第7章 最先端加工
1. 超短パルス
1. はじめに
レーザーが開発された当初から、パルス幅(パルスの時間的な長さ)の短いレーザーの開発は大きな課題の1っであった。Qスイッチやモード同期などさまざまな手法による短パルス化が研究され、1986年には6フェムト秒という超短パルスの発生が報告された1)。このような超短パルスの代表的な用途として超高速分光がある。Ahmed H.Zewail博士に贈られた1999年のノーベル化学賞(受賞理由:フェムト秒分光学による化学反応の遷移状態の研究)は、超高速分光が現代の科学において確固たる地位を占めていることを象徴するものといえるだろう。
超短パルスは、分光だけでなく、加工にも応用されている。レーザー加工の特性は、波長や強度だけでなく、レーザーが連続光かパルス光か、パルス光の場合にはそのパルス幅によっても変わる。超短パルスレーザーを用いる加工は、後に示すように高いポテンシャルを持っており、連続発振レーザーやナノ秒パルスレーザーを用いる従来のレーザー加工では不可能な加工、さらには従来のレーザー加工を含むあらゆる加工技術で不可能な加工を実現する可能性があることから、近年活発に研究されている。「超短パルス」の具体的な値は時代や分野によって異なるが、この十年程度はパルス幅が数フェムト〜数百フェムト秒程度のフェムト秒レーザーが急速に発達・普及し、加工への応用が精力的に研究されている。そのため、本節では基本的に「フェムト秒レーザー加工」と表記する。フェムト秒パルスとナノ秒パルスの違いを図1に模式的に示す。なお、時間領域に厳密な区分があるわけではなく、加工の内容によっては、数ピコから数十ピコ秒のパルスでもフェムト秒パルスと同様の優れた特性を持つこともある。
フェムト秒レーザーパルスによるレーザー加工に関しては、1980年代にすでに報告がある2)。しかし、この分野の研究が活発になったのは、1990年代後半以降である。これには、従来のフェムト秒レーザーに比べて極めて安定に発振する、Ti:Sapphireを媒質とするフェムト秒レーザーの開発が進み、レーザーの専門家だけでなく多くの研究者が容易にフェムト秒レーザーを扱えるようになったことが大きく寄与している。本節では、フェムト秒レーザー加工の概要を説明する。
フェムト秒レーザー加工は広い内容を含むため、本節の内容には筆者の興味等による偏りもあると思われる。また、フェムト秒レーザー加工というのは、作製するものや手法によらず用いる光源だけに注目した分類方法であるため、本書の他の部分と重複する内容もある。併せてご了承されたい。
2. フェムト秒レーザー加工の特徴
2.1 多光子吸収
フェムト秒レーザー加工における重要なキーワードが多光子吸収である。まずこれについて簡単に説明する。
通常の光吸収は、物質が一個の光子を吸収してより高いエネルギー準位へと上がる。これに対し、複数の光子を同時に吸収してより高いエネルギー準位へと上がる現象が多光子吸収である。多光子吸収は、より広い言葉でいうと非線形光学過程の一種である。非線形光学過程とは、簡単にいうと生じる確率が光の強さに依存するような光学現象である。例えば、ある物体(フィルター、セルに入った溶液など)の吸光度んは、入射光の強度I0と透過光の強度/から、A=-log(I/I0)という式で表される。この式では、吸光度が入射光の強度I0に依存することは全く想定されていない。これは線形な光学過程(この場合は一光子吸収)である。これに対し、非線形光学過程の一種である二光子吸収の場合には、吸収の強さが入射光の強度の二乗に比例する。一般にN光子吸収(N>1)では吸収の強さは入射光の強度のN乗に比例する。このような多光子吸収の場合には、吸収の強さを前述の式で表すことは不適当である。なお、光の強さは、面積あたりのパワー(単位は通常W/cm2)で評価される(厳密には、単位体積内の光のエネルギー(光子数)で評価されるはずだが、光が一定の速さで進むことから単位面積あたりの光のパワーで評価される)。
