒸着などのモニターに使われていたが、水中でも発振することが見出されてイオンメッキのモニターなどとして市販されている賓レジスト評価用の典型的なQCM装置を図3に示す。水晶振動子上にレジストを回転塗布し、PB後、所定の膜厚にし、必要に応じて全面を一括露光しPEEの後、センサーヘッドに取り付ける。この状態では、空気中でレジスト薄膜と共に水晶振動子が共振振動し、その共振振動数とQ値に対応するインピーダンスを実時間測定し、計算機に保存することになる。次に、現像液にセンサーヘッドごと浸漬すると、一般的には、空気中の振動から溶液中の振動に変わる為に、共振周波数が低下し、インピーダンスは増大する。さらに、レジストが現像液に溶解すると、その重量減少に対応して共振周波数が増大し、レジストが溶解してなくなると共振周波数は一定値になる。レジスト薄膜が無損失の完全な剛体として基板と共に振動する場合には、レジスト膜厚の減少は共振周波数の増大に比例するというSauerbreyの関係が成立する。非膨潤で溶解するレジストの場合には、この近似が成立し、通常は共振周波数を実時間測定してレジストの現像挙動を評価する。
 開発過程のレジスト材料やベース樹脂の場合には、膨潤など複雑な現像機構になり、Sauerbreyの関係が成立しない。この場合でもデータ解析のために簡便な四層モデルが提唱されている10〜11)。共振周波数と同時にインピーダンスも実時間測定し、両者から、レジストの膨潤過程を含めた現像機構の知見が得られる。

5. 露光装置

 次世代のリソグラフィを決める大きな要因が露光装置である。露光装置の歴史的な流れを図4に示す。1970年代にはマスクを用いてシリコンウェハに密着させて露光する密着露光装置が用いられ、10μmから5μmサイズのパターンが形成された。次にマスク作製に用いていたフオトリピーターを基に開発された縮小投影露光装置が主流となった。マスク(この場合は、レチクルとも呼ばれる)のパターンを1/4あるいは1/5に縮小する露光である。そのため、1回の露光ではウェハに比べて小さい領域を露光し、これを繰り返して露光部を繋いでいくことで、ウェハ全面を露光する方式を取っている。これがステップアンドリピート方式であり、露光装置をステッパとも呼ぶ。1回の露光面積が小さいために、露光毎に位置合わせ、焦点合わせをしなければならないが、解像性の高いノボラック系のレジストを使用することができ、露光装置の光学性能の改良とあいまってリソグラフィ全体の解像性能が大きく向上し、露光波長以下の微細パターンを形成できるようになった。この縮小投影露光方法は現在でも使用されている。後述するように縮小投影露光装置のまま、露光波長の短波長化と投影レンズの大口径化などの向上が進められている。
 次に露光装置の基本的な構成を図5に示す。i線ステッパでは超高圧水銀灯を用いていたが、現在はArFリソグラフィが最先端技術であり、ここでもArFエキシマーレーザーを光源として用いたステッパで説明する。縮小投影レンズによって最小加工寸法が100nm以下の微細パターンの高コントラスト像を、ある焦点深度の範囲内で広い範囲にわたって結像させ、それをウェハ上に塗布したフォトレジスト薄膜に転写する。コンデンサーレンズを経てマスクを照明している。マスクパターンは投影縮小光学系により1/5前後の縮小倍率で10-30mm程度の画角に結像され、レジストを露光する。X-Yステージ上のウェハは精密に制御され、一定距離だけ移動して位置合わせ、焦点あわせながら、その都度同じ回路パターンを露光する。照明系をみると、レーザービームは整形されたのち、インコヒーレント化によりレーザー特有の干渉性を低減させている。コヒーレンシーの高いレーザーはインコヒーレント化しないと、スペックル・ノイズが顕著になり、レンズ上のゴミなどの影響が像面に現れて、問題となる。光学的にはインコヒーレント照明と比べて、解像力は劣るがコントラストの高い部分コヒーレント照明が使われる。その程度はコヒーレンス因子σにより表され、0.2〜0.6程度で用いられている。コンデンサレンズにより導かれて、ハエの目レンズなどを用いたインテグレータにより面内照度の均一性を高める。照明はケーラー照明でマスクから見て、コンデンサの出射瞳が無限遠になっている。インテグレータの後面は照明光学系の瞳位置で、投影光学系の瞳と共役な位置にある。輪帯照明、四重極照明などの変形照明は、この位置に対応する絞りを挿入する。したがって、変形照明で絞りを入れて、光が透過するハエの目レンズの数を少なくすると、照度均一性が低下する。最後に、選択的な遮光あるいはフレア低減のためのマスキングブレードを介してレチクルを照明する。物体側・像側ともテレセントリックになるように設計している。
 図5ではステッパで説明したが、最近の露光装置ではステップアンドスキャン方式が主流になっている。ステップアンドスキャン方式の露光機は、縮小投影光学系により結像された細長いスリット状の露光視野をウェハ上に走らす・実際には、投影光学系は動かせないので、縮小倍率に等しい比率でマスクとウェハが同期して走査される機構を備えている。このスキャン露光装置では、1回のスキャンでマスク全面を露光し、マスクの縮小パターンをウェハ上に結像させる。スキャンに必要な駆動機構は複雑になるが、ステッパに比べ、小さな露光領域で、広い面積を露光できる利点がある。露光領域が小さいため、光学系の製造が容易である。また、スキャン方法によりショット内重ね合わせ補正ができるため、重ね合わせ精度が向上する。一方、実用的なスキャナーにするは、露光時間が短く、高性能の同期スキャン制御技術が必要とされる。


