モード同期レーザー等で作製されたパルス列は、完全な周期を持つパルス列から、時間的なパルス位置のずれがある。この現象は、タイミングジッタと呼ばれており、例えば、長距離光ファイバー通信や光サンプリング測定等の多くの用途において重要である。同様にして、Qスイッチレーザーから得られるパルスにもタイミングジッタが存在するが、その物理的な構造は全く違うものである。また、以下で議論されているように、フォトディテクターでもタイミングジッタが発生する。

モード同期レーザーのタイミングジッタ

タイミングエラーとは、異なったものであると考えられている。

  • 時間的パルス位置間のずれと完璧なクロック単位のずれ
  • 時間的なパルスのずれと、本物の(雑音の多い)発振器のクロック単位のずれ (例、能動モード同期レーザーの変調器を駆動させる電気的な発振器)
  • 平均パルス周期とパルス間距離のずれ(パルス間ジッタあるいは、サイクルジッタ)

光通信システムにおいて、関係するジッタは、データ搬送パルスとクロック信号間のジッタである。後者は、データストリーム自体から抜き取られたり、分離して送信されたりしている。前者の場合では、低周波ジッタは、抽出されたクロック信号に送信され、多くの場合、検出に関係がない。

タイミングエラーは、多くの方法で定量化される (→ノイズ仕様)。

  • ある帯域幅計測のための二乗平均平方根(r.m.s.)
  • パワースペクトル密度としては、時間のずれも時間位相もどちらも使われる

タイミングジッタは、パルス列の光周波数素子における位相ノイズに関連している。技術的なノイズがないときは、モード同期レーザーのジッタは量子雑音によって制限されるが、ほとんどの場合はレーザー共振器の振動やドリフトが支配的である。分析的および数値モデルを基にした重要な理論的な結果は、参考文献[5, 12, 13, 15]で議論されている。

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 1: 10 GHzエルビウムイッテルビウムガラス小型レーザーの理論的に計算された量子限界タイミングジッタスペクトル。現実では、低周波ノイズ(例、10 kHz以下)が技術的なノイズのために大きくなる。ある程度は、緩和発振 (230 kHz) がタイミングジッタに変換される。フィードバックシステムを用いることで、長期的なタイミングドリフトを抑えることができ、低周波ジッタを大きく抑えることができる。

様々な種類のモード同期レーザー(例、小型バルクレーザー、ファイバーレーザーあるいは、外部共振器型半導体レーザー)のタイミングジッタがとても小さくなることがある(図1参照)。高品質電気発振器よりもタイミングジッタが大きく小さくなった場合もある。これは、レーザーがとても正確なタイミング参照対象 (一種のはずみ車) として用いられる、特に短い時間スケールに適応される。長期的なタイミングドリフトは、自己参照周波数コムを用いることで、極端に低いレベルまで抑えることができる。