多光子吸収は、多くの場合生じる確率が一光子吸収に比べて極めて低いため、無視されることが多い。しかしフェムト秒レーザーのように、平均パワーはそれほど強くなくても瞬間的には強いパワーを出すレーザーを使うと、多光子吸収の生じる確率が高くなる。例えば、典型的なフェムト秒レーザーとして、パルス幅100フェムト秒、繰り返し周波数1キロヘルツ、パルスエネルギー1ミリジュール、したがって平均パワー1ワットのものを考える。簡単のためにパルスの時間形状を矩形波とすると、パルスが発振している時間の合計は1秒当たり10のマイナス10乗秒であり、その時のパワーは10の10乗ワットとなる。このフェムト秒レーザーと、平均パワーが同じく1ワットの連続発振レーザーとを比較すると、空間的な広がり、波長などの他の条件が同じ場合、一光子吸収が起こる確率は同じだが、二光子吸収が起こる確率はフェムト秒レーザーの方が10の10乗倍大きい。
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2.2 フェムト秒レーザー加工の特徴
フェムト秒レーザー加工が注目され、研究されているのは、従来のレーザー加工にはない優れた特徴があるからである。これは、それぞれ密接に関係しているが、次の三項目で説明されることが多い。
- (1) 熱の影響を受ける部分が少ない(熱損傷が少ない)
- (2) 空間分解能が高い
- (3) 透明固体の内部加工・三次元加工が可能
このような特徴は、当然ながらフェムト秒レーザーパルスの性質に依拠している。フェムト秒レーザーパルスには、他の光あるいは他のレーザー光とは異なる特徴がある。
代表的なのは次の三点である。
- パルス幅が短い
- 尖頭値が高い
- バンド幅が広い
フェムト秒レーザーパルスの特徴とフェムト秒レーザー加工の特徴との関係を模式的にまとめたのが図2である。この節では、フェムト秒レーザー加工の特徴について、フェムト秒レーザーパルスの特徴と関連付けながら簡単に説明する。これらの特徴は、次節で具体的な加工例とともに再び言及される。
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従来のレーザー加工の多くは熱加工だった。すなわち、例えば切断加工を考えると、被加工物が光を吸収し、まず電子状態のエネルギーが増加する。それが格子振動のエネルギーすなわち熱へと転換し、温度が上がる。温度上昇によって液化あるいは気化した部分を取り除くことによって切断される。このようなプロセス(加工)では、穴の周囲でも温度が上昇し、熱変形・変成した部分が残りやすい。これに対し、フェムト秒パルスを用いた場合には、照射領域に急激にエネルギーが与えられるため、熱が発生する前に原子間の結合が一気に切り離され、元の材料から蒸発する。(電子のエネルギーが格子振動のエネルギーに転換するのに要する時間は、典型的には数ピコ秒程度である)したがって、加工が起こる領域は照射した領域に限定されるため、精密な加工に適する。このときに温度上昇が全くないわけではないが、パルス幅が短い場合にはその間の熱の拡散距離が短く、この点でも精密な微細加工に適する。これに対し、長いパルスを用いた場合では、小さな領域に光を照射した場合でも熱の拡散によって加工範囲は広がり、また熱の影響を受ける部分が多くなる。この様子を模式的に図3に示す。なお、ここではフェムト秒レーザー加工と比較したため従来のレーザー加工は精密な加工に適していないような印象を与えているが、レーザーを用いない他の熱加工方法(例えばガス切断)に比べると、従来のレーザー加工も精密な加工方法といえる。
パルス内(パルスの継続時間内)における熱の拡散長を具体的に評価してみる。ここではごく単純に、パルス継続時間中の熱拡散距離を考える。金属の典型的な熱拡散係数の値はκ=1X10-4m2/s程度である。拡散長を√2κ τで評価すると、10nSでの拡散長は約1.4μmとなり、数百ナノメートルオーダーの微細加工には障害となりうる。これに対し、100fsでの拡散長は約4nmと極めて小さく、微細加工に適合する。もちろんこれは極めて単純化した話であり、実際の拡散距離を考えるためには光照射から加工(アブレーション等)が終了するまでの物理・化学過程の詳細を考える必要があるものの、フェムト秒レーザーが微細加工に適していることを示している。
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レーザー加工の分解能を決めるのは、第一には、加工を行う領域でのレーザー光の空間的な強度分布である。光が狭い範囲に集中していれば加工分解能は高くなり、広い範囲に広がっていれば加工分解能は低くなる。
