第2章 プロセス(加工)技術の基礎

4. レーザーアブレーション

著者:西尾 悟

1. 諸言

レーザー光をレンズで集光するなどして金属、無機化合物、高分子など様々な物質にある一定の強度(しきい値)以上で照射すると、それら物質の表面から中性原子、分子、イオン、ラジカル、クラスター、電子など様々な粒子が飛び出し、物質表面がエッチングされる。この現象をアブレーションと呼ぶ。図1にその模式図を示す1,2)。和名では「爆蝕」と呼ばれることもある3)。アブレーシヨンとはもともと「除去」、「切除」、「切断」、「削摩」、「消耗」、「剥離」などを意味する言葉である1,4)
アブレーション現象を利用したレーザープロセス(レーザー加工)は図2に示すように、金属、半導体、高分子といった様々な物質の微細加工、薄膜創製、ナノ微粒子創製、元素分析、さらには真空紫外光からx線領域にわたる短波長光発生、あるいはアブレーションにより生じる爆縮反応に着目したレーザー核融合、さらには生体物質におけるアブレーションによる医療応用などがあり、様々な分野への応用がなされ、また新しい光源の開発とともに更なる展開が期待されている。
本節の前半では、まずアブレーション研究のこれまでの歴史について展望する。その後、主に無機材料を例にレーザーアブレーションの一般原理について概説したのち、薄膜材料創製をはじめとする応用例について概観する。また、その化学反応への応用についても述べる。後半では高分子のアブレーションについて解説する。高分子のアブレーションについては、本便覧では他に記述が無いので、少々ページを割いた。まずその原理を紹介したのち、表面改質、薄膜作製などについて述べるとともに、生体材料への応用あるいは医療応用にも簡単に触れる。最後に、トピックスとしてフェムト秒レーザーを用いたアブレーション、および放射光や自由電子レーザーを用いたアブレーションについても紹介する。

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