第3章 プロセス装置

2. プロセス用レーザー

7. Qスイッチ発振固体レーザー

著者:工藤 秀悦

7.1 はじめに

 固体レーザーの発振を制御して高出力パルス光を得る手段として、Qスイッチ法がある。固体レーザーは、上準位寿命が長いため励起エネルギーの蓄積が可能で、Qスイッチによりジャイアントパルスと呼ばれる高ピークパワーの短パルスを発生させることができ、レーザー加工の分野で広く用いられている。
 連続(Continuous-wave、CW)発振での出力が数W程度の固体レーザーをQスイッチ動作させることにより、薄膜のトリミングなどのレーザーマイクロ加工に十分使用可能なピークパワーが得られる。また、パルス励起の固体レーザーをQスイッチ動作させることで、穴あけなどのより高いピークパワーを必要とする加工への応用も可能である。本項では、Qスイッチの動作原理と、Qスイッチ発振固体レーザーの装置例等について述べる。
 

7.2 Qスイッチ

 固体レーザーは、レーザー共振器のQ値(Quality factor value)を高速に制御することで、共振器内に蓄積した励起エネルギーを短時間に光パルスとして取り出すことができる。
Q値はレーザー共振器の発振しやすさを示すもので、以下の式で表される。Q値が高いほど、発振しやすい状態をあらわす。

 共振器中の損失αを増大させてレーザー共振器のQ値を低い状態にすると、誘導放出等で共振器から放出されるエネルギーよりも共振器に注入される励起エネルギーが上回るので、レーザー媒質中に励起エネルギーが反転分布の形で蓄積される。十分に励起エネルギーが蓄積された後、急速に共振器中の損失αを減少させて、共振器のQ値を高くスイッチングすることで、急激に誘導放出が増加し、レーザー媒質中に蓄積されていた反転分布のエネルギーが、ジャイアントパルスと呼ばれるピークパワーの非常に高い短パルス光として出力される。このように、レーザー共振器中の損失αを制御することで共振器のQ値を高速にスイッチングする操作を、Qスイッチと呼ぶ。
 固体レーザーは、レーザー遷移の始準位の寿命が比較的長く、低Q値でのエネルギー蓄積効果が大きいため、Qスイッチによりメガワットを超える非常に高いピークパワーのパルス光を得ることが可能である。
 Qスイッチ発振固体レーザーの共振器中の損失αを制御する方式には、高速な光スイッチング素子を使用する能動Qスイッチと、非線形な光吸収飽和特性をもった可飽和吸収体を使用する受動Qスイッチがあるが、受動Qスイッチは、パルス繰返しや出力特性が可飽和吸収体の特性に依存し、任意の制御が困難なため、レーザー加工にはあまり用いられない。能動Qスイッチは、初期には高速に回転するミラー等を用い、一方の共振器を構成するミラーと正対したときにQ値が増大してQスイッチ発振する方式が取られたが、今日ではより高速に動作し、信頼性、制御の容易性が高い以下の2つの方式が、主に加工用固体レーザーのQスイッチとして用いられている。
① 音響光学(Acousto-Optical、AO)Qスイッチ
② 電気光学(Electro-Optical、EO)Qスイッチ
これらの各方式について、以下に詳述する。

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