光免疫療法のこれまで(過去・現在)
光免疫療法が2011年に報告されて以来、NIHの小林グループを中心に研究が進められてきた。まずは、様々ながん種の細胞に高発現している膜貫通型チロシンキナーゼ受容体であるEpidermal Growth Factor Receptor(EGFR)(上皮成長因子受容体)やHuman Epidermal Growth Factor Receptor 2(HER2)(ヒト上皮成長因子受容体2)を標的とする光免疫療法の検討が行われ、EGFRまたはHER2が発現している種々のがん細胞において、細胞レベルでの殺傷効果に加え、がん細胞移植マウスに対する治療効果が示された。その後、様々な膜タンパク質を標的とする光免疫療法の検討が行われ、同様に高い治療効果を有することが明らかとなった。さらには制御性T細胞や腫瘍関連マクロファージ、がん関連線維芽細胞、新生血管など、腫瘍微小環境を構成するがん細胞以外の細胞を標的とする光免疫療法の有効性も示されている。また光免疫療法では、がん細胞を標的とした場合でも直接がん細胞を殺傷する作用だけでなく、がんに対する免疫を活性化することでもがん細胞を攻撃可能であることが明らかとなっている(詳細は「光免疫療法の原理や構成」の項を参照)。 これらの基礎研究の結果を基に、切除不能な頭頸部扁平上皮がん患者を対象とした、抗EGFR抗体セツキシマブにIR700を結合した薬剤による第1相臨床試験が、2015年に米国において開始された。その後、臨床試験は順調に進み、米国において行われた30人の患者を対象とした第2相臨床試験では、がんが完全に消えた完全奏効が13.3%、がんが30%以上縮小した部分奏効が30.0%、合わせて奏効率が43.3%という高い治療成績を示した。そして2019年からは国際共同第3相臨床試験が開始され、2020年9月に「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」に対する治療として、世界に先駆けて日本において承認された。現在、日本においては、保険診療として治療を受けることが可能であり、2021年夏の時点で全国約20の医療機関で光免疫療法が行われている。実施可能施設は徐々に増えており、2021年中には約40の施設で治療できるようになる予定である。
光免疫療法のこれから(未来)
光免疫療法の今後であるが、まず現在承認されているEGFRを標的とする光免疫療法を他のがんへと適応を広げていくことになる。頭頚部がんだけでなく、様々ながんにおいてEGFRの高発現が報告されている。すでにセツキシマブ-IR700を用いたEGFR発現食道がんおよび胃がんに対する医師主導型臨床試験が、2019年より国立がん研究センター東病院において開始されている。その他にも子宮頸がんや膀胱がんなど多くのEGFR陽性がんが治療対象になると考えられ、今後のさらなる適応拡大が期待される。
また、現在は他の治療を行った後に再発した進行がんのみが治療対象となっているが、早期の症例に対する検討も重要である。光免疫療法は身体へのダメージが少ない治療法であるため、早期治療でがんを死滅させることができれば、患者の負担を軽減し、治療後の生活の質(Quality of Life:QOL)を大きく向上することにつながる。また光免疫療法による副作用は少ないため、光免疫療法によりがんを小さくしておいて、必要であれば他の治療法を実施することに何ら支障はない。例えば光免疫療法によりがんを小さくすることで、その後の手術による侵襲も小さくすることもできる。以上のことから、光免疫療法を早期に実施することは大きなメリットを有する。
EGFR以外のがん特異的分子を標的とする抗体とIR700複合体の薬剤を臨床応用へと繋げていくことも重要である。マウスを用いた検討において、すでに多くの抗体を用いた光免疫療法が実施されており、その有用性が明らかとなっている(詳細は「実際の医療活動で患者様にどのように貢献できるか」の項を参照)。これらの抗体を臨床使用できるようになれば、より多くのがんに対して光免疫療法を実施できるようになる。
一方で、多くのがんに対して光免疫療法を実施するためには
新規薬剤の開発だけでなく、光を照射するための装置の開発も必要である。今後、光免疫療法が多くのがんや早期症例に適応拡大していくと、さらに多くの施設で治療が実施されるようになると予想される。多くの施設で光免疫療法を一定のレベルを保って行うためには、術者の手技によらず精度よく光を照射できる装置の開発が重要であると考えられる。また、消化管内部のがんに対しては内視鏡による照射が必要となることから、光免疫療法に適した内視鏡の開発も必要となってくる。また体表から離れたがんに対しては、カテーテル針を腫瘍内に穿刺した後に光ファイバーを挿入して照射を行う必要があり、このような照射に適した器具の開発も重要である。
参考文献
1. Mitsunaga M, Ogawa M, Kosaka N, Rosenburm LT, Choyke PL, Kobayashi H. Cancer Cell-Selective In Vivo Near Infrared Photoimmunotherapy Targeting Specific Membrane Molecules. Nature Medicine 2011; 17(12): 1685–1691.
2. Kobayashi H, Choyke PL. Near infrared photoimmunotherapy of cancer. Accounts of Chemical Research 2019;52(8):2332-2339.
光免疫療法関連製品ラインナップ
腫瘍に特定の波長を照射するレーザー発振器
レーザーを効果的に照射するディフューザー
| 製品名/メーカー | バッオリジナルデバイス (バイオメディカル / OEMモジュール) / Modulight |
|---|---|
| 特長 |
ML7710は、全ての既知の光増感剤をサポートする各種医療用途に適した、ターンキーレーザーシステムプラットフォームであり、安全性及び操作性に必要な全ての機能を備えています。標準的特徴には、使い易いタッチスクリーンユーザーインターフェースと、それぞれ個別にアドレス可能な多様なファイバ出力チャンネルと、照準ビームと、スマートインターナルキャリブレーションモジュール、足/手スイッチ、ファイバーセンサーとゼイフティーインターロックとが含まれています。 設計及び製造プロセスは、ISO13485:2003に基づいて実施され、設計はIEC60601及びFDA CDRH 21CFR1040.10の要求及び規則を満たしています。8チャンネル迄で、400-2000nm 及び0-15Wに渡る全ての構成との稼働が証明されています。 |
腫瘍に特定の波長を照射するレーザー発振器
| 製品名/メーカー | ファイバーカップリングレーザーシステム / CNI |
|---|---|
| 特長 |
FCシリーズ(Fiber Coupling Laser System)は、1つの箱に集積型半導体レーザー、レーザーキャビティ、ファイバーカップリング光学素子、レーザー電源、LD駆動電流と温度の制御機能が入っています。コンパクトでかつパワー調整、温度制御、LEDディスプレイなどの便利な機能がついており、励起光源、研究、産業および医療用途に非常に適しています。 |
レーザーが効果的に照射できているかを確認するのに必須の「ビームプロファイラ」
| 製品名/メーカー | 大口径・高出力対応ビームプロファイラ / 光響 |
|---|---|
| 特長 |
大口径・高出力対応ビームプロファイラ「LBP-B」シリーズは、受光面最大800 mm角の世界で最も大きなビームを測定できる測定機器です。多数のLEDや半導体レーザーの同時発光評価、LiDARの評価機などにも使われております。カスタムも可能で一台で幅広くお使い頂けます。 ソフトウェアは各種解析機能を備えユーザビリティが高いと評価されている「ビームプロファイラ with M2 プラットフォームソフト LaseView」を採用しています。 |
参考情報
(株)光響が提供する製品情報:
