光学材料としてのアモルファス(ガラス)の特徴は,光学的に等方であること,成形性に優れていること,組成を変化させることで屈折率などの光学的性質を連続的に制御できることである.さらに,結晶にくらべて一般に製造が容易なため,レーザー用光学材料として広く用いられている.1980年代に始まったニューガラス・ファインセラミックスブームは,ガラス原料の純度を大きく向上させるとともに,脈理や気泡といった不均質な部分のほとんどないガラスの製法を確立させた.

この歴史が,現在,レーザー光に対する透明性と耐光性に優れた高品質レーザー用光学ガラスの安定供給に大きく貢献している.

24・4・1 赤外・可視領域

一般にガラスの屈折率は波長に依存する.これは屈折率分散とよばれ,色収差の原因となる.色消しには異なった屈折率と屈折率分散をもつ複数のガラスを組み合わせる必要があるため,組成の異なる多くの種類のガラスが開発されている42)43).しかしどのガラスも,網目形成酸化物であるSiO2,B2O3,P2O5のいずれかを主成分とし,これに複数の金属酸化物,金属フッ化物が添加された多成分系ガラスである.これらは,縦軸に屈折率,横軸に屈折率分散の程度を表すアッベ数をプロットしたηdd(アッベ図)(図24・19)に整理されている44).高性能のレンズ系を設計するには,ηdとνdの分布が広いほど有利である.そのため,第二次世界大戦後に開発の進んだランタン系(図右上:LAF,LASF,LAK)およびフッリン酸系(図左下:FK,PKの一部)ガラスは,光学系の性能を大きく向上させた.代表的なホウケイ酸ガラスであるBK7は,光学ガラスのなかで透過率がほぼ最大であるため,光学部品として広く使用されている.また,フッリン酸ガラスは,ドープされた希土類イオンNd3+の誘導放出係数が大きく,屈折率の温度係数をほぼ0に設計できるので,Nd3+ガラスレーザーのホスト材料としても用いられる45)

図24・19

図には含まれていないが,赤外透過性に優れたガラスとして,カルコゲン元素(S,Se,Te) を主成分とするカルコゲナイドガラスがある.酸化生成物をはじめとする不純物を除いたカルコゲナイドガラスの赤外透明限界は,Ge-As-Se系では波長~16 μmにも達する42)

長距離・大容量信号伝送用の光ファイバは,優れた透明性と成形性を併せもつガラスにとって最適な用途のひとつである46).なるべく遠くまで信号を伝送させるため,光ファイバーによる信号の伝送通信波長帯としては,ガラスの透明性が最大となる赤外領域が使用される.不純物をほとんど含まない高純度ガラスにの赤外透明限界は,光散乱(レイリー散乱)とガラスの格子振動による吸収(多フォノン吸収端)によって支配されている47)53).光散乱には組成ゆらぎの項が含まれるので,一般に,ガラスに含まれる元素の種類が増えるほど透明性が低下する48).そこで光ファイバには,単純酸化物であり,化学的安定性にも優れたシリカガラス(組成SiO2)が用いられることが多い.光閉じ込めのために,ファイバーは屈折率の高いコアと,それを覆う屈折率の低いクラッドの二層構造をとる必要がある.これは,Ge やPなどのドープによってコア屈折率を増大させるか,もしくはBやFなど~ドープしてクラッド屈折率を低下させることで実現させる.不純物の混入を極力抑えるため,シリカガラスは気相合成法によって製造される49).また,シリカガラスの透明性は波長1.55μm で最大となる47) が,ガラス中のSiOH基はこの波長域の透明性を著しく損なうため,ガラスは徹底的に脱水される50)

光散乱強度はアニオンをOからFに代えることで低下し,また格子振動による吸収端は構成元素の原子量を大きくすることで長波長側にシフトする.そこで,フッ化物ガラス,カルコゲナイドガラスなどを用いて,シリカガラスより損失の小さい光ファイバーを開発しようとする試みがある.しかしながら,紡糸の際に結晶相が析出して透過率が低下するなどのプロセス上の困難のため,損失を理論値に抑えることがむずかしい.しかし,これらのガラスは希土類イオンの溶解度が大きく,また溶解した希土類イオンの発光効率も高いので,ファイバアンプのホストとしての応用などが期待されている.

24・4・2 紫外領域

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