レーザー光の強度分布が同じでも、多光子吸収などの非線形光学効果が加工を支配する場合は、一光子吸収によって加工が進む場合に比べて加工分解能が高くなる。例えば、加工が二光子吸収によって進む場合は、実効的な光強度は本来の光強度の二乗に比例する。その中で、例えば強度が最大値の半分を上回る領域を見ると、空間分布の形状によるものの二光子吸収の場合の方が1/√2程度になる。すなわち、一光子吸収よりも二光子吸収の方が小さな領域に局在することがわかる。このことを表す模式図を図4に示す。
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光は透明な媒質の内部に侵入することができる。また、光はレンズなどを用いて集光させることが容易である。透明固体の内部で焦点を結ぶように集光すると、焦点で光の強度が高くなり、その点を加工することができる。このような内部加工は、刃物を使う機械加工や、電子やイオンなどの粒子線加工では不可能な、光加工に特有のものである。しかも、原理的にはどんな光でも可能だが、現実的にはフェムト秒のような超短パルス光を用いて多光子吸収反応を誘起しないと、固体内部の局所的な加工を行うことはできない。一光子吸収反応と多光子吸収反応における反応領域の違いを示す模式図を図5に示す。
このような、焦点近傍で局所的に反応が起きるという性質は、透明固体の内部加工だけでなく、感光性樹脂(光硬化性樹脂、光レジスト)の三次元加工にも活かされている。
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材料を選ばずにどんなものでも加工できるということも、フェムト秒レーザー加工の特徴である。タングステンなどの高融点金属、ダイアモンドのような高硬度の透明誘電体、生体やポリマーのような有機物など、どんな材料でも条件を適切に設定することで加工が可能である。
なお、図2にも示したように、バンド幅が広いというフェムト秒パルスの性質は、現時点では加工にあまり活かされておらず、報告例は少ない。バンド幅とは、周波数領域での幅を表す。連続発振やパルス幅の長いレーザ一とは異なり、フェムト秒パルスの場合、パルス幅に不確定性原理に基づく本質的な拡がりがあり、ゼロにすることはできない。パルス幅を、⊿t、バンド幅を⊿νとすると、⊿t⊿ν≥Rという関係がある。ここでRはパルス波形によって異なる10°程度の定数である。パルスの時間波形をガウシアンとすると、定数Rは約0.44となる。このとき、⊿t=100fsとすると、カリの最小値は約4.4THzとなる。これは、分光学でよく用いられる単位の波数で表すと約150cm-1であり、小型分光器でも容易に検出できる、かなり大きな値である。バンド幅が十分に広いときには、周波数領域で位相と振幅を操作することによりパルスの時間波形を制御することができる。これは、光による量子物性制御などに応用されている。加工面においても、効率や分解能などを向上させることができる可能性があるため、今後多くの研究が行われるものと思われる。一方で、バンド幅の広いパルスでは、チャープと呼ばれる現象が強く生じるというデメリットもある。チャープとは、物質の光学定数が波長によって異なるため、レンズなどの透明材料を通過したときにパルス幅が延びる現象である。チャープはバンド幅が広いほど顕著になる。そのため、短いパルスを加工に用いたい場合には、実際の加工位置でのパルス幅に注意する必要がある。
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3. 加工装置
3.1 フェムト秒レーザー装置
各種フェムト秒レーザーの原理や性能などについては、本書の§3.2.9に記されている。ここでは最も広く用いられているフェムト秒Ti:Sapphireレーザーについて簡単に記す。Ti:Sapphireフェムト秒レーザーは、低エネルギーで高繰り返しのフェムト秒パルスを発生するオシレータと、そのパルスを間引きながら増幅して高工ネルギーのパルスを出力する再生増幅器からなる。オシレータではTi:Sapphire結晶のカーレンズ効果を利用したモードロックが、再生増幅器ではチャープパルス増幅が、それぞれキーテクノロジーとなっている。典型的なスペックとしては、オシレータはパルス幅50-100fs、繰り返し周波数50-100MHz、パルスエネルギー10nJ程度、再生増幅器はパルス幅100-150fs、繰り返し周波数1kHz、パルスエネルギー1mJ程度である。この出力は、平均パワーで見てもパルスエネルギーで見ても、レーザー加工に用いられる従来のレーザーに比べてかなり小さい。