6. 二光束干渉法

 上述のように、量産に用いられる露光装置は300mmウェハを大きな画角を用いて高スループットで露光するために、1台で数十億円という高価な装置になる。価格に加えて、システムが複雑であるために、研究室レベルで新規リソグラフィを研究するために、改良するには扱いにくい。そこで最近はレーザーの特性を活かした簡便な実験室レベルの露光装置が開発されている12〜13)
 KrFリソグラフィ用のレジスト研究のための二光束干渉露光装置を図6に示す12)。Ar+レーザーー515nmの発振線の第二高調波を取り、プリズムで257nmの光のみを選択する。KrFエキシマーレーザーからの248nmの発振線が理想ではあるが、レーザーの安定性、可干渉性の良さからAr+レーザーの倍波を選んだと思われる。一部の光をホトダイオードにけりだし、入射強度をモニターしている。ビームエキスパンダーで光束を拡幅した後、ビームスプリッターで二光束に分けて、所望の入射角度でウエハ上のレジスト内で干渉させる。干渉させるためには、ビームスプリッター以降の2つの光路差を可干渉距離以内に調整しなければならない。この点で、Ar+レーザーはKrFエキシマーレーザーよりも取り扱いが容易である。しかしながら干渉性が高すぎるとスペックル・ノイズがレジスト評価の妨げとなるので、注意する必要がある。二光束干渉によりレジスト内に干渉縞が形成されるが、図(a)に示すように入射角度を0と定義すると、図7(b)に示す二光束干渉で生じる干渉縞のピッチpは媒体の屈折率をnとして次式で与えられる。

 例えば、ArFエキシマーレーザーを空気中で80度の角度で二光束干渉させると、98nmピッチのパターンすなわち、49nmの線幅とスペース(L/S)の縞状のパターン形成ができる。複数回露光すれば、ドットパターンなどを容易に形成できる。また、シャッターにより左右の露光量を調整すれば、干渉光のコントラストを制御することができる。これは、レジストの解像性やレジストのパターン側壁荒れしER(Line-edge roughness)などの評価に有効な研究手法である。本装置は入射角度を変えることによりピッチを自由に変えることができる利点があるが、装置が大掛かりになり、操作性との両立が難しい。そこで、図8のようにプリズムを用いた、取り扱いの容易な二光束干渉装置が報告されている13)。プリズムを用いるので、アライメント調整が容易である。しかし、干渉縞のピッチ毎にプリズムを用意しなければならないこと、干渉実験に使える高精度のプリズムの結晶が必要であるという問題点がある。



7. 高解像力化

 簡便な露光装置でも半導体露光装置でも、その解像線幅Rは次のレーリー式で近似されている。

 ここで、開口数心は図9に示すように光学系の最周辺部からウェハ上に集束する光の開き角をθとするときに、ウェハ側の屈折率をnとして、

で与えられる。
 解像性を高めるためには、(2)式からNAを大きくするかλ、k1を小さくする方法が考えられるが、実際に、図10に示すよう、NA、λ、k1の値は進化している。
 現在、NAは0.9程度まで大きくなっている。この高NA化により、また、広い露光面積をカバーするためにマスクとウェハ間隔が増大することからも投影レンズは大型化する。こために、設計、製造面で多くの技術を必要とし、良質の大型結晶も必要なり、露光装置は大変高価な設備となる。
 一方、NAは次式に示すように焦点深度DOFとも関連しており、高NA化は焦点深度の低下をもたらす。

 そのため、高精度のオートフォーカス技術、ウェハの平面度、CMPのような平坦化プロセスが必要になる。
 露光波長は水銀灯のg線からArFエキシマーレーザーの発振波長である193nmまで短波長化が進んでいる。短波長化については後述する。
 k1はインコヒーレント照明下の解像限界値と考えれば0.25であるが、実際には、レジストなどのプロセスやマスク、露光装置などにより決まる。レジスト・プロセスとしては、PEBO最適化や薄膜化によりk]を小さくすることができる。さまざまな解像力向上技術(超解像技術とも言う。RET;Resolution enhancement technology)により0.8から現在では0.3程度にまで小さくなっている。
 マスク技術ではOPCの適用や位相シフト法を適用することによりk1を小さくすることができる。
これらRETを8-10で説明する。

