目次

1. 超短パルスレーザーのパルス幅計測器の分類(オートコリレーター、FROG、SPIDER)
2. オートコリレーターとは
3. 第二次高調波発生とは
4. 二次の非線形光学結晶とは
5. 位相整合とは
6. オートコリレーターによるパルス幅測定
7. オートコリレーターの製品比較
8. オートコリレーターのメーカー

1. 超短パルスレーザーのパルス幅計測器の分類

超短パルスレーザーのパルス幅測定には、オートコリレーター、FROG、SPIDERなどが用いられる。詳しい分類はパルス幅計測器の分類に記載されている。

2. オートコリレーターとは

オートコリレーターとは、自己相関計といわれ、超短パルスレーザー(フェムト秒レーザーやピコ秒レーザー)のパルス幅を計測できる機器である。超短光パルスは非常に高速な現象であるため、直接にパルスの特性を測定することが困難である。こういった超高速現象では、自己相関法に基づいた計測が行われる。

オートコリレーターの測定システム

オートコリレーターの測定システムを下図に示す。入射光は2つに分けられ、一方は光学距離(時間)の調整ができるようになっている。2つのビームが合波されるところに 2次の非線形光学結晶が配置され、出てきた2次高調波(SHG)を光検出器で測る。SHGの強さは光の強さの積で決まるため、2つのパルスの時間差を変えていくとSHGの強さも変わっていく。非線形光学結晶でのパルスの重なり度合いをパルスの左端から右端まで変えていって、時間差とSHGの強さとの関係をプロットしたものを自己相関波形という。

自己相関法によるパルス測定の原理

図1. 自己相関法によるパルス測定の原理

自己相関波形は時間差0を軸にして必ず対象になるため、実際のパルス波形はガウス型かsech型か非対称型かは分からない。パルス幅はパルス波形を仮定することで求める。

オートコリレーター – パルス波形とパルス幅

例えば、オートコリレーターにより測定された相関幅をΔτとする。パルス波形をガウス型と仮定した場合、パルス幅は下式で求まる。

ガウス型自己相関

パルス波形をsech2型と仮定した場合、パルス幅は下式で求まる。

sech2型自己相関

またSHG+光検出器の組み合せの代わりに、2つの光子の吸収で光電流が流れる2光子吸収の現象を用いる場合もある

3. 第二次高調波発生とは

第二次高調波発生(SHG: second harmonic generation)とは、非線形光学効果の一種であり、光が非線形光学結晶と相互作用することで、もとの光電場の倍の周波数の光電場が得られる現象である。 レーザー光のような強い光電場が物質に相互作用すると、光波に応答して電気双極子の集合体である分極Pが形成される。電気分極Pは以下のように展開することができる。 電子分極 第1項は線形分極を表す。第2項以降は電場のn乗に比例する非線形分極を表す(nは次数を表す)。また、χ(n)はn次の非線形感受率を示し、物質によって値が異なる。 第二次高調波発生は二次の非線形光学効果である。入射光に次式で与えられるような単色の正弦波を考える。 単色正弦波 このとき、式(1)の第二項は

3

となる。すなわち χ(2)≠0の物質において,入射光の倍の周波数を持つ光(SHG光)が得られる。また、得られるSHG光の大きさは入射光の振幅の2乗に比例する。

第二次高調波発生

図2. 第二次高調波発生

4. 二次の非線形光学結晶とは

非線形光学媒質には材料、形状共に様々な種類があり、用途に応じて選択することが大切である。材料には有機化合物や無機化合物が用いられている。また、形状は単結晶、薄膜、導波路がある。強い第二次高調波(SHG)光を得るためには2次の非線形感受率が大きい材料が望ましい。またそれだけでなく、入射光とSHG光の位相速度が一致する媒質が必要となる。この位相速度の一致を位相整合と呼ぶ。位相整合には光学結晶の複屈折を用いたもののほか、結晶に強電圧をかけて非線形感受率の極性を周期的に反転させた擬似位相整合(QPM: quasi-phase matching)がある。代表的な非線形光学結晶の特性を表1に示す。

非線形光学結晶 透明波長帯 [μm] 非線形光学定数 [pm/V]*1 位相整合法
LiNbO3(LN) 0.34 ~ 4.5 d31=-4.6 複屈折・QPM
d33=-25
LiTaO3(LT) 0.3 ~ 4.5 d31=0.85 QPM
d33=-14
KTiOPO4(KTP) 0.35 ~ 4.5 d31=3.7 複屈折・QPM
d32=2.2
d33=15
KNbO3(KN) 0.40 ~ 4.2 d31=-7.8 複屈折・QPM
d32=-11
d33=-19
β-BaB2O4(BBO) 0.19 ~ 2.6 d22=-2.2 複屈折
d31=0.04
LiB3O5(LBO) 0.16 ~ 2.6 d31=-0.67 複屈折
d32=0.85
CsLiB6O10(CLBO) 0.18 ~ 2.7 d36=0.74 複屈折
α-SiO2(水晶) 0.16 ~ 3 d11=0.30 QPM
AgGaS2 0.5 ~ 12 d36=13*2 複屈折
ZnGeP2(ZGP) 0.75 ~ 12 d36=75*2 複屈折
GaAs 0.87 ~ 14 d36=170*3 QPM
d36=83*2
GaN 0.37 ~ 13.5*4 d33=17 QPM

