第7章 最先端加工

3. 長波長加工

著者:粟津 邦男、鈴木 幸子

1. はじめに

 長波長レーザー(赤外レーザー:2.5〜25μm)加工は、特に医療・バイオ分野においてその開発・利用が著しい。我々の体を構成する生体物質(例えばアミノ酸、蛋白質、核酸、脂質、生体組織等)は、赤外光を強く吸収することが知られている。これは、生体物質を構成する生体分子の基準振動やグループ振動による(詳細は2に示す)。すなわち、すべての生体物質は中赤外域においてその組成を反映した固有の吸収スペクトルを持つ。
 赤外光の光子エネルギーは、分子結合の解離エネルギーよりも十分小さく紫外・可視光で懸念されるDNAへの突然変異損傷が問題とならないため、赤外光はレーザー医療において大きな可能性を秘めた光源であるといえる。しかしながら、赤外域の既存のレーザー光源では、発振波長が限定されており光を吸収する物質として選択可能な構成要素は水およびアパタイト(硬組織の主成分)に限られる。
 本節では、赤外光と生体分子振動について述べ、医療への利用の進んでいる炭酸ガスレーザー(CO2レーザー:10.6μm)、Nd:YAGレーザー(1.06μm)、Er:YAGレーザー(2.94μm)について概説する。さらに近年、赤外波長領域における応用が期待されている波長可変自由電子レーザーについてその原理と応用例を紹介する。
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