8. OPC法

 ホトリソグラフィでは光を用いるために、解像限界に近い小さな寸法になると回折の効果が大きくなり、周囲のパターンの結像領域にも高次の光が散乱されることになる。この近接露光は、ゲート線幅など、デバイス特性を決定する重要な箇所では無視できない影響を及ぼす。そのため、予め近接露光の効果を取り込んで、レチクルのパターンを修正する方法が光近接効果補正(OPC:Optical proximity correction)と呼ばれて用いられている。図11に例示するように、マスクパターンを所望の回路パターンそのもので作製すると、その露光・現像後に得られるレジスト・パターンは図10(b)に示すように、光近接効果のために線端が短くなったり、線幅が増減したりする。そこで、図10(c)のように、マスク自体に修正をかけることにより所望のレジストパターンを得る。このほかにも、解像できないほどの微小の補助パターンを新たに設けることもある。予め規則を設定して自動的に作製するルールベースOPCなどを用いて実際に使用されている。しかし、パターンの最適化の難しさ、補正処理時間の増大、コスト増大などの問題がある。

9. 位相シフト法

 位相シフト法は代表的な超解像法の一つであり、その原理を、従来の露光方法と共に図12に示す。通常のマスクを用いる従来の露光方法ではクロム・マスクの各パターンの開口部を通過した光が同位相φでウェハ上に結像される。レジストはその電場振幅fの二乗に比例したエネルギーIを吸収する。したがって、図12(a)に示すように、回折により未露光部に散乱した散乱振幅もゼロでない値を有し、低コントラストの結像パターンでレジストを感光することになる。一方、位相シフトマスクでは、図12(b)に示すように隣接するパターンの開口部で逆位相を与える。ウェハ上に集光される結像パターンでは、隣接するパターンが逆位相であるために、振幅はゼロとなり、その二乗である光強度もゼロになり、高コントラストの露光が実現できる。コヒーレント照明下で、周期性パターンの解像性ではkが0.5になり、焦点深度は無限大になる。現実の部分コヒーレント照明でも、高い解像性と大きな焦点深度が達成されている。位相シフトマスクはAlt-PSM(Alternate phase-shift mask)、「強い」超解像技術とも呼ばれて、高い解像力が求められるときに使用される。特に繰り返しパターンの解像度の向上には有効である。孤立パターンの場合には、この主パターンに対して、逆位相の補助パターンを近接して配置するなどの方法で、主パターンの回折による広がりを抑えて解像性を高めることができる。しかし、マスクの作製や検査が難しく、使用するに当たりネガ型レジストが必要になり、コストがかかるなどの問題点がある。特に、今後、微細化につれ、高NA化が進むと、大きな角度で斜め方向から入射する光が増加するために、マスク構造も、電磁波の挙動を考慮した精密な設計が必要になる。
 比較的安価な位相シフト法として、ハーフトーン位相シフトマスクを用いることが多い。このマスクは、Att-PSM(Attenuated phase-shift mask)とも呼ばれ、構造的には、通常の吸光性材料を減光性材料に変えたマスクで、パターン光に対して弱いバックグラウンド光を逆位相で露光する。この場合も逆位相であるために、散乱振幅はゼロとなる。そのためにコントラストが向上する。ハーフトーン位相シフトマスクでは、マスクの設計を大きく変える必要がなく、位相の割り当ての最適化の問題もないので、広く使われている。




10. 変形照明

 k1は変形照明、二重露光などによっても小さくすることができる。変形照明とは、通常、用いられる単純な円形の光源に対し、微細パターンの結像に有効な光を選択して照明する方法である。具体的には、図13に示すような輪帯、2開口、4開口などの照明絞りを瞳上に設ける。図14に変形照明の原理を示す。図14(a)に示す通常の垂直入射照明でレチクルを照明し、±1次光がレンズを透過する場合を考える。このマスクパターンを図14(b)に示すように斜め方向から照明すると、次光と+1次光とがレンズの中心部分に近くを通り集光されて結像されるので、焦点深度が大きくなる。また図14(c)に示すように、レンズの最外周まで利用すれば、細かなパターンまで結像できることから、解像性が向上することが分る。このように変形照明は、スペクトル面上で位相シフト法を実現しており、解像度や焦点深度の向上に有効な方法である。位相シフト法とは異なり、マスクを変更する必要がなく、従来の製造プロセスをほぼそのまま適応することができる。しかし、パターンに最適な照明が存在し、それより大きなパターンでは結像性能が、通常の照明よりも劣化する場合もあるので、照明条件の最適化が重要である。例えば、斜入射照明の方位としてはパターンの周期方向に入射光の向きが合っていなければ効果がない。全方位のパターンに対して平等に斜入射照明を行うには輪帯照明を用いることになる。4開口照明は縦横のパターンに対して最適化している。後に示す収差の影響も受けやすくなる欠点もある。
 この他にも、焦点位置を変えながら多重露光したり、結像レンズの瞳面に振幅・位相フィルタを置いたりする超解像方法が提案されている。