タイミングジッタの計測

モード同期レーザーのタイミングジッタを計測するための様々な手法が存在する。

  • 一般的なvon der Linde [2] は、フォトダイオードの信号のRFスペクトル評価に基づいている。この手法は、かなり単純であるが、必ずしも常に満足しているとは言えない仮定 (ゆらぎの振幅を小さくする、強度と位相揺らぎの相関を無視する等) に依存しており、様々な技術的な制限を受けやすい。特に、電気スペクトラムアナライザの局部発振器の位相ノイズは、結果に影響を与えることがある[14]。
  • 位相検出法(参考文献[3]等を参照)は、レーザーのタイミングを電気駆動信号のタイミングと比較している能動モード同期レーザーに多くの場合適応されている (残余ジッタ)。特に、ドリフトしているミキサーのオフセット現象により、強度雑音の影響を大きく抑えることは容易ではない。同期していなければならないが、異なるレーザー間の相対タイミングジッタを計測するには、さらに洗練された手法が利用できる。
  • フリーランの受動モード同期レーザー(同期されたレーザー)の相対タイミングジッタは、適切なRFの技術と数値処理を用いて生成されるフォトダイオード信号のビート音を基にした用途の広い手法を用いて、計測することができる[14]。この手法は、とても用途が広く、極度に敏感で、他の手法では頻繁に出会う帯域の問題が比較的気にならない。電気発振器の雑音とミキサーのオフセットに影響されず、強度ノイズによってのみ少しだけ影響を受ける。異なる種類のレーザーを比較することで、絶対的なタイミングジッタが得られる。例えば、片一方のレーザーのジッタが低いと分かっていたら、計測される相対的ジッタは、もう一方のジッタの絶対値に近くなる。もし、双方のレーザーが似ていて、互いに相関していないなら、それぞれのノイズ周波数で記録されるパワースペクトル密度は単一のレーザーの二倍となる。
  • χ(2)非線形結晶からなる平衡光相互相関器を用いると、とても正確な計測が可能となる[18]。例えば、2つのモード同期レーザーのタイミングを比較することで計測できる。例として、10 MHz帯のノイズフロアの二乗平均平方根は、1 fsより大きく小さくなる。100 fsまでのとても短い距離のパルスの場合のみ、この手法を用いてタイミングのずれを用いることができる。そのため、時間揺らぎが縛られた時間安定化されたレーザーのみに通常用いられる。

Qスイッチと利得スイッチレーザーのタイミングジッタ

能動Qスイッチレーザーでは、Qスイッチのオープンと生成されたパルスの間にある一定時間の遅れがある。この時間の遅れの大きさは、揺らぎにつながりやすく、そのため、変調波が非常に規則的でも、タイミングジッタは平均される。そういったタイミングジッタの由来は、励起パワーの揺らぎだけでなく、熱効果や、振動そして、その他の擾乱が寄与している。パルス持続時間よりも長いパルスタイミングの変化(図2)は、そういったレーザーにおいてはあまり珍しくはない。光注入等を用いて、ジッタは改善される。

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 2: 励起パワーの揺らぎによって引き起こされる、能動Qスイッチレーザーのタイミングジッタのシミュレーション値。タイミングの揺らぎは、ピークパワーとパルス持続時間に強く相関している。

受動Qスイッチレーザーでは、励起パワーの揺らぎは、大きなタイミングジッタにつながる。なぜなら、レーザー利得が、損失を十分上回ると同時に、パルスが放出されるからである。その一方で、パルスエネルギーの雑音は減る。

能動Qスイッチレーザーから生成されるパルスが、タイミングクリティカルセットアップに用いる場合、変調信号よりもパルス到着時間を表すフォトダイオードの信号を用いて、そのセットアップを起動させることが良い方法である。

利得スイッチレーザーも、モード同期レーザーと比較して、比較的大きなタイミングジッタを有する。

光検出器のタイミングジッタ

フォトダイオードのような光検出器をパルス到着時間の測定に用いると、光電流もタイミングジッタを有し、計測した結果におけるタイミングエラーが、検出器の電子回路のノイズによってさらに大きくなる可能性がある。

ジッタの二乗平均平方根(r.m.s.)や確率分布の形といった詳細は、検出器のタイプに大きく依存する。例えば、SPADs(単一光子アバランシェ検出器)として使われる、ガイガーモードのアバランシェフォトダイオードは、より高い光信号レベルで用いられる普通のフォトダイオードと異なったノイズ特性を持つ。高速SPADのジッタの二乗平均平方根(r.m.s.)は、単一光子検出において、100 ps以下となる。複数パルスに渡って平均化すると、さらに実効ジッタがさらに減る。

モード同期レーザーのパルス列を検出する際には、飽和効果が多くの場合、制限される要因となる。ピークパワーは、飽和を避けるために制限されるはずで、結果として、低平均パワーとなり、そのため信号対雑音比が悪くなる。高パルス繰り返しレートの励起光源を用いたり、干渉計を用いて繰り返しレートを倍増させることで、使用している光源の繰り返しレートを上げるといったことが可能な解決方法である [24]。

