第5章 ミクロレーザープロセシング

5. エキシマレーザーリソグラフィ

著者:鳥海 実

1. 概要

 今日の高度情報化社会は、高性能の半導体デバイスを用いた情報通信網およびコンピュータが支えている。高性能の半導体素子は、電気製品の高機能化、多機能化を可能とし、新規製品を開発することにより新規産業にも展開されている。次々と高機能の半導体素子を製造できるのは、その素子の演算速度、記憶密度などの性能が年々向上しているためである。この高性能の素子を製造する方法が微細加工技術であるリソグラフィである。半導体リソグラフィは半導体産業にとどまらず、今日では情報化社会も支え、リソグラフィを応用した加速度センサーやマイクロミラーなどの新しい素子が製造され、ナノテクノロジーやマイクロメカニクスなどの新規産業に展開されつつある。エキシマーレーザーはこのリソグラフィに用いられる露光装置の光源として重要な役割を果たしている。ここでは、現在量産化が始まったArFエキシマレーザーリソグラフィを中心に説明し、実験室レベルでの二光束干渉法やリソグラフィ材料の評価方法であるQCM法などの説明も含めながら、次世代リソグラフィであるArF液浸リソグラフィの最新動向まで述べる。

2. リソグラフィ

 半導体デバイスを作製するための微細加工技術がリソグラフィである。ここでは、30年以上にわたり半導体素子の量産で用いられているホトリソグラフィを中心に説明する1〜5)
ホトリソグラフィ技術とは、電子線描画装置などで回路パターンに対応したマスクをつくり、これを介してシリコンウェハ上の感光性樹脂(レジスト)を露光し、現像によりレジスト微細パターンをつくり、このレジスト・パターンをマスクとして下地基板を加工し、所望の微細パターンを形成する微細パターン形成技術である。このリソグラフィ工程を図1に例示して、各工程を説明する。

  • (a)前処理:微細加工すべき基板には吸着した水分子などがレジストの密着性を劣化させる。そこで、シリル化処理などにより表面を疎水化して、レジストとの接着性を向上させる。更に、被加工基板上に反射防止膜を塗布し、露光時の定在波やハレーションにより解像性が悪化するのを防ぐ。
  • (b)レジスト塗布、PB:この前処理した基板の上に、フォトレジストを滴下し、3000〜6000rpmと高速回転させて、均一な膜を作成する。塗布後のレジスト膜中に残留している塗布溶媒を80〜130°C程度の温度で露光前加熱(PB:Pre-bake)して揮発させて、高分子媒体を緩和させて、膜質を向上させ、下地との接着性を向上させた後、所望の膜厚にする。
  • (c)パターン露光:次に、所望の回路パターン情報を有するマスクを介してレジスト薄膜を露光する。通常、マスクは石英基板上に遮光材としてクロムがパターニングしてある。クロムが無い部分を光が通過してレジストをパターン露光することになる。この例では露光光源に光を用いるので、ホトリソグラフィと呼んでいる。x線のような短波長の電磁波を光源として用いる場合にはX線リソグラフィ、電子線を用いる場合には電子線リソグラフィと呼んでいる。次々世代リソグラフィとして注目されているEUV(Extremeultra-violet)リソグラフィは波長13nm程度の軟X線を光源としている。
  • (d)PEB、現像、リンス、現像後加熱:露光後、90〜150°C程度の温度で加熱処理する。この露光後加熱(PEB:Post-exposurebake)により、露光時に生じた定在波の影響が低減される。また、現在のレジストは化学増幅系レジストを主に使っているが、化学増幅系レジストの場合、PEBは酸触媒反応を促進し、レジストを高感度化させる重要な工程でもある。このPEB後にレジストを現像する。現像液にはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)などの有機アルカリ水溶液が用いられている。
     レジストは、露光部分が酸性に変化するなどして現像液に溶解しやすくなるタイプをポジ型、露光部分が疎水性になるなどして現像液に溶けにくくなるタイプをネガ型と分類されている。図1ではポジ型レジストの場合を例示しており、露光部が現像により溶解除去される。
     現像後にリンスし、回転乾燥することによりレジストの微細パターンを得る。現像後加熱は、レジスト・パターンの耐熱性向上、耐エッチングの向上、接着性の改善、ピンホールの低減、脱ガスなどのために行われる。
  • (e)基板加工:このレジスト・パターンを保護膜として、下地基板をエッチング、あるいはイオン注入などの加工が行われる。レジストはこの加工の際に、「抵抗する」皮膜として働くことより、「resist」と呼ばれている。
  • (f)レジスト剥離:エッチング後に、不要になったレジストを酸素(OJプラズマによる灰化(アッシング)や90〜130°Cに過熱した剥離液(フェノールとハロゲン化物を含む有機溶剤)に浸漬させて、剥離する。このようにレジストを除去して、基板に所望の微細加工を施したことになる。
     半導体素子の作製ではこのようなリソグラフィ工程が数十回繰り替えされ、リソグラフィ工程が全製造工程の半分以上を占めている。

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