モード同期半導体レーザー(MLLD)は主にピコ秒領域の光パルスを発生する機能を持つ半導体レーザーであるが,その特徴を理解する一助に,まずその歴史を簡単に振り返ってみることにする.

超高速の光科学・光技術の視点で見ると,主に手利得帯域が広い固体レーザーや色素レーザーのモード同期によるピコ秒およびフェムト秒光パルス発生がその基盤となってきた.そして,超短光パルス発生技術の進展とともに,超短時間分解能のさまざまな物理化学的な分光測定および光エレクトロニクス的な計測技術も発展してきた.

半導体レーザー(LD)においても,そのバンド間遊移に基づく広い利得帯域を考えると,モード同期によってピコ秒もしくはそれ以下の時間幅の光パルスが発生できるであろうことは初期の頃より期待されていた.しかし,LDからの超短パルス発生の研究が本格的になったのは,長寿命の半導体レーザーデバイスの開発が進んだ1970年代後半以降のことである.最初のモード同期動作は,A1GsAs LDチップの片方の端面の側に球面の外部鏡を配置する複合共振器構成によって試みられた.外部共振器の光の周回時間に対応する周波数で,LDの注入電流を正弦波変調することで能動的なモード同期をおこなわせている214).この構成で,20~30 ps程度の時間幅のパルスが発生したが,複合共振器構造であるために,光スペクトルにはLDデバイスの縦モード成分が複数見られ,またこれに対応して第二高調波発生(SHG)を利用した強度相関測定による時間波形には周期的なスパイク構造が現れた.すなわち,発生した光パルスは,微細なノイズバースト的な光パルスが周期的に繰り返される内部構造を有するものであった.次いで,帯域制限のために外部共振器内にエタロン板を入れることにより,外部共振器モードは複数でもLDデバイスの縦モード成分は単一になり,周波数幅・時間幅積がフーリエ変換限界(FTL)で決まるモード同期光パルス発生が実証された215)216)

LDは数百μm長の小型レーザーデバイスであるために,20~30 ps程度の時間幅の光パルスであれば,モード同期によらず,パルス電流励起などの利得スイッチング(光パルス発生の動的過程は固体レーザーのQスイッチング動作と類似)によっても得られることが示された217)218)

モード同期半導体レーザーに戻ると,能動モード同期の試みのあとすぐに,外部共振器型のAlGaAs LDの受動モード同期によってサブピコ秒の光パルスの発生が実証された220)221).この受動モード同期動作においては,LDデバイス中に自然に形成された結晶欠陥が可飽和吸収体(SA)の役割を担った.サブピコ秒光パルスの発生は実現されたが,MLLDはその後,モード同期固体レーザーや色素レーザーとは異なった発展の経緯をたどる.すなわち,一層の超短パルス化を追求するのではなく,動作の高信頼化が主たる技術課題となった.これは,MLLDの最も有用な使途が高速光通信であるという認識に基づいており,この目的のためには長期間の安定動作が不可欠なことによる.しかし,小型で、高安定の動作が可能な超短光パルスレーザーは,光通信に限定されることなく,超高速光計測においてももちろん高い応用ポテンシャルを有している.

以下,本節では,主にMLLDデバイスの高信頼化と外部共振器型MLLD(EC-MLLD)の高安定化とその応用を主題とするが,最後に,モノリシック型MLLDについてもふれる.

18・4・1 モード同期半導体レーザーの高信頼化

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