第7章 最先端加工

7. LIPSS

著者:新納 弘之

1. はじめに

 パルスレーザーを固体試料に照射した場合、その照射部位に間隔が揃った周期的な微細構造が表面に形成されることがある。これは、Laser-Induced Periodic Surface Structure(略称:LIPSS)、または、Laser-Induced Periodic Structure(略称:LIPS)と呼ばれている。もしくは、Laser-Induced Ripple Structure、単にSurface Rippleと呼ばれることもある。LIPSSを作製するには大きく分けて2つの方法がある(表1)。

(ⅰ) 位相の揃った複数本(二本またはそれ以上)のレーザービーム(光束)を同一箇所に重ね合わせて照射し、周期構造を形成させる方法
(ⅱ) 入射光と固体表面との特異的な相互作用による、単一光束のレーザー照射で周期構造を形成する方法
前者は、ビーム間の光の干渉効果を利用しているので、形成する微細構造を高度にシミュレートすることができ、意図的な特定構造の微細構造形成が可能である。従来、固体表面に平面的な二次元構造物を形成する研究を主として進んできたが、最近、立体的な三次元ナノ構造物を作成する研究が進歩してきており、高品位なフォトニック結晶の作製手法として有力視されている。一方、後者は光の干渉効果だけでは説明できない機構を含んでおり、光と物質の特異的な相互作用を基礎として周期構造が形成されている。LIPSSが形成される現象は、レーザービームが固体表面層を加工するためのエネルギー源としてだけでなく、位相の揃った波動ビームとして作用しているところに、LIPSS研究の面白さや深みがある。総説として、いくつかの文献を列記する1〜5)
目次へ ∧

無料ユーザー登録

続きを読むにはユーザー登録が必要です。
登録することで3000以上ある記事全てを無料でご覧頂けます。
ログインパスワードをメールにてお送りします。 間違ったメールアドレスで登録された場合は、改めてご登録していただくかお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

既存ユーザのログイン
   
新規ユーザー登録
*必須項目