Ti:Sapphireレーザーは700〜1100nm程度の広い波長領域で発振するが、フェムト秒パルスを発生されるときには中心波長を効率の高い800nm前後に設定するのが一般的である。高調波発生やパラメトリック効果により波長変換することもできるが、800nm前後の基本波をそのまま用いることが多い。そのため、可視から紫外領域における物質との相互作用には多光子過程が関わることが多い。
なお、フェムト秒Ti:Sapphireレーザーでは、フォトンコストが高いことが加工への応用に向けて大きな弱点として指摘されている。これについては、Ti:Sapphireレーザーの低コスト化・高安定化が進められているとともに、更に低コストな、ファイバーレーザーなどの新しいタイプのフェムト秒レーザーの開発も行われている。
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3.2 光学系
フェムト秒加工では、微細加工を行うために、光学顕微鏡を用いることが多い。そのような加工装置の例を図6に示す。フェムト秒レーザーから出たパルス光を、パワーや径を調整し、さらに場合によってはガルバノミラで角度を微調整した後に、光学顕微鏡に導入する。光学顕微鏡内のダイクロイックミラーで反射した後に、対物レンズで集光し、試料に照射する。照射位置の制御は、ガルバノミラーによる光軸垂直方向への移動とサンプルステージによる光軸方向への移動の組み合わせ、あるいはサンプルステージの三軸移動によって行われる。サンプルの移動は、光路中に設置したシャッターの開閉と合わせてパソコンによって制御する場合が多い。また、加工中の試料の様子は、顕微鏡の通常の光学系により観察し、必要に応じてビデオなどで記録する。
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4. フェムト秒レーザー加工の応用例
フェムト秒レーザー加工の応用例は多岐に渡るため、すべてを紹介することは難しい。本稿ではその中から、いくつかの例を紹介する。なお、加工の分類には、「材料」「加工方法」「出き上がるものの形状・機能」など、さまざまな軸がある。場合に応じて複数の分類軸を適宜使い分けるため、必ずしも一貫とした分類にはならないことを了承されたい。
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4.1 集光照射による感光性樹脂の微細加工
光硬化性樹脂あるいはネガ型のフォトレジストを材料として、設形した形状に光を照射して二次元の形状を作製する加工、さらにはそれを積層して三次元の形状を作製する加工は、フェムト秒レーザーの登場以前から行われていた3)。フェムト秒パルスの発する近赤外光パルスを対物レンズで強く絞り込んで試料に照射すると、その焦点で二光子(多光子)吸収が起こり、より微細な加工を行うことができ、また三次元的な形状を層に分解することなく一気に作製することができる。このような加工は河田らによって1997年に初めて報告され4)、その後広く行われるようになった。ここではこの種の加工について紹介する。なお、このような加工の代表的な応用例にフォトニック結晶の作製があるが、これは本書の7.10節に詳述されているので、ここでは省略した。
この種の加工の重要な用途は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やバイオテクノロジーなどに利用されるマイクロツールの作製である。この観点では、作製したものを人為的に動かすことが重要であり、それにはレーザーマニピュレーション技術が有用である。丸尾らは、フェムト秒加工によりマイクロギアを作製し、その歯をレーザーマニピュレーション技術で保持することによりギアを回転させた5)。また、同様にレーザーマニピュレーション技術により駆動可能なナノピンセットやナノニードルを作製した6)。Ormosらは、フェムト秒加工により回転対称性を持つが鏡映対称性を持たないような構造物を作製し、レーザー捕捉することによりその構造物を回転させた7、8)。