11. 短波長化

 露光波長λを小さくする短波長化は図10に示したように、水銀灯g線の436nmからArFエキシマーレーザーの193nmまで進められている。短波長化のためには、短波長で使用できる光学材料の開発が重要になる。短波長領域で使用できる光学材料の硝材は主に石英と蛍石である。硝材にわずかな吸収があってもレンズ内で熱エネルギーに変わりレンズの倍率などの諸特性が変動してしまう。短波長領域では、蛍石が開発されるまでは光学系の硝材としては石英のみで投影光学系を作らざるを得ない。この場合、後に述べる色収差が問題となる。そのためKrFエキシマーレーザーの発振波長の狭帯域化が検討された。蛍石が使われてからも、複屈折性の問題が起こり光学系の改良が進められた。
 短波長化はレジスト材料の開発も必要とする。レジストは感光性材料であるから、露光波長が変わると利用する光化学反応が変わるために、新規材料の開発が必須となる。短波長化により、光子あたりのエネルギーが大きくなり、マスクを含む光学系の損傷が大きくなる。またスループット向上の点からもレジストの高感度化が要求される。そのため、解像度と感度を両立するレジスト材料の開発は極めて重要である。特に、EUVや電子線を光源とする場合には、微小面積に入射する光子(高エネルギー粒子)数が減少し、ショットノイズを考慮することもある。

12. 収差

 結像光学系とは物点を通るすべての光線が、像点を通過する光学系である。この結像を考える時には、理想光学系を用いると取り扱いが簡単である。例えば、物点、像点、入射点はいずれも、光軸の近傍にあるとし、光線が光軸となす角、入射角、屈折角も小さいとする。このような近軸光線では、1つの物点から出発した光線束は1つの像点に集束するガウス光学と呼ばれる。しかし、実際の光学系では近軸域に含まれる光線だけでなく、光軸からの距離や各面への入射角の大きな光線も含まれる。このような光学系でも、近軸域による特性を示すが、わずかなずれを生じる。このずれを収差とよび、微細パターン形成する光りソグラフィにおいて重要な意味を持つ。
 一般に物点が光軸外にあり、入射点がレンズ面の任意の位置にある場合には、いろいろな収差が現れ、実際の光学結像は理想像から収差の分だけ劣化する。収差は大別して、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の5つに分類されている。これらは単一の波長で現れる収差であるが、収差には、光の波長により生ずる色収差がある。
 レンズに光軸上の物点から白色光が入射した場合、波長により像の位置がずれ、コントラストが低減する。これを縦の色収差、あるいは軸上の色収差という。軸上で色消しが行われて結像位置が一致したとしても、波長により像の大きさが異なる現象もあり、これを倍率の色収差、あるいは横の色収差という。これは波長により焦点距離が異なることに原因がある。色収差は分散の異なった硝材からなるガラスを組み合わせることにより補正される。光源波長が水銀灯のi線の365nmの場合には、種々の光学材料が使用できたので、色収差を十分に補正することができた。エキシマーレーザーを光源とする248nmでは使用できる硝材は石英と蛍石に限定される。色収差を避けるためには、光源の波長幅の狭帯域化という手法もある。例えば、水銀灯のi線露光では10nm程度の波長幅であったのが、KrF露光では1pmと狭帯域化が進み、色収差の面で光学設計が容易になり、高NA光学系の開発が有利になる。蛍石は石英より短波長まで高透明であり、光損傷が少ないために使用されている。しかし、蛍石をF2リソグラフィ用材料として開発する際に、複屈折性があることが発見された。複屈折性とは、方解石に見るように、1軸結晶であれば、直交する2つの偏光ベクトルの向きにより異なる屈折光が現れる現象である。たとえば、F2レーザー157nmにおける蛍石の屈折率は〈110〉の結晶方向に対して12nm/cmという大きな真性複屈折を持つ。また機械的な力や、残留応力により複屈折が誘起されることもある。これらの複屈折性は、結晶軸を考慮したレンズ作製などにより補正されている。
 収差はこのほかにもレンズが光吸収して熱を発生することに起因する熱収差などがある。また、ウェハやレチクルにおける反射など複雑な要因で発生する光はフレアと呼ばれ、フレア低減も必須である。リソグラフィの光学系ではこれら結像特性を劣化される要因を極限まで小さくする努力が積極的に進められている。
 以上述べた各種の収差を補正して、レーリー式(2)に対応する回折極限に迫る解像性能を達している。一方、上述の高NA化、広画角化、短波長化を実現するためにレンズ全体が大きくなり、その収差補正は難しくなる。そのため、構成レンズの枚数が増加することになり、各レンズの研磨、組み立てにも高度な技術が必要になっている。

