第4章 マクロレーザープロセシング

9. レーザークラッディング

著者:沓名 宗春

1. はしがき

 近年、レーザーを始め、プラズマ、イオンビーム、電子ビームなどビームエネルギーを用いた金属の表面加工技術が開発され、各種部品の多機能化、長寿命化、高性能化などに広く利用されるに至った。すなわち、ここ20年間に材料工学のみならず半導体工学、精密機械工学、電子工学などの分野においても、金属、合金、酸化物、炭化物、窒化物などの薄膜生成や皮膜形成により、物理的、化学的、機械的な表面機能の強化、電気的機能の付加、光沢や色彩の変化による意匠性の付与などの目的で高エネルギービームによる表面加工技術が研究開発され、表1に示すように実用化されている1)。レーザーによる皮膜生成による研究も近年盛んで、すでにレーザークラッディングは自動車産業、エネルギー産業、機械産業などで実用化されている。ここではレーザークラッディングを概説する。

2. レーザークラッディングの特徴と溶融特性

 レーザービームを材料表面に照射するときのエネルギー密度を102〜1012W/cm2の広範囲で変化できることから、材料の単なる加熱・溶融から蒸発・イオン化(プラズマ化)まで可能で、各種レーザー表面加工法が開発された。レーザークラッディングもその1つである。金属表面に各種材料を合金化・肉盛させ、部品の耐食性、耐摩耗性、耐酸化性などを向上させる。Cr、Ni、Mo、Wなどの金属、酸化物や炭化物などの化合物、金属間化合物を多く含む合金層を形成させる。レーザークラッデイングはつぎの特徴をもつ。
1) 高エネルギー密度のため高融点材料も肉盛可能
2) 線材が困難な金属酸化物や炭化物など脆性な材料も粉末の溶加材として利用できる。
3) 微細肉盛が可能である。
4) 低い希釈率を得るなど希釈率の制御が容易。
5) 結晶粒が微細で、偏析のない均一な金属組織が得られる。肉盛部の性能向上が可能。
6) 合金成分や肉盛層の厚み制御が容易で、直接造形や補修肉盛に利用できる。
7) 準安定相、過飽和固溶体の生成も可能。固溶限の拡大になる。従来以上に性能が期待できる。
8) 熱が低く、冷却速度・凝固速度が大きい。
9) 熱歪の発生がわずか。
10) 局部の補修、肉盛に適する。

 これらの特徴を2〜3のデータで示す。たとえば上記の7)の特徴を示す。図1はニッケルの表面にニッケルーハフニウムをレーザークラッディングしたときの固一液界面での冷却速度を示す2)。1秒以内では冷却速度が100°C/s以上と非常に.高い。また、この時の肉盛層厚さとレーザー入熱量に対するハフニウムの濃度を図2に示す2)。レーザー照射時間が短かく、肉盛層厚さが薄いときにはハフニウムの濃度は固溶限(平衡状態では3.05%)を超えて、3.65%にもなる。急冷により固溶限拡大が起こったことを意味する。
 レーザークラッディングでの冷却速度は通常103〜106°C/sと急速で、合金元素の偏析が生じにくい。また、基板との接合界面での合金元素の拡散距離が短かいなどの特徴もある。
 レーザービーム吸収率は母材の材質よりも用いる粉末や表面状態の方が大きく作用する。図3は軟鋼母材に二ツケルやFe+Cr粉末にエチルシリケートを混合したときのビーム吸収率を示す3)。SiO2の添加により吸収率が増加する。通常粉末添加のレーザークラッディングでは約50%〜80%の吸収率である。

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