ショットノイズは、パルス位置(“重心”と定義される)を正確に決める制限となる要因となる。同じパルスエネルギーにおいて、ショットノイズの影響は、より長いパルスにおいてより影響が大きい[13]。しかし、興味深いことに、コヒーレントパルス列の光検出されたパルスに対するショットノイズの制限は、光検出器の時間的分解能によって決まるわけではない。光電流のスペクトルの相関から、たとえ、結果としてより短い検出されたパルスとならなくても、ノイズ制限は、短い光パルスにおいて低くなる[28]。

参考文献

[1] J. P. Gordon and H. A. Haus, “Random walk of coherently amplified solitons in optical fiber transmission”, Opt. Lett. 11 (10), 665 (1986)
[2] D. von der Linde, “Characterization of the noise in continuously operating mode-locked lasers”, Appl. Phys. B 39, 201 (1986)
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[10] F. W. Helbing et al., “Carrier–envelope offset phase-locking with attosecond timing jitter”, IEEE J. Sel. Top. Quantum Electron. 9 (4), 1030 (2003)
[11] T. R. Schibli et al., “Attosecond active synchronization of passively mode-locked lasers by balanced cross correlation”, Opt. Lett. 28 (11), 947 (2003)
[12] R. Paschotta, “Noise of mode-locked lasers. Part I: numerical model”, Appl. Phys. B 79, 153 (2004)
[13] R. Paschotta, “Noise of mode-locked lasers. Part II: timing jitter and other fluctuations”, Appl. Phys. B 79, 163 (2004)
[14] R. Paschotta et al., “Relative timing jitter measurements with an indirect phase comparison method”, Appl. Phys. B 80 (2), 185 (2005)
[15] R. Paschotta et al., “Optical phase noise and carrier–envelope offset noise of mode-locked lasers”, Appl. Phys. B 82 (2), 265 (2006)
[16] F. Quinlan et al., “Ultralow-jitter and -amplitude-noise semiconductor-based actively mode-locked laser”, Opt. Lett. 31 (19), 2870 (2006)
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[18] J. Kim et al., “Attosecond-resolution timing jitter characterization of free-running mode-locked lasers”, Opt. Lett. 32 (24), 3519 (2007)
[19] O. Prochnow et al., “Quantum-limited noise performance of a femtosecond all-fiber ytterbium laser”, Opt. Express 17 (18), 15525 (2009)
[20] R. Paschotta, “Timing jitter and phase noise of mode-locked fiber lasers”, Opt. Express 18 (5), 5041 (2010)
[21] J. Kim and F. X. Kärtner, “Attosecond-precision ultrafast photonics”, Laser & Photon. Rev. 4 (3), 432 (2010)
[22] J. A. Cox et al., “Complete characterization of quantum-limited timing jitter in passively mode-locked fiber lasers”, Opt. Lett. 35 (20), 3522 (2010)
[23] Y. Song et al., “Impact of pulse dynamics on timing jitter in mode-locked fiber lasers”, Opt. Lett. 36 (10), 1761 (2011)
[24] A. Haboucha et al., “Optical-fiber pulse rate multiplier for ultralow phase-noise signal generation”, Opt. Lett. 36 (18), 3654 (2011)
[25] T. K. Kim et al., “Sub-100-as timing jitter optical pulse trains from mode-locked Er-fiber lasers”, Opt. Lett. 36 (22), 4443 (2011)
[26] D. Li et al., “Attosecond timing jitter pulse trains from semiconductor saturable absorber mode-locked Cr:LiSAF lasers”, Opt. Express 20 (21), 23422 (2012)
[27] A. J. Benedick et al., “Optical flywheels with attosecond jitter”, Nature Photon. 6 (2), 97 (2012)
[28] F. Quinlan et al., “Exploiting shot noise correlations in the photodetection of ultrashort optical pulse trains”, Nature Photon. 7, 290 (2013)
[29] R. Paschotta, H. R. Telle, and U. Keller, “Noise of Solid State Lasers”, in Solid-State Lasers and Applications (ed. A. Sennaroglu), CRC Press, Boca Raton, FL (2007), Chapter 12, pp. 473–510

 

参考
https://www.rp-photonics.com/timing_jitter.html