フェムト秒レーザーを使った加工における分解能は、最初の報告4)では横方向(光軸に垂直な方向)で1.3/μm、縦方向(光軸方向)で2.2μmだったが、その後の研究により徐々に向上していった。河田らは、市販の光硬化性樹脂を用いる加工で横分解能(光軸に垂直な方向の分解能)120nmを達成し、全長8μmの牛を作製した9、10)。これは用いた光の波長780nmの1/6以下である。さらに、光硬化性樹脂にradical quencherを混ぜることにより、分解能は100nmまで向上した11)。
三澤らは、ネガ型のフォトレジストに光軸に垂直な方向に直径約30nm長さ2μmのロッドを再現性よく作製することに成功した12)。この直径は加工に用いた波長800nmの1/25以下であり、これまでに報告されている中では最高の分解能だと思われる。
ここで、顕微レーザー加工の分解能に関する私見を述べる。まず、加工ではない通常の光学顕微鏡観察での分解能は波長と対物レンズの開口数(NA)と観察に用いる光の波長(λ)で決まり、一般に次の式で与えられている。
この分解能は、光の回折によって決まるもので、回折限界といわれる。kは照明条件などによって決まる定数であり、0.61として計算される場合が多い。レーザー加工の際の分解能も、基本的には波長と光学系の開口数で決まるはずである。しかし、観察の分解能はほぼ光学のみで決まるのに対し、加工の場合には必ず光と物質との相互作用、さらに物質の挙動が結果に介在する。すなわち、光が物質にどのように吸収されるか(多光子吸収もこの一例である)、熱やキャリアがどのように拡散するか、原子がどのように移動するかなども加工の分解能に関係するが、これらは光学だけで決まることではない。従って、(1)式の分解能は目安を与えるのみであり、それより高い加工分解能が得られる可能性を否定するものではない。実際に、適切な材料と加工方法を選択することにより、(1)式よりも良い分解能が得られている。
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4.2 透明固体内部の加工
透明固体の内部にフェムト秒パルスを集光照射すると、ほとんどの材料において、焦点付近に何らかの変化(多くの場合は光学顕微鏡で観測できるような変化)が観測される。以下ではこれを改質と呼ぶ。開口数が大きな光学系を用いた場合には、改質領域の光軸方向の長さを1マイクロメートルにすることも可能であり、これは三次元的な内部彫刻、固体内光学素子の作製、光記録などに応用可能である。
超短パルスレーザーにおけるこのような効果は、三澤らにより特許として報告され13)、三次元光記録への応用が提案された。Mazurらも同様の現象を報告するとともに、200psのパルスではクラックが発生するのに対し100fsのパルスではクラックが発生しないというフェムト秒加工の利点を示した14、15)。さらに、改質の内容に関しては、石英ガラスやサファイアなどの物質では焦点付近に空洞が形成されていることを示した。空洞が形成されるのは焦点付近で微小爆発が起こっているものと考えられている。この場合には、空洞の周囲には高密度化した領域が存在し、化学結合状態なども変化している。生じた空洞を移動させる技術も報告されている16)。焦点付近に空洞が生じる場合には、その場所の屈折率は1.5程度から1へ大きく下がることになるが、一方で、集光照射した場所の屈折率が10-4から10-2程度上がるという報告もある17、18)。この違いは集光照射するパルスエネルギーの違いによるもので、パルスエネルギーがそれほど大きくない場合には高密度化による屈折率増加が、エネルギーが大きい場合には空洞が生じるものと考えられている19)。さらに、伊東らは、比較的ゆるく集光したフェムト秒パルスを固体内部に照射すると、屈折率変化した領域がその焦点の形状以上に細長く形成される現象(フィラメンテーション)を見いだした20)。フィラメントが形成されるのは、生じた屈折率変化による自己束縛によるものと考えられており、フィラメントの長さは条件に依存し最大で数百マイクロメートルに達する。