*1 基本波長1.064 μmでの値
*2 基本波長10.6 μmでの値
*3 第二高調波0.532 μmが吸収体にあるので注意が必要
*4 LOフォノンの吸収端

5. 位相整合とは

SHG光は非線形結晶中で入射光の伝搬とともに生成される。この時、入射光とSHG光の位相速度によってSHG光の変換効率が決まる。ここでは、非線形光学媒質中における光電場E1,それに伴い発生する非線形分極P2、およびP2によって発生する新しい光電場E2の伝搬から位相整合条件を考える。媒質中にE1の発生源は無い。このため、一方向(z方向)に伝搬する様子は以下の式で表される。

5

ϵは誘電率、μ0は真空の透磁率を示す。この式を解くとE1式5 となる。これは振幅がE10、周波数がω1、位相速度がω1/k1で波数k1方向に伝搬する正弦波を表す。一方、結晶内ではP2によってE2が発生する。この様子は

4
で表される。P2もz方向に伝搬し、 式7 で表される。これは、P2も位相速度ω1/k1でz方向に伝搬する波であることを示している。これがE2の発生源となる。E2式8 であり式(3)~式(5)を用いると 式9 第2項の詳細 が得られる(※)。非線形分極波の振幅がzに依存しない、すなわち結晶内でのP20が場所によらず一定であると仮定すると、長さLの非線形媒質の出口でのSHG光の強度は、 式10 で与えられる。ここでΔk=k2-2k1である。これは非線形分極波と新しく発生した光波の波数の不一致、すなわち位相速度の不一致を示す。また、光電界強度が最大値を撮るまでの距離をコヒーレンス長といい、以下式で表す。 式11 位相速度の不一致が少ないほど、効率の良い波長変換が行われるため、位相整合条件を満たすことが重要となる(下図)。

伝搬に伴うSHG光強度の様子

図3. 伝搬に伴うSHG光強度の様子

※この計算では入射したレーザー光によって非線形媒質中に非線形分極が生じる過程については触れておらず、P2がE2の発生源となる様子を示していることに注意する。

6. オートコリレーターによるパルス幅測定

超短光パルスは非常に高速な現象であるため、直接にパルスの特性を測定することが困難である。こういった超高速現象では、自己相関法に基づいた計測が行われる。光パルスのパルス幅測定には第二次高調波発生(SHG)を用いたSHG強度自己相関が用いられることが多い。SHG強度自己相関計(オートコリレーター)では、光パルスを2つに分け、一方に遅延を与えた後、二次の非線形光学結晶中で重なるように集光される。光パルスの電場をE(t) = I1/2(t)exp()とする。I(t)は光の強度時間波形、φ(t)は時間領域の位相である。この光パルスから得られるSHG強度自己相関波形G(τ)は以下の式で与えられる。 fjcd22374661 下図にガウシアンパルスのSHG自己相関波形を示す。

SHG自己相関波形

図4. SHG自己相関波形


式(1)のフーリエ変換は、|I˜(ω)|1/2を与える。これから強度波形のフーリエ変換I˜(ω)を得ることはできるが、位相が不明であるため、元の強度波形を求めることはできない。しかし、強度波形が左右対称であれば、I˜(ω)は実数となり、ω=0を滑らかに横切ると仮定すれば、強度波形を求められる。より慣用的には、おおよその波形の関数形を仮定した上で、パルス幅tpと相関幅Δτの関係から、パルス幅を求められる。

なお、自己相関波形は二光子吸収(TPA: two photon absorption)を用いても得る事ができる。TPA自己相関計では,遅延干渉計からの光パルスを光検出器 (PD: photodetector)に直接集光する。PDが入射光波長の倍波に感度を持っていれば,集光点においてTPAが発生した際、入射した光強度に比例した電気信号が得られる。遅延を変えてTPA信号を計測することで自己相関波形が得られる。
この方法では、入射光の波長に感度を持たないPDを用いることで、光フィルターなどを用いなくても純粋な自己相関信号のみを計測でき、かつ、非線形光学結晶が不要となる。このため測定系を簡易化することができる。

パルス幅tpと相関幅Δτの関係を表1に示す。強度相関波形には位相φ(t)の情報が含まれていない。このため、チャープを見積もるには、別個にパワースペクトルの測定を行い、スペクトル幅(帯域幅)Δνとパルス幅tpから、時間帯域幅積tpΔνを作り、表1と比較することでチャープの有無を判断する。

表1. チャープフリーな光電場におけるパルス幅、相関幅、スペクトル幅の関係

強度波形 I(t) の関数形 Δτ/tp tpΔν ΔτΔν
ガウシアン
gaus
1.41 0.441 0.622
sech2
sech
1.54 0.315 0.488
ローレンツ型
lorentz
2.00 0.221 0.442
三角波
triangle
1.44 0.540 0.778
矩形
rectangle
1.00 0.886 0.886
sinc2
sinc
1.33 0.886 0.180
片側指数関数
oneside-exp
2.00 0.110 0.220
両側指数関数
both-exp
2.42 0.142 0.344

参考文献

[1] 黒澤宏,「入門まるわかり非線形光学」オプトロニクス(2008)
[2] レーザー学会,「レーザーハンドブック第2版」オーム社(2005)

7. オートコリレーターの製品比較

以下に、よく用いられているオートコリレーターの製品を紹介する。

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8. オートコリレーターのメーカー