23・4・1 CCD
CCD(charge coupled device)は低雑音で近赤外領域から100 keVを超えるエネルギーのX線領域をカバーし(図23・26),微弱な光検出に利用できる最も優れたイメージセンサの一つである.CCDは光の入射する方向がパターンをレイアウトした表面からの表面入射型(front illuminated CCD)と,薄く研磨された裏面から入射する裏面入射型(back thinned CCD)に分類することができる84).一般にデジタルカメラやビデオカメラ用に広く普及しているのはFI-CCDである.FI-CCDでも受光領域がフォトダイオードで形成され,CCDは単なる電荷転送用のシフトレジスタとして機能するインターライン転送型(IL-CCD)とCCDのシフトレジスタ自体が受光領域としても機能するフレーム転送型(FT-CCD)に分けられる85).前者は主として民生用として開発・発展し,近年では画素サイズが3 μm程度の非常に小さなものまで製造されるようになっている.後者はCCDの開発初期には盛んであったが,IL-CCDの発展に伴い,主として科学計測用として各種分光分析,天文肘として発展してきた.
FT-CCDの中でもビデオの撮像を目的としない,受光領域だけのCCDはフルフレーム転送型(FFT-CCD)と呼ばれ,垂直シフトレジスタ,水平シフトレジスタおよび出力部の,シンプルな構成でできている.
[1] 計測用のFFT-CCD
表面入射型のFFT-CCDでは受光面上のポリシリコン配線のため400 nm以下の領域の感度はほとんどゼロであり,裏面入射型にくらべると,量子効率の最大値は約40%と低くなる.計測用のCCDでは,
が重要な性能であり,メーカーにより若干定義に違いが見られるものの,読出しノイズや暗電流が性能を比較するための目安となる.
最近のCCDではMPP動作により10 pA/cm2程度の非常に小さな暗電流と,5 e-rms以下の低読出しノイズが,ほとんどの最高グレードの計測用CCDでは実現されている.ほかに画素数の多いCCDではコスメティック欠陥がメーカー関を比較するうえで重要であり,受光面積が大きく画素サイズの小さなCCDほど画素欠陥は増加する傾向にある85).
[2] X線のダイレクト検出器としてのCCD
10 keV以下のエネルギー範囲のX線はFFT-CCDでダイレクトに検出することができる84)85).
このようなダイレクト撮像型のCCDは常深らにより,世界に先駆けて日本のX線天文衛星「あすか」に搭載され86),その後の同様のプロジェクトに大きなインパクトを与えた.同時に,国産でのダイレクト撮像型のCCDもCRESTのプロジェクトで87),小さな画素サイズ,厚い空乏層と大きな面積をめざして開発された.表23・3のCCDは,それらの成果である.最近では,これらの技術を集積したX線光子計数用のCCDとして,電子冷却機構を内蔵したCCD-MAXIが開発されており,60 μm以上の厚い空乏層を有するこのCCDは,国際宇宙ステーションの日本モジュールに搭載される予定である.
X線ダイレクト検出型のCCDではX線フォトンは,シリコン中でその入射エネルギーに応じて(3.65 eV当り一つというメカニズムで)複数個のエレクトロン-ホールペアを生成する.たとえばFe-55のMnのKaでは約1620eがCCD内部で生成され,読出しノイズが5erms以下の非常に低読出しノイズのFFT-CCDではS/Nがよく検出できる.また,発生するエレクトロンの数は完全にX線エネルギーに比例するため,非常に優れたX線分光検出器となる.このようなCCDでは,図23・27に示すようなFWHMで140 eV以下の優れたエネルギー分解能と,図23・28に示すような高い量子効率が実現でき,同時にCCDの持つ優れた位置分解能を実現することができる.
いまではCCDは,X線領域のアプリケーションになくてはならない検出器となっている.
[3] X線イメージング用CCD
CCD自体では10 keVを超えるX線エネルギー検出は不可能であるが,X線シンチレータやFOP(fiberoptical plate)のような,ほかのコンポーネントと組み合わせることで数十keVから百数十keVのX線検出が可能になる.レンズ光学系が困難なX線領域では撮像する対象物の大きさと1:1で対応できる面積の大きな検出器が要求される.最近では半導体技術の進展に支えられ,開発初期には考えられなかった数cm角のCCDも製作可能になっている.
特に1990年代からは,歯科用のX線フィルムをイメージセンサで置き換える技術が進展した.表23・4に示すような30×20 mmの有効受光領域と20μmの画素サイズを持った150万画素のFFT-CCDに,CsIのようなX線を可視光に変換するためのシンチレータをコーテイングしたX線耐性の高いFOPを接着させ,シンチレータ/FOP/CCDの構成によりデジタルカメラのようにX線のイメージを取得することが可能になっている.このようなX線検出器ではエネルギー分解能や感度などの主要な性能はほとんどシンチレータによって決定されているが,X線フィルムにくらべて,およそ50~90 %のX線量を減らすことが可能で,図23・29に示すような20 Lρ[mm]程度の解像度の高いX線のデジタルイメージが簡単に取得できるようになった.
23・4・2 BT-CCDの構造と特徴
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