近年,レーザー応用分野はますます幅広く産業界に浸透してきている.レーザー発振器(半導体レーザー発振器およびLEDも含む)は,高出力化,短パルス化,また短波長化の動向を示している.このような背景から,レーザー機器の取扱いに起因する危険性が拡大していることも見逃せない.レーザー機器の設計および開発に携わっている技術者・製造業者たちは,レーザー機器に対するレーザー安全規絡(JIS C 6802)23)を遵守するのは当然であるが,実際にレーザー機器を取り扱う立場(オペレータ/保守点検の実施者および管理者)も同安全規格を遵守することを心がける必要がある.

レーザー機器の危険性といえば,レーザー光による火傷や失明が事例としてよく取り上げられる.レーザー加工をおこなう場合,高電圧での感電事故やアシストガスによる火災・火傷・中毒あるいは加工時に発生する粉じんによるじん肺などについても注意を払う必要がある.

レーザーの安全性については,1960年中頃からアメリカで検討されはじめ,1970年代に民間団体や政府機関が基準を作成している.さらに1973年にアメリカ規格ANSIが制定され,この規格を手本として全世界が規格制定を進めてきている.わが国においては,昭和53年度からレーザー機器の安全確保のJIS制定について検討を開始し,今日に至っている.

近年,製造物責任(PL法)も重視されてきているように,製造業者のレーザー安全設計は,ますます厳しく規制され,製造業者の責任は重大となる.いかに安全なレーザー機器を製造し,いかに安全にレーザー機器を使用するかが,総合的なレーザー安全につながることを理解したい.また,特に研究者やメンテナンス技術者たちには,JIS C 6802のレーザー安全基準の基本に基づいた設計,試験,メンテナンス作業が要求される.そのためにも,安全規格にとどまらず自主的な安全基準レベルまで掘り下げた総合的安全設計の実施を願いたい.

本章では,JIS C 6802:1997に基づきレーザー機器の「使用者側の要約」をもとに,レーザー加工における安全対策に必要な実務的知識についてまとめる.

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