13. ホトリソグラフィの最新動向

 以上述べてきた光によるパターン露光は量産に使用されてきた微細加工の中心技術であり、30年以上にわたる歴史がある。次世代リソグラフィ技術としても光りソグラフィの延長として、液浸効果により実質的に露光波長を液浸溶媒の屈折率だけ短波長化するArF液浸リソグラフィ、短波長化のF2リソグラフィ、波長を更に1桁以上短くしたEUVリソグラフィの3つの方式が考えられている。
 このうちF2リソグラフィでは、露光波長である157nmの光は、酸素や水分の吸収により強く吸収されてしまうために空気中を伝播できない。そのため、露光装置は窒素や希ガスなどの雰囲気にしなければならない。露光装置はミラーと屈折レンズとを組み合わせたカタジオプトリック光学系を採用せざるをえない。硝材では蛍石の複屈折性は大きくなり、十分な対処が必要になるとともに、その需要に耐える品質と量を供給しなければならないという問題がある。レチクルを保護するペリクル材料は耐光性が不十分である。
 EUVリソグラフィでは、装置は真空チェンバーとなり、縮小投影するために、多層膜ミラーを用いざるを得ない。露光波長がと極めて短いために、ミラーの加工精度はオングストローム・オーダーの精度で仕上げる必要がある。また、理論どおりのミラーでも最大反射率は70%程度であり、光学系に使用できるミラーの枚数は限定され、非球面ミラーを使わざるをえず、加工精度を保つのが更にます難しくなる。特にマスクは、多層膜ミラー上に吸収/体を設けたもので、無欠陥マスクを作製すること、或いはマスク欠陥を修正する技術には高度な技術開発が必要となっている。
 一方、液浸リソグラフィは、顕微鏡の分野で広く用いられている液浸法をリソグラフィの分野に適用したもので、後述するようにArF液浸リソグラフィでは液浸溶媒に屈折率が1.44の水を用いることができ、実効的な露光波長が134nmになる。これはF2レーザーの発振波長である157nmよりも短波長であり、157nmにおける光学系の問題などが、ArFレーザーではないために、装置メ一力にとっては、大きな開発動機となっている。ASMLがいち早く、ArFドライの露光装置にオプションとして投影光学系とウエハ間を液体で浸せる機構を提供し、液浸リソグラフィを評価できるようにした。その結果、2005年末には、TSMCがDRAMの試作に、IBMがPowerPCの試作にそれぞれ、ArF液浸リソグラフィを適用し、次世代のリソグラフィ技術として大いに注目されている。そこで、ホトリソグラフィの最新動向として、このArF液浸リソグラフィについて概説する。

14. ArF液浸リソグラフィ

 ArF液浸リソグラフィは65nm以降の半導体デバイスの製造に適用が期待されており、その急激な立ち上がりと将来性に関して現在、最も注目されている微細加工技術である。65nm半導体デバイスはもちろん、45nmデバイス、更には32nmデバイスへの適用可能性も議論されている。
解像力Rと焦点深度DOFは(2)式と(3)式より次のように変形できる。

 これより焦点深度DOFを一定に保てば屈折率nの増大と共に解像力Rが向上すること、同じ解像力Rなら屈折率nに比例して焦点深度DOFが増大することがわかる。例えば、ArFエキシマーレーザーの発振波長である193nmにおける屈折率が1.44の水を液浸溶媒とすれば、レジストを露光する実効波長は193/1.44=134nmとなり、短波長化するのと同様に解像性が向上する。同じサイズのパターンで比較すれば、焦点深度が1.44倍に改善される。これが液浸リソグラフィの原理である。
 表1に露光波長毎に、解像線幅を達するために必要なkの値を示す。半導体デバイスを作製するのに難しいとされるk1が0.30以下の領域を網掛けして示した。ArF液浸リソグラフィは、ドライ雰囲気でのF2リソグラフィよりも余裕のある酣の値であることが分る。また、F2液浸リソグラフィでは液浸溶媒の露光波長における屈折率が1.4以下とあまり高くないために液浸効果が少なく、ArF液浸リソグラフィで高屈折率溶媒を開発する方が高い実現可能性である。半導体開発では複数の選択肢が必要であるので、二光束干渉で評価しているが、F2液浸りソグラフィ用レーザーの開発も進んでいる14)。GigaphotonのF2レーザーG20Fをベースにしている。二光束干渉法を用いるために、2本の発振線の内、157.63nmのみを選別している。最大繰り返し周波数は2kHz、最大パルスエネルギーは4mJ(@1kHz、27kV)、スペクトル幅は0.84pm(FWHM)、パルス幅(Tis)は18ns、パルス安定性(3σ)で10%以下である。