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このような効果の応用の一つに三次元光記録がある。光記録については本書の7.8節で記述されている。ここではフェムト秒レーザーに関係するものをごく簡単にまとめる。材料としては、石英ガラスなどの一般的な透明光学材料14、15、21)の他希土類イオンを添加したガラス22)、フォトリフラクティブ結晶23)、ポリマー24)、さらには情報携帯を意識した爪25)など、多くの材料に広がっている。記録の読み出し方法として、屈折率差を利用するー般的な方法に加え、蛍光を利用するもの、さらには二光子励起蛍光を利用するもの26)などが報告されている。
固体内部で局所的に屈折率を変化させることができれば、それを利用して固体内部に光学デバイスを作製することができる。例えば、屈折率が増加している点を線状に並べれば、それは光導波路として機能する可能性がある。この観点でもっとも研究されているのは光導波路の作製である。光導波路については本書7.9節で詳しく取り上げている。フィラメンテーションも固体内光学素子の作製に利用されており、固体内部に方向性結合27)、回折型レンズ28)、ダーマングレーティング29)などが報告されている。さらに、細野らは、LiF結晶の内部にグレーティングなどを作り込み、光励起により波長707nmで発振するDFEレーザーを作製した30)。
また、微量の希土類イオンあるいは遷移金属イオンを添加したガラス中にフェムト秒パルスを集光照射することにより、希土類イオンの価数変化31)、遷移金属イオンの価数変化32)、あるいは金属ナノ微粒子の析出33)などが起こり、それらを発光などの光学的な方法で読み出すことができるということも報告されている。
小原らは、一部分が独立した梁に保持された導波路における損失を測定することにより振動を測定するセンサーを作製した34)。
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透明材料内部にフェムト秒レーザーパルスを集光照射してその焦点部分を改質した場合に、その改質が試料の化学反応性を高める場合には、改質点を試料表面から連続的に並べ、その試料をエッチングすることにより、改質点の並んだ部分に空洞を作ることができる。
このような加工は、材料面から見ると大きく二種類に分類することができる。1つは、もともと光照射によって溶解性が高まることが知られている感光性固体材料の加工、もう一つは感光性を持たない普通の材料の加工である。
感光性材料の加工に関しては、平尾らはCe、Ag、Kイオンがドープされたリチウムアルミノ珪酸塩ガラスを用いた。これは一光子吸収の場合には320nm以下の光で反応が起こるとされている。このガラスに400nmのフェムト秒パルスを集光照射し、熱処理後にフッ酸水溶液でエッチングすることにより、ガラス内に三次元的な空洞を作製した35)。杉岡らは、Ce、Ag、Sbイオンがドープされたリチウムアルミノ珪酸塩ガラスを用いて同様の加工を行い、空気圧によって動くバルブを含む流路や、平面状の空洞を利用したミラー、さらにはミラーと色素溶液を入れるセルからなる色素レーザーを作製してレーザー発振を観測した36、37)。これらの材料では、エッチングの選択比(光を照射した部分と照射していない部分のエッチング速度の比)は16-40程度とされている。
感光性を持たない材料では、三澤らは石英ガラスに800nmのフェムト秒パルスを集光照射し、それをフッ酸系の水溶液でエッチングすることにより、石英ガラス内に三次元的な空洞を作製した38)。三澤らはさらにサファイアや水晶などの結晶材料でも同様の加工が可能であることを示した。特に、サファイアでは、エッチングの選択比が1000以上と極めて高く、より自由度の高い三次元形状の加工が可能である。
Schafferらはポリジメチルシロキサン(PDMS)でも同様の加工が可能であることを見いだした。そして、ソフトリソグラフィーによる数十メートルオーダーの立体的な加工と、フェムト秒レーザーによる1マイクロメートルオーダーの加工とを組み合わせて、微小な流体デバイスを作製した39)。
伊東らは、水中で石英ガラスの表面にフェムト秒パルスを集光照射し、その焦点を徐々に内部に移動していくと、焦点の軌跡に沿って空洞が形成されることを見いだした40、41)。
