医療現場に要求きれるレーザー装置仕様として,小型,可搬,高効率などがあり,これらを満足するレーザー装置の一つとしてファイバレーザーがあげられる.光ファイバから所望のレーザービームを得ることができるので,容易に異なる光ファイバへの結合,パワー伝送が可能なことから利便性が優れている.

レーザー光による外科的治療,たとえば組織切開,熱変性,薬剤選択励起などにおいては,対象となる生体組織や薬剤の光の吸収特性に合わせてレーザー波長を選択することが必要である.ファイバレーザーにおいては可視から中赤外波長領域で医療用に有意な波長で高出力動作が実現している.

39・4・1 ファイバレーザーの特長

ファイバレーザーの高出力化技術の進展はめざましく,Yb3+やNd3+をレーザーイオンとするLD励起1 μm帯シリカファイバレーザーにおいては,ダブルクラッド構造の開発71),励起LDの高出力化,LDアレイビームの整形技術などにより高効率・高出力動作実証に成功し,現在では単一ファイバによる高出力動作が得られている72)

生体組織の光吸収を考えるうえで重要な中赤外波長帯には,構成分子の振動・回転エネルギーの基本遷移,倍音遷移,これらの組合せモードと選択的に相互作用する波長帯が存在する.中赤外波長帯固体レーザーを,実用的な高出力LD(波長0.78~0.98 μm)で励起する場合を考えると,励起光に対して発振する中赤外レーザー光の光子エネルギーの比が1/2~1/4なので,熱に変換されるエネルギー成分が大きい.この熱負荷は固体利得媒質内に視度上昇,熱ひずみなどを発生させ所望のレーザー光に対する損失が増加することから,一般にレーザー結晶を利用した固体レーザーにおいては動作効率の低下をもたらす.

そこで,熱的特性に優れたファイバレーザーは中赤外の適用が期待される.波長レーザーを実現するにはきわめて理想的な形状であるといえる.その特長は次のとおりである.

(1) コアの表面積対体積比が大きく,排熱効率が高く光損失が小さい(高効率動作,省電力化).

(2) 光ファイバを長尺化することにより単位長当りの排熱を減少し分散化できる(全空冷化可能).

(3) 細径コアの伝搬モードで発生する高輝度光が得られる(高集光性,マイクロサージェリ).

高効率な利得形成の手法(異種イオン間のエネルギー移乗,クロス緩和,アップコンバージョン,励起準位吸収(excited state absorption:ESA),カスケード発振など)を採用することによって,さらなる高効率動作の実証が進められている.

照射対象の微細化に伴って,レーザービームの高い集光性が求められている.ファイバレーザーの場合,導波路の細径コア(直径10 μm前後)で発生するレーザービームの横モードは低次モードに制御されるので,高出力化がすなわち高輝度化といえる.レーザー媒質に結晶を使用した個体レーザーでは高輝度化がむずかしい中赤外波長領域の2 μm帯,3 μm帯でワットクラスの高輝度光発生が実証されている.

39・4・2 ホストガラスの特性

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