 ArF液浸リソグラフィでは、露光装置、レジスト材料、トップコート材料とも各社で積極的に開発が進められている。露光装置では、光学系NA=0.85のテスト露光機をもちいて、解像性能が評価され、6%Att-PSM、Dipole illuminationで65nmL/Sのパターンを750nmの焦点深度で得られることが確認できている。
 液浸溶媒の導入と制御が新たに加わったので、スループットの低下が懸念されるが、ASMLの65nm量産機のXT:1400iでは85枚/hrs程度であり、将来的には100枚を目指している。ニコンが2005年4Qに発売するNSR-S609Bでは、露光ステージとキャリブレーションステージの2つのタンデムステージを有し、ウェハ交換時に純水の供給を停止することなく、スループットに与える影響を最小限に抑えて、従来のドライ方式と同程度の300mmウェハ毎時130枚以上としている。
 液浸露光ではNAが1を越える高NAの露光装置が実現できる。例えば、ニコンの露光装置でみると、2004年10月、試作機EETではNA0.85であったものが、2005年に発売されるNSR-S609EではNA1.07、2006年出荷のNSR-S610CではNA1.30と発表している。このように大きなNAの場合には、偏光の影響が現れてくる。
 光は電磁波であり、均一な媒質中では横波となる。その光の電場および磁場は一般的に、x、y、z成分を持ち偏光している。電場成分の偏りを偏光という。光の入射面に垂直な成分をs波(s偏光:senkrecht(独)、TE波:Transverse electric mode of propagation)といい、入射面に平行な成分をp波(p偏光:parallel(独)、TM波:Transverse magnetic mode of propagation)という。図15に示すように、投影レンズの開口数が大きくなると、ほぼレジスト平面に平行な成分が多くなる。それゆえ、図15(d)に示すようにp偏光では両側から2つの光の位相が揃ったところで、電場の振動向きが逆になり光強度が弱まり、コントラストが低下する。そこで、偏光を制御し、途中で損失することなくs波のみが関与するように照明光学系を検討している。例えば、ニコンが開発した位相板による偏光制御技術(POLANO)では偏光純度90%を達成し、60nmL/Sの像コントラストを20%向上させ、CD均一性が20%向上している15)

