レーザー光は,単色性と可干渉性に基づく直進性,収束性の高い光ビームであり,インコヒーレント光とは異なる応用を可能としている.レーザー光の直進性を活用する各種の応用においては,小さな発光面積からいかに遠くに高出力の光を伝搬させられるか,すなわち収束性の良さが,その性能を示す重要な指標となる.また,このような収束性の良い高出力のレーザー光をレンズなどで小さなスポットに集光することにより実現される高強度電場,高エネルギー密度がもたらす物質との線形,非線形な相互作用は,加工をはじめとする産業応用から核融合に至るまでさまざまな応用を可能とする.

このような観点から,レーザー装置の性能向上においては,単なる出力の増大といつよりは高収束,高集光が可能なビーム品質との両立による高輝度化が重要な課題である.輝度を高める技術としては,回折広がりを抑える空間的制御,パルス幅を圧縮する時間的制御,広義にはスペクトル帯域を狭める周波数制御や短波長光を発生させる光周波数変換技術も含まれる.本章では,空間的制御,すなわちレーザー発振における横モードの制御技術について述べる.媒質の均一性に優れたガスレーザーでは,kW級の平均出力においても比較的容易に回折限界に近いビーム品質が得られる.一方,固体レーザーでは数十W程度でも媒質,光学素子の熱ひずみ,温度ゆらぎによる波面の乱れや,高利得によるASEの発生が高輝度化を妨げる原因となる.しかし,ランプ励起からレーザータイオード励起への移行によって,励起分布の制御や熱負荷の低減がなされ,ガスレーザーに迫る勢いで高輝度化が進んでいる.さらには,非線形光学やディフォーマブルミラーを利用した波面の補償,スラブレーザー,ファイバレーザーなどに代表される熱的影響を軽減するための媒質形状の工夫によっても高輝度化が図られている.ガスレーザーにおいても,横方向励起形の大体積利得媒質から高輝度なレーザー光を発生させる共振器技術や出力窓においてさまざまな工夫がなされている.

発振器から発生可能なビームの輝度が限界の場合,その輝度をさらに向上させるには増幅器による出力増大がおこなわれる.増幅の方法としては,発振器からの光をそのまま増幅するMOPA(master oscillator poweramplifier)方式,および増幅器において高品質光が優先的に発振するよう弱い高品質ビームを注入する注入同期形がある.時間的にピコ秒程度に狭められた高ピークパワーの短パルス光の増幅には,CPA(chirped pulse amplification)による再生増幅器が用いられる.増幅器においては発振器からのビーム品質を損なわないことが肝要である.また発振器,増幅器などからビームが発せられた後に波面ひずみを補正したり,モード変換することによっても高輝度化が図られる.以上に記した高輝度化技術の分類を表20・1に示す.

表20・1

本意は,3,4,10,12,15各章に詳細が記載されている技術内容の中で, レーザー光の高輝度化という観点から技術内容,実施例などを総括したものである.各要素技術の詳細については, それぞれの章を参照されたい.

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