レーザー出力Pは,エネルギーELをパルス幅Δτで割ったものであるから,高強度を得るためには,エネルギーを増加あるいはパルス幅を減少させる方法がある.レーザーのパルス幅Δτとスペクトル幅Δνの関係は,

式11ページi

であり,ガラスレーザーのバンド幅(~10 nm,~3 THz)よりフーリエ変換限界の場合300 fs程度のパルス隔が得られると考えられる.このパルス幅は,Ti:サファイアレーザーで得られる-3 fsにくらべて100倍程度長い.それにもかかわらず,現状での世界最高出力1.5 PWは,ガラスレーザーで達成されている43).これは,核融合研究用の大規模カラスレーザーシステムの技術が確立しており,大きなエネルギーを出力することが可能であることによる.強度Iは,レーザー出力Pをビーム面積Sで割ったものであるから,出力ビームを小さく集光することで超高強度が得られる.極限的には,パルス幅が,モノサイクルつまりレーザー伝搬方向の長さがレーザー波長λ程度,集光径がレーザー波長λ程度(集光面積:λ2程度)が可能であり,λ3レーザーの実現が目指されている.

ここでは,ガラスレーザーを用いた超高強度レーザーについて述べる.表21・2に世界の代表的な超高強度ガラスレーザーを示す.表に示すように1020 W/cm2を超える強度が達成されており,さらに1022 W/cm2を目指した開発が進められている.これら超高強度により,高速点火レーザー核融合,レーザー粒子加速,レーザー核物理などの新しい科学が切り開かれている.

表21・2

21・2・1 フロントエンド

発振器としては,Ti:サファイアレーザーを1053 nmで動作させ用いる方法と,ガラスレーザー発振器を用いる方法が試みられている.Ti:サファイアレーザーを用いる場合は,パルス幅100 fs以下の短いパルスが得られる反面,利得分布の端で動作するため波長安定性に劣る.一方,ガラスレーザーを用いる場合は,発振パルス幅は,150 fs程度と少し長いが安定性に優れている.

パルスストレッチャ(伸延器)としては,初期の時点ではファイバの自己位相変調とファイバの群速度分散を用いる方法が用いられたが44),近年では一般的な回折格子を用いたストレッチャが用いられる.ガラスレーザー増幅器中でのB積分値を低減するため0.2~1 ns/nm程度のチャープパルスを用いて増幅する.B積分値は,ビームのブレークアップの指標であり,4を超えると急速にブレークアップが進展し,光学素子の光損傷,集光スポットの拡大,パルス圧縮への悪影響などが生じる.チャープ率(パルス幅/スペクトル幅)を大きくとると,B積分値は小さくできるが,真空のパルス圧縮器が大きくなりコストがかかるため,チャープ率はシステム設計上の重要なパラメータの一つである.B積分値を2以下に保てば,500 fs程度のパルス圧縮に大きな影響を与えない.

前置増幅器は,発振器のnJのパルスをmJレベルまで106倍程度増幅するが,ここでガラスレーザーを用いると利得の狭帯域化によりスペクトル幅が狭くなる.これを避けるため,前置増幅器としてバンド幅の広いTi:サファイアレーザーやOPCPA(optical parametricchirped pulse amplifier)が用いられる.OPCPAは,バンド幅が広い,プレパルスが小さい,Jレベルの増幅が可能であることにより注目されている45).また,大出カガラスレーザーの第二高調波を使ったOPCPAでは,1018 Wを目指す計画も検討されている46)

21・2・2 主増幅器

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