 ArFエキシマーレーザーも液浸露光に合わせて開発が進んでいる。Cymerは第一世代のArFMOPA(Master oscillator and power amplifier)を用いた高出力で狭帯域化した高NAリソグラフィ用ArFエキシマーレーザーXLA-100を2003年に市販し、2004年には、デュアルチエンバーで高性能化した第二世代XLA-105を開発した。高解像性を達成するためには発振波長の狭帯域化が必要であるが、処理能力を高めるには大きな出力が必要になる。この相反する要求を満たすために、低出力ではあるが狭帯域化して発振させるOscillator laserとそれと同期させて光強度を増幅させるAmplifierとの2つのチェンバーを用いている。2005年には第三世代XLA-200を開発している16)。これはArF液浸リソグラフィによる65nm、45mnノードの量産用レーザーで、最大パルスエネルギーはMOとPAのバランスを最適化し、高いレーザー耐性を有する新規光学系を用いることにより12-15mJを達成し、繰り返し周波数4kHzで60Wとなり、30%増大した。XLA-200は狭帯域化モジュールの最適化によりFWHMは0.12p口で95%integralbandwidth(E95)が0.25pmであり、XLA105より、FWHMで25%、E95%で30%改善されている。この狭帯域化によりCaF2の使用量を減らした投影レンズの露光装置でも使用できるとしている。レーザーガス制御もチェンバー内への充填後のガスの混合比の精度を3%から1%にまで向上させている。高NAでは偏光度の維持も重要であり、CaF2の結晶軸、熱誘起による複屈折率変化など影響を1%以下に抑えている。消耗品の寿命も重要な課題である。電極の劣化を改善してPAチェンバーで24BpulseO寿命となり30%向上させている。他の消耗品の寿命はMOチェンバー12Bpulse、Line-narrowingモジュールが30Bpules、Bandwidthanalysisモジュールが30Bpulseと報告している。最近、MOPAの最適化をさらに進め、繰り返し周波数は6kHz、出力は90W、FWHMで0.12pm以下、E95で0.25pm以下を達成しており、NA1.3以上の露光技術にも適用できる第四世代レーザーを開発し、2005年第4四半期に出荷開始の予定である。
 Gigaphotonは2005年からArFエキシマーレーザーを市販しており、20W出力でGA40Aで0.35pmからGA42Aで0.25pmへと狭帯域化を進めている。Injectionlock技術を用いていることが特徴で、2005年からGT40Aを市販している。Injectionlock方式ではあるがインコヒーレントな共振器を用いてスペックル・ノイズの発生を抑えている。Power oscillator laser(PO)を制御するMaster Oscillator laser(MO)の強度はMOPAと比較して一桁近く弱い強度で済むために、レーザーの寿命が延び、2台のレーザーの同期が広く取れる利点がある。出力45W、繰り返し周波数4kHz、11.25mJ、バンド幅はFWHMで0.20pm、E95で0.50pm、またパルス時間幅を81nに拡幅して光学系へのレーザー損失を低減している17)
 液浸露光で大きな注目を集めているのはレジストと液浸溶媒との相互作用である。無水マレイン酸を含有するベース樹脂を用いたレジストでは、未露光部でも開環して現像速度が増大してしまう問題がある。それ以外のレジスト材料は、従来のArFドライ露光に用いられていたベース樹脂が基本的には使用できる。しかし、レジスト成分、特に光酸発生剤の液浸溶媒への溶出があり、その対策が検討されている。溶出といっても、GC-MSの検出限界の10倍程度の流出量を問題視している。レジスト薄膜の上にトップコートを塗布することにより液浸溶媒への溶出が94-99%の高効率で抑制される。トップコート材料は、有機溶剤で除去する材料で開発が進められていたが、現在では現像液に可溶な材料が中心に開発されている。疎水性の高いトップコート材は、露光装置のステージが高速移動できる点で有利であるが、濡れ性が悪く、欠陥を生じる恐れがある。しかし、トップコート膜の疎水性が低減すると、ステージの高速移動に問題を生じるだけでなく、液浸溶媒の水がトップコート内に染み込み、レジストの性能を劣化させて欠陥に繋がる。このため、実用的なトップコート剤の開発が必要である。
 トップコートが不要なレジストを目指した材料開発も進められているが、溶出の低減と解像性にトレードオフの関係にあり、開発が難しい。レジスト薄膜からの溶出があると露光装置の汚染や結像特性の劣化に繋がり大きな問題となる。そのため、初期の液浸リソグラフィではトップコートを用いたプロセスになりそうである。
 トップコートを用いるにしても、パターン欠陥は実用化に向けて重要な解決課題である。液浸リソグラフィ固有の欠陥が見つかり、装置、材料、プロセスのそれぞれの立場から欠陥低減の対策が検討されている。パターン欠陥発生の機構の解明とそれに基づく欠陥低減の対策が求められている。

15. 将来展望

 ArF液浸リソグラフィは解像性能に関しては本質的な障害は見つかっていないが、量産・実用化に向けて、装置、材料、デバイス・メーカが取り組まなければならない課題解決は残っている。
 更に、32mn以降のデバイスに向けて、高屈折率の液浸溶媒だけでなく高屈折率の光学材料とレジスト材料の開発も必要となる。高屈折率の液浸溶媒としては、屈折率1.65以上、屈折率の温度変化が300ppm以下、吸光係数が0.15/cm以下(透過率で示せばTN97%/mm)、粘度が水の2倍以下、光散乱がく0.2%/mm、費用く$1perlayerが目標値とされている。JSRの高屈折率液体[HIL-001]は屈折率1.64、透過率98%/mmの物性値で、ArF二光束干渉露光により32nmL/Sを解像している。2008年のhp38nniノードに対応できるとしている。この場合NAは1.5となる。この材料は市販するのが数年先になるという。
 光学系の硝材としては1.6-1.7の屈折率の材料が求められている。NISTが検討しており、MgAl2O4が1.75-1.87、Ceramic Spinelが1.91の屈折率を有することが分っているが、実際の光学系に使用できるかどうかはこれからの開発課題である。レジスト材料も環状エーテル構造を取り込んで高屈折率化を目指す研究が進められている。
 処理能力の向上も目的の一つであるが、NAが1.3以上の高NAでは反射屈折型光学系になりミラーの反射損失を補うためにArFエキシマーレーザーは高出力化が求められている。単純に出力を大きくすると光学系が損傷を受けるので、繰り返し周波数を高めることは有効である。例えば、パルスエネルギーを15mJから10mJに下げれば、石英の2光子過程による光損傷は40%に減少する。高出力化のためには、レーザーの不安定性の原因となる放電時にチェンバー内で発生する音波を低減する必要がある。Gigaphotonではチェンバーの内部構造を改良して、6kHzまでスペクトル幅が変わることなく安定に発振することを確認しており、2006年に出力60W、繰り返し周波数6kHzの45-65nm hp用のArFエキシマーレーザーを販売するという18)。また高出力化には、チェンバ一内の放電で効率よく一定の混合ガスを供給し、副生成物のフッ素化物、イオンあるいは電極からの発生物などを取り除いて、効率的にガスを送る高性能ファンの開発も必要とされている。例えば、1kHzで運転した場合のファン出力は400Wであるが、6kHzの場合は5、600Wもの大出力のファンが必要となる。また、更なるパルス時間幅の拡幅技術、電気回路や冷却システムの改良も必要となる。CymerOArFエキシマーレーザーXLA300は出力を90Wに高出力化し、繰り返し周波数で6kHz、E95で0.25pm以下を達成している19)
 これら全てが揃えば、32nmデバイスでもArF液浸りソグラフィが延命できる可能性が出てくる。その際には、ArF液浸リソグラフィ特有の問題ではないが、一般的な微細化に伴い、LER(あるいはしWR:Line width roughness)の制御などの課題がある。レジストのドライエッチング耐性の向上も必要であり、エッチング条件の最適化や多層レジスト・プロセスも必要になる場合がある。微細化に伴い、高度なOPC、二重露光法なども必要になりコスト面からの検討も重要になる。


