第8章 レーザーと安全・環境

4. レーザープラスチック分別技術

著者:本越 伸二

 現在、プラスチック材料としてJISに登録されているのは約100種類。そのうち、自動車部品では約30種類、家電製品には十数種類が使用され、その他食品包装類、建築材、医療機器等、幅広く利用されている。その理由は、プラスチック類の加工のしやすさ、コスト、豊富な種類等、優れた特徴を有するためである。幅広い利用に比例し、それらの製品を廃棄する際に発生するプラスチックの量も年々増加し、既に年間900万トンを越えている。しかも、日本の場合、その最終処分は、一部の材料を除いて「埋め立て」であり、埋め立て場所、周辺環境への影響など社会問題にもなっている。そのため、1995年に容器包装リサイクル法が、2001年には家電等再商品化法案が施行され、積極的なリサイクルへ意識が高まっている1)

 プラスチック材料の十分なリサイクルが難しい理由は、豊富な種類に起因している。リサイクル先進国ドイツにおいては、固体燃料へのリサイクルが進められている。これは、一括で再加工が可能であることから厳密な選別の必要はないが、燃焼時に有毒ガスを排出する材料については予め選別する必要はある。これらサーマルリサイクルと別に、材料としてリサイクルをするマテリアルリサイクルが進められている。この場合には、豊富な種類に対して厳密な選別が要求されている2,3)
 プラスチック類の識別法としては、大きくは機械的識別と光学的識別が行われている。機械的識別では、材料の比重、静電気、融点、強度などで識別するものである。この中でも融点の違いを利用した加熱法が一般的である。材料を直接加熱し、煙、溶け方により材料を判別するものである。簡単且つ廉価な手法ではあるが、識別できる種類は限られ、しかも経験が必要とされている。エ場ラインとしては、比重法が使用されている。これは、材料を細かく粉砕し液体の中に入れ、比重により材料種を分けるものである。装置が大型かつ高価であり、また前準備が必要である。
 もう1つの光学的識別法は、比較的新しく、赤外線やx線分光を用いて光学特性を評価し識別する手法である。プラスチック材料は個々に特徴的な分子構造から構成されていることから、材料を構成する組成、また分子振動を評価することにより容易に識別が可能である。X線光源に比べて赤外光源の方が装置が安価であり、特に、最近では近赤外に注目が集められている。その理由は、単色光源であるレーザー光源が豊富にあり、従来のランプ光源に比べて装置がシンプルで、高い安定性が得られるためである4)。近年では半導体レーザーのコストも下がり、よりコンパクトな装置が可能である。しかしながら、透過および反射光量の評価では、複雑な形状、表面の状態、不純物や色素の含有等によっても異なった結果となるため、全てに対応できるわけではない。
 複雑な形状や表面の状態に対しても識別が可能にするために、材料からでる特徴的な蛍光を評価する新しい手法が提案されている。材料に紫外光を当てると、構成元素、分子構造、そして添加材料より、特徴的な蛍光が現れる。この蛍光は、材料表面近傍から放出されるので、形状や表面の状態に対してあまり影響されないので材料の識別には適している。

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