第7章 最先端加工

5. 近接場加工

著者:吉川 裕之

1. はじめに

 加工の精度や分解能を向上させることは、あらゆる材料加工に共通の課題である。レーザープロセシングの場合、第一に考えられるのは集光光学系の構築である。波長λの単色レーザーを1枚のレンズを用いて材料に集光する場合を考えよう(図1)。集光点において、光軸とレーザー光の一番外側の線のなす角をθとすると、レーザースポットの半値幅ωはおよそ次のようになる。

 ここでnは周囲の媒質の屈折率であり、大気中ではn=1である。θ<90度であることを考えると、集光したレーザースポットの大きさは波長の半分程度であり、例えば波長1ミクロンのYAGレーザーを用いると、その半分の約500ナノメートル以下のスポットには集光出来ない。この限界は光の回折に起因するため回折限界と呼ばれる。(1)式から分かるように、レンズが十分大きなθで光を集光しているとき、さらにスポット径を小さくするには波長を短くするか、媒質の屈折率を大きくするという二つの方法がある。このため半導体リソグラフィーに使用される光の波長は年々短くなり、現在では波長248nmに加え193nmのエキシマレーザー光の利用が始まっている。また、水や油などの屈折率の高い液体で加工材料とレンズの間を満たすことにより集光スポットを小さくする液浸露光技術も考案されている。さらに、近年発達した超短パルスレーザーを用い、多光子吸収などの非線形光学効果を利用すれば、レーザースポットよりも小さな領域における加工が期待できるであろう。しかし、いずれの場合でも加工分解能は(1)式で求まる集光スポット径に依存する。
 以上で述べた加工分解能の回折限界による制限は、通常のいわゆる“伝播光”を利用する限り避けられない。回折限界を避けるためには、光源の近傍に局在する“光近接場”を利用しなければならない。光近接場による加工(近接場加工)は、実験、研究レベルでは多くの例があるが、様々な制約から、実用レベルで利用されている例はほとんど無い。しかしここ数年、微小開口を持つフォトマスクや表面プラズモン共鳴を利用し、従来の欠点を克服しようという実用レベルに近い研究例もある。本章では、近接場加工に関する最近の研究例や、利点、問題点について述べる。


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