第6章 材料創製
3. 無機ナノ粒子
1. はじめに
1980年代Qスイッチを利用した高エネルギーで短いパルス幅を有するレーザーが比較的安価に入手できるようになり,また1987年に紫外レーザーによるアブレーションによる高品質のYBa2Cu3O6+y(YBCO)などの酸化物高温超伝導体薄膜が容易に作成できることが報告されて以来レーザーアブレーションを利用した材料調製法に関する研究がきわめて盛んに研究されるようになってきた。このころは特に,1985年のフラーレンの発見でレーザーアブレーションが使用された時期とも重なり、さらにその後のレーザーアブレーションによるカーボンナノチューブ生成に関する報告など、レーザーアブレーションによるナノ材料創製が注目されるようになってきた時期である。このようにナノテクノロジーのためのナノ材料プロセシング(加工)としてレーザーアブレーションの重要性がより高まってきたことから90年代初頭以降、無機ナノ粒子に関しても再び多くの研究が報告されるようになって来た。本節では、主として1990年以降に報告されてきたレーザーアブレーションによる無機ナノ粒子の合成法に関する研究を中心に解説する。1990年頃まで盛んに研究されていたレーザー誘起気相反応法およびレーザー加熱・蒸発凝縮法によるセラミックおよび金属ナノ粒子の合成法に関してはすでに数多くの総説や解説1〜5)があるのでそちらを参照されたい。
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2. 気相レーザーアブレーションによるナノ粒子合成
この方法の場合、気相中に飛び出してきた化学種を雰囲気ガスによって閉じこめて、ガス分子との衝突あるいは化学種同士の衝突によって、凝集させてナノ粒子を形成させることから、アブレーション時の圧力条件が極めて重要となってくる。通常レーザーアブレーションによる薄膜調製では高真空から数百Torrまでの圧力範囲が使用される場合が多いのに対して、ナノ粒子の調製ではより高い圧力領域(1Torrから10Torr程度)を使用する6)。また、ナノ粒子を気相中レーザーアブレーションで合成する場合、一般的に基板上にナノ粒子を捕集してナノ粒子堆積膜として取り出したうえでキャラクタリゼーションが行われる。ターゲットと基板の位置関係は図1に示すように、011-axis配置あるいはOff-axis配置の二通りの配置が選択されることが多く、Off-axis配置を選択した場合には基板上への液滴状粒子(ドロップレット)の混入を低減できる場合もある7)。さらに、ターゲットと基板との間の距離を変化させるとナノ粒子のサイズも影響を受ける。
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