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固体材料の中でも比較的自由体積が大きいポリマー材料の場合には、エッチングすることなく、フェムト秒レーザーパルスの集光照射点を連ねることで、連続した空洞を作製することも可能である。Guらは、市販の光硬化性樹脂を硬化させたものを材料としてこの方法で直線状の空洞列を作製し、これを周期的に配置することでフオトニック結晶の作製を行った42)。Guらの同グループでは、同様の方法でさまざまなフォトニック結晶の作製を行っている42〜45)。三澤らは、同様の方法でPMMA内部にマイクロ流路を作製し、その流路内に色素溶液を導入して発光を共焦点顕微鏡で計測することで、空洞が形成されていることを直接観測した46)。
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4.3 フェムト秒レーザーによる多点同時加工
ここまで見てきた加工は、レーザー光を一つの焦点に集光し、その焦点で何らかの加工を行う手法だった。この方法では、高い空間分解能が得られる一方で、一定の大きさの構造物を作製するのに要する時間は長くなる。そこで、フェムト秒加工の長所を残しつつ、同時に多点で加工を行う試みがなされている。
その一つが、干渉を用いる加工である。複数の光波の干渉により定在波が発生すると、光の強度が空間的に周期的に変動する。光が強いところでのみ何らかの加工が起これば、周期的なパターンを作製することができる。レーザー光を干渉させるためには、ビームスプリッターなどで分割してそれらを適当な交差角で重ね合わせる。この際、干渉領域までの光学的距離の差が、レーザー光のコヒーレント長に比べて十分短い必要がある。フェムト秒レーザーでは、そのパルス幅の短さを反映して、コヒーレント長は他のレーザーに比べて極端に短い。例えば、パルス幅100fsの場合、コヒーレント長は30μmである。すなわち、フェムト秒パルスを干渉させるためには、干渉する各光束の光路長を数μmの精度で調整する必要がある。このため、光路の長さを調整できるように、微動ステージに乗せたレトロリフレクターなどが光路中に設置され、所定の位置でパルスが時間的に重なるように光路長が調整される。細野らは、パルスの時間的な重なりが、交差角が大きい場合でも確認できるような方法を考案し、ダイヤモンドなどの難加工材料の表面でフェムト秒パルスを干渉させ、周期構造を作製した47)。さらに、透明材料の内部にも干渉によって周期構造を作製した48)。これは前述のDFEレーザーの作製に利用された30)。
二光束の干渉によってできるのは、一方向だけに周期性を持つ一次元周期構造物である。もっと複雑な、二次元/三次元の周期性を持つ構造物を作製するためには、三光束/四光束を干渉させなければならない。これは、技術的に不可能なことではないが、光学系が複雑になり、安定性が落ちるというデメリットがある。三澤らは、回折ビームスプリッターと二枚のレンズからなる光学系で多光束を干渉させて加工する手法を開発し、これにより二次元/三次元の周期構造物を作製した49、50)。図7の上部にその光学系を、下部にこれを用いてネガ型フォトレジストに作製した二次元周期構造物の例を示す。また、この加工において多光子吸収が起こっていることも確かめられた50)。
中田らは、同じ光学系を用いて、ガラス基板上の金属薄膜にフェムト秒干渉光を照射することにより、各種の周期構造物を作製した51〜54)。特に、金属薄膜の厚さをナノメートルオーダーにすることにより、ナノメッシュやナノワイヤなどを作製した。中田らは、マスクを利用したリソグラフィー的なアブレーション加工も行っている55)。
干渉の手法では、フォトニック結晶の作製を念頭においている場合が多い。フォトニック結晶に何らかの機能性を持たせる場合には、周期的な構造だけでなく、その中に非周期的な部分を作ることもある。河田らは、ナノ秒レーザーによる干渉加工によって感光性樹脂に周期構造を作製した後、フェムト秒レーザーによるピンポイント加工を行うことで非周期的な部分を作製した56)。
