24・2・1 光変調の種類

光変調には,外部信号によって物質の光学応答が変化する物理現象が用いられる.光変調の研究の歴史は長く,レーザーの発明以前にまで遡ることができる.これまでに多くの光変調素子が研究・開発されているが,代表的なものとしては,電気光学変調器,音響光学変調器,電界吸収型光変調器,熱光学変調器があげられる.以下では特に高速光位相変調器/強度変調器として重要であるポッケルス効果(1次電気光学効果)を用いた電気光学変調器を中心に述べる.

また,光変調の方式としては,一般に外部変調と内部変調があるが,ここでは,光変調素子として外部変調方式を考える.内部変調が特に重要なのは半導体レーザーであるが,これについては13章を参照されたい.

24・2・2 ポッケルス効果

異方性を持つ光学結晶中を伝搬する光波は,互いに直行する二つの直線偏光に分かれて伝搬すると考えることができる.それぞれの偏光は一般に異なる速度で結晶中を進む,つまり屈折率が異なる.二つの偏光方向と対応する屈折率は,結晶の配置と光の伝搬方向によって変わる.これを表すために,光学結晶の主軸の方向に直交座標(x,y,z)をとって,

式24・1

で表される屈折率楕円体を考えると便利である.ここでnx,ny,nzは,それぞれx,y,z方向の偏光に対する屈折率である.

ポッケルス効果を持つ光学結晶に電界(Ex,Ey,Ez)を印加すると,次式のように屈折率楕円体がわずかに変形する.

式24・2

ここで,B1~B6は次式で与えられる.

式24・3

rij(i=1~3,j=1~6)は1次電気光学係数テンソルで,3階のテンソル量である.電気光学テンソルの各成分の相互の関係および非零成分は光学結晶の対称性により決まる.特に,中心対称性のある結晶ではすべての1次電気光学係数テンソル成分が0となりポッケルス効果は生じない.

式(24・2)よりわかるように,電界を印加するとポッケルス効果により屈折率が変化して,一般に屈折率楕円体の主軸の方向が変わる.たとえば,LiNbO3結晶のような点群3 m結晶の光学軸(z軸)方向に電界を印加した場合を考えると,屈折率楕円体は次式で表されるにの場合は主軸の方向は変化しない).

式24・4

ここでno,neはそれぞれ常光線,異常光線に対する屈折率である.通常,rijEj<<1/ni2であるので,

式24・5

と書ける.ポッケルス効果による屈折率変化Δnは次式で表される.

式24・6

ポッケルス効果により,結晶中を伝搬する光波の位相が印加電界に応じて変化することになり,光位相変調作用が得られる.ポッケルス効果による位相変化の符号は,変調電界と結晶の極性によって決まり,分極反転技術(後述)を利用すると位相変化の符号を自在に反転させることができる.また,ポッケルス効果は光位相変調が基本であり,強度変調特性を得るためにはクロスニコル配置の偏光干渉計やマッハ・ツェンダー干渉計などの光学回路を用いる.

LiNbO3やLiTaO3のような電子分僅の非線形性に起因する電気光学結晶では,ポッケルス効果の応答時間はフェムト秒領域にあり,超高速光変調動作が可能である.さらに,直流からTHzまでの非常に広い周波数帯域での光変調が可能であること,波長依存性が小さいこと,強度変調における光周波数チャープが非常に小さいことや偏光依存性がある,などの特徴がある.電気光学結晶としてよく用いられるLiNbO3とLiTaO3の特性をまとめたものを表24・3に示す18)~20).これらの結晶では,電気光学係数rij~30 pm/V程度である.たとえば,厚さ1 mmの単結晶基板に数Vの電圧を印加した場合では,得られる屈折率変化はたかだか10-6程度である.このために,電気光学変調器としては,大きな変調電界強度と相互作用長を容易に得ることができる導波型光変調器が主流となっている.

表24・3

24・2・3 電気光学変調器

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