[引用文献]
1) 徳山 巍編,超微細加工技術,オーム社(1997)
2) 野々垣三郎,マイクロリソグラフィ,丸善(1986)
3) Wayne Moreau, Semiconductor lithography, Principles, Practices, and Materials, Prenum Press, New York (1988)
4) L.F.Thompson et al., Introduction to Microlithography, American Chemical Society (1994)
5) 岡崎信次ら,はじめての半導体リソグラフィ技術,工業 調査会(2003)
6) H.Ito, “Chemical Amplification Resists for Microlithog-raphy,” Adv Polym. ScL, 172, 37-245 (2005)
7) W.Hinsberg et al., “Measurement of Thin-Film Dissolution Kinetics Using a Quartz Crystal Microbalance,” J. Electrochem. Soc.,133,1448-1451(1986)
8) M.Toriumi et al., “Swelling Analysis of Methacrylate Polymers in Aqueous Alkaline Developer,” J. Photopolymer Sci. Technol.12, 545-551(1999)
9) 例えば,http://www.maxtekinc.com/やhttp://www. q-sense.com/などがある
10) W.Hinsberg et al., “Experimental approaches for assessing interfacial behavior of polymer during dissolution in aqueous base,” Proc. SPIE 4345,1-9 (2001)
11) M.Toriumi et al., “Dissolution characteristics of resist polymers studied by Quartz Crystal Microbalance transmission-line analysis and pKa acidity analysis,” Proc. SPIE 4690, 904-911(2002)
12) Martha I.Sanchez et al., Proc SPIE 3678 160 (1999)
13) Anatoly Bourov et al., “Immersion microlithography at 193 nm with a Talbot prism interferometer,” Proc SPIE 5377 1573-1578 (2004)
14) Yasuo Itakura et al., “Development and evaluation of a F2 laser for immersion interference lithography at 157nm,” Optical Microlithography XVIII, edited by Bruce W. Smith, Proceedings of SPIE, 5754,1269-1278(2005)
15) Hisashi Nishinaga, et al., “Development of polarized-light illuminator and its impact,” Optical Microlithography XVIII, edited by Bruce W.Smith, Proceedings of SPIE, 5754, 669-680 (2005)
16) Toshihiko Ishihara, et al., “XLA-200 : the Third-Generation ArF MOPA Light Source for Immersion Lithography,” Optical Microlithography XVIII, edited by Bruce W.Smith, Proceedings of SPIE, 5754, 773-779 (2005)
17) H.Mizoguchi et al., “High Power Injection Lock Laser Platform for ArF Dry/Wet Lithography,” Optical Microlithography XVIII, edited by Bruce W.Smith, Proceedings of SPIE, 5754, 780-789 (2005)
18) Tsukasa Hori et al., “Feasibility study of 6 kHz ArF excimer laser for 193 nm immersion lithography” Optical Microlithography XVIII, edited by Bruce W.Smith, Proceedings of SPIE, 5754,1285-1292 (2005)
19) Walter D.Gillespie et al.,”6 kHz MOPA light source for 193 nm immersion lithography,” Optical Microlithography XVIII, edited by Bruce W.Smith, Proceedings of SPIE, 5754,1293-1303 (2005)
 最新動向は,リソグラフィの国際学会であるSPIE主 催のMicrolithographyのProceedingsが毎年発刊され, International Conference on Micro – and Nano Engineering の発表論文がElsevierから毎年出版されており,参考に なる.液浸リソグラフィに関しては,SEMATECH, IMEC 共催の Immersion Lithography Symposium が開催 されており,最新情報が得られる。