干渉法が正弦波状の光強度分布を作って広い領域の加工を行うのに対し、多数の焦点を作って同時に加工を行う方法としてマイクロレンズアレイを用いる方法がある。この方法では、一本のフェムト秒レーザービームからマイクロレンズアレイで多数の焦点を作り、その多焦点を加工領域に投影(縮小投影)する。干渉法以上にフェムト秒レーザー加工の特徴が現われることが期待される。
マイクロレンズアレイを使う方法の利点としては、まず同時に多数の点で加工できることであり、次に、マイクロレンズアレイのレンズ配置パターンに従って一定のパターン(多くのマイクロレンズアレイでは周期的パターン)を簡単に加工できることが挙げられる。三澤らは特に後者に注目し、サンプル等を掃引すること無しに回折光学素子を作製した57)。一方、河田らは、前者に焦点を当て、数百の微小構造物を同時に作製した58)。
早崎らは、マイクロレンズアレイを使う以上に柔軟に多点加工を行う手法として、空間光変調器を用いたホログラムの手法をフェムト秒レーザー加工に導入した59)。これによって作製されたパターンの例を図8に示す。この手法は、原理的には多数の焦点を三次元の任意位置に配置できる、もっとも柔軟性の高い方法である。
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4.4 その他の応用
金属の微細加工にもフェムト秒レーザーが用いられている。この場合は、レーザー加工以外の方法に比べて複雑な形状の加工ができること、さらに従来のレーザー加工に比べて熱損傷の少ない微細な加工ができるという特徴が活かされている。特に、エンジンのノズルなどの微小穴あけ加工や、医療器具の一種であるステント(狭窄化した血管の中に挿入して広げ、血流を確保するためのもの)の作製に用いられている60)。微小穴開け加工においては、偏光の制御が重要であることが指摘されている60)。LSIの製造に使われるフォトマスクの修正のツールとしても、フェムト秒レーザー加工が有力視されている61)。また、アブレーション速度の強度依存性も詳細に調べられ、3つのしきい値があることが指摘されている62)。
レーザーを物質に照射したときに、その表面に光の波長程度の周期構造ができる現象がある。この周期構造は、Laser Induced Periodic Structure(LIPS)、Laser Induced Periodic Surface Structure(LIPSS)、あるいはrippleなどと呼ばれている。レーザーが開発されてからすぐに発見され63)、研究されてきた64)。近年になって、フェムト秒レーザーを照射したときに波長の半分以下の細かい周期構造が形成されることが見つかり、再び注目を集めている63)。これについては詳しくは7.7節に記述されている。
この他近赤外光が生体に対して比較的透明であることを活かした波長1.06umのフェムト秒パルスによる生体材料の加工66)や、結晶成長67)など、フェムト秒加工は広い範囲に応用されている。
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5. 展望
最初にも述べたように、『フェムト秒レーザー加工』というのは、レーザー加工の中でその光源に着目した分類である。加工の方法や対象物ではなく、光源だけに着目したやや特異な分類方法がとられるのは、フェムト秒レーザーという光源自体が目新しく、極めて付加価値の高い加工を提供する可能性があると期待されていることによるものだろう。実際に、これまでに報告されている加工の中にはstate-of-artと呼ぶにふさわしいようなものも少なくない。しかし、その一方で、実際の産業に応用されているものは多くはない。(明確ではないが)フォトマスクの修正やステントの作製程度だというのが現状のようである。その意味で、フェムト秒レーザー加工にはまだまだ重要な課題、そして発展の余地が残されている。基礎的な面では、加工過程の解明が特に重要な課題だと思われる。そのためには、時間・空間分解分析(特に分光分析)が必要不可欠だろう。そして、それ以上に大切なのは、実用化を目指し、フェムト秒レーザー加工の特徴を活かしてどのような付加価値のあるものを作製するかという、ターゲットの設定だろう。
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