38・7・1 測定方法
レーザーを生体組織のような散乱粒子の集合に照射すると,散乱波が干渉し合って周囲にランダムな小班点模様,スペックル場を形成する(VII編31章参照).この模様は散乱波の位相関係が変わらなければ固定パターンになるが,生体である限り血球など組織内部にある散乱粒子が移動するために,刻々と模様が変化していく動的スペックル場となる.この光変動は数kHzまで広がった雑音性の信号で,その帝域は生体表面から深さ1 mm程度までの平均的な血流速度に比例すると考えられている.この信号を血球の移動によるドップラー選移波の干渉と解釈して,平均血流速度やその変動を推定しようというのがレーザードップラー血流計(以下,LDV)である.LDVでは通常,一点で信号をとらえ,周波数解析によって血流値(相対値)を推定している.他方で,この現象を干渉パターンの経時的変化としてとらえ,イメージセンサなど多数の受光素子が検出したパターンの時間変化率をもとに,血流分布を2次元画像として表示する装置が国内を中心に開発された86).
これが,本節で取り上げるレーザースペックル血流画像化法(laser speckle flowgraphy : LSFG)である.
図38・30は測定原理を示す模式図で,半導体レーザーをロッドレンズで線状に広げ,ミラーで反射させてから生体組織上にラインスポットを投影する.このスポットをラインセンサ上に結像し,像面に発生する動的スペックル場を走査して,光信号をコンピュータに取り込む.連続した2回の走査出力の差を各画素において積算すると,これは一種の時間微分となるので血流の速いところは高く,遅いところは低く表示される.このようにしてラインスポット上の血流分布を求め,次に観測線をステップモータで1ステップ移動させ,同様の計算を繰り返すことで,2次元の血流マップが得られる.皮膚用のものでは,10 cm角程度の血流測定に5秒弱を要したのち,図38・31のような血流マップがパソコンの画面上に表示される.ラインスポットを止めたまま,血流の経時変化を表示する機能もある.
38・7・2 眼底血流測定
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