43・4・1 光合成反応
植物は基本的に光合成によって生育するが,従来の光合成の研究や実際の栽培場面ではほとんど連続照射下でおこなわれてきた.
光合成の反応経路を子細に見ると,その中には光を当てる必要のない部分があることがわかる.よく知られているのは明反応と暗反応の区別であり,炭水化物を生成する暗反応には光を必要としない.光合成において光を必要としない時間には光を当てず,光を必要とする時間だけ光を当てるような間欠照射をおこなえば,単位光量当りの光合成速度を増大させることができるだろう.これは前に述べたように,完全制御型のような光の電力コストが問題になるシステムではきわめて重要で,これによって2~3割の省エネルギーが達成できれば普及に大いに貢献するはずである.
明反応と暗反応の場合には,光強度が十分に強いときでないと効果が現れない.植物工場ではもっと弱い光強度を使うので,この暗反応効果は利用できない.高辻らは光が絶対に必要だと考えられている明反応において,暗反応に相当するような光の必要ない時間がないかどうか調べてみた.
ここで光合成反応をごく簡潔に説明しておく(図43・14).暗反応によって炭水化物を作るためには二酸化炭素を還元するNADP・H2分子と,エネルギー源として使うATPが必要である.これらを作るのが明反応の役目である.明反応のプロセスは,光による水の分解とクロロフィル分子の活性化,そしてその後の電子の流れと考えることができる.調べたところ,明反応を構成する光化学系IIの反応中心クロロフィルP680の還元時間に200 μsかかり13),この間は光照射が必要ないことがわかった.そこで,この時間を中心に明暗周期を変えて間欠照射(パルス照射)を行い,高辻らの仮説を確かめることにした.
43・4・2 パルス照射実験
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