ミリ波帯(millimeter wave,周波数:30~300 GHz)の技術は主に,これまで開発の進んでいたマイクロ波帯(microwave,周波数:3~30 GHz)の技術をもとに開拓されてきた.ミリ波よりも高い周波数帯はサブミリ波(submillimeter wave,周波数:300 GHz~3 THz,波長:1 mm~100 μm),テラヘルツ波(terahertz wave,周波数:数百GHz~数十THz)あるいは遠赤外線(farinfrared,波長:1 mm~30 μm)と呼ばれ,ミリ波から遠赤外線は電波と光の中間,境界領域に位置している.電波を用いたマイクロ波回線は電話,テレビ放送などの情報を伝送し,また光通信回線は,いまやインフラストラクチャとして生活に不可欠で、あることからわかるように,電波,そして光領域における技術は実用の域に達している.

これに対し,電波と光の中間に位置する電磁波スペクトルの開拓は遅れをとってきた.その理由は,電波としては波長が短い(周波数が高い)あるいは各種分子との相互作用が大きいなどのミリ波から遠赤外線に至るスペクトルの特殊性が欠点としてのみ働いていたことにあろう.しかしながら近年,この特殊性を生かした応用が急速に展開しつつあり,ミリ波よりも高い周波数帯は,サブミリ波,遠赤外線というよりはむしろ,テラヘルツ波帯と呼ぶのが通例になりつつあると思われる.ミリ波,テラへルツ波帯の計測システムを構成する要素の中で最も開発が進んでいるのが検出器である.これは,電波天文学16),地球環境計測17)といった,それぞれ,宇宙空間から,そして大気中から放出されている,背景雑音に埋もれた,きわめて微弱な信号を検出するという特殊な応用が開発を後押してきたといっても過言ではなかろう.これまでに,1 THzを超える周波数範囲までほぼ量子限界(near-quantum-limited)の感度を具備する検出器が開発されている18)

ミリ波,テラへルツ波帯は,電波領域の技術の延長と光領域のそれとが交わるところであり,検出器もおのおのの領域固有の動作原理に基づくものが開発されてきた.通常のマイクロ波領域におけるデバイス技術をミリ波,テラヘルツ波といった,より高周波領域に適用しようとすると,動作の障害となる素子のリアクタンス成分(主に容量,C成分)をより小さくするために,より微小なデバイスを製作する必要がある.このため,ミリ波,テラヘルツ波を電波としてとらえる高感度検出器で用いられているデバイスの動作領域(素子)寸法は,動作波長よりも絡段に小さな大きさとなっている.

この理由により,一般的に,電磁波を検出素子に効率良く給電するためのアンテナ,整合回路を素子と組み合わせることにより検出器は構成されている.23・2・2で説明する各種検出器のうち,[1],[2],[4],[7]は本構成によるもので,[3],[5],[6]は材料固有のバルク効果を利用した検出器であり,検出素子の寸法は波長と同程度以上とすることが可能である.そのため,アンテナを用いなくても検出器として動作する.

本節では,読者の興味の対象を考慮して,ミリ波でも周波数の高い短ミリ波(short millimeter wave)からテラヘルツ波帯(周波数では100 GHz~10 THz,波長3 mm~30 μm)で使用されている検出器の概要を,電波領域における技術を利用したものを中心に説明する.

23・2・1 検出方式と性能指数19)20)

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