34・3・1 主な加工用光源の種類と特徴
特に加工用レーザーという分類があるわけではなく,一般には発振する光が物質に吸収され,その物質の形状や物性の変化を起こさせることができる光源は加工用レーザーということができる.この意味ではほとんどのレーザーが含まれる.ここでは主に産業用として広く用いられているレーザーについて述べる.
産業用として用いられるためには,①大出力かつ高効率発振が可能であること,②装置としての安定性,③低価格と低ランニングコスト,④メンテナンス容易性,⑤高い安全性,などが必要である.1960年代から70年代にかけてレーザー発振可能な発振線が数多く探求されたが,現在生産ラインで用いられているレーザーはごく限られたものだけである.以下では,これら代表的な加工用レーザーについて紹介する.
(1) 炭酸ガスレーザー
現在,加工用レーザーとして最大の出力と発振効率が得られるガスレーザーである.1964年と早い時期に,その発振が確認され,理論上は量子効率が40 %近い値を示すことがわかり,積極的に開発が進められた.市販機では発振効率20 %のものが実現されている.これは,ほかのガスレーザーにくらべてl桁大きい値である.発振波長は,10.6 μmと9.6 μmがあり,いずれも赤外線領域である.発振形態は連続発振とパルス発振があり,出力は連続発振で最大100 kW程度,パルス発振ではパルス100 μs以下でピークパワーがkWオーダーのものが実用化されている15).レーザー媒質としては,CO2,N2,Heの3種混合ガスが用いられる.
レーザー媒質がこのように入手しやすく,扱いも容易なガスで構成されているので,ガスを封じるレーザー管の大きさ(利得領域の長さ),発振の種となる炭酸ガス分子の濃度を決める混合比,分子の密度を決める圧力などを変えることにより,放電の最適化も含めて,出力を最適化するための調整をおこないやすいという利点がある.また,大出力化したときに,固体レーザーのようにレーザー媒質である結晶が熱ひずみや損傷を受けるような問題も起こらないため,広い出力範囲にわたってビーム品質が比較的安定しており,出力が1 kW以下ではTEM00モード(TEM00モードはガウスビームプロファイルを有している)が得られる.
一方,大出力化のためにはレーザー媒質であるガスの容積がある程度必要になるほかに,放電励起を用いるので絶縁のためのスペースや,ガスの循環装置のスペースなどが必要になり,装置サイズが大きくなるという欠点がある.
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