ファイバレーザーは,光ファイバにEr,Yb,Ndなどの希土類を添加した希土類添加ファイバを光増幅媒質として用いたレーザーである.希土類添加ファイバを用いると,通常の固体レーザーなどと比較して,利得媒質の長さを非常に長く取ることができる.光路がほぼすべて光ファイバで構成されるため,空間的な光路の制御が不要で,安定でコンパクトな光源を構成することができる.また,光ファイバでは,小さな断面内に長距離に渡って光を閉じこめることができるため,非線形効果や分散制御を積極的に活用することができる.また,出力光も光ファイバから出力されるため,出力光の空間的な特性も良好で,安定している.このように,ファイバレーザーには多くの長所があり,近年,めざましく進展している光源であるといえる.能動モード同期レーザー,受動モード同期レーザーともに実用化に至っている.

一般的なファイバレーザーについては他章に譲りたい.ここでは,モード同期ファイバレーザーについて,記述する.

表18・7に,モード同期ファイバレーザーの代表例の諸特性をまとめる.モード同期ファイバレーザーは,大きく能動モード同期ファイバレーザーと,受動モード同期ファイバレーザーの二つに分けられる.能動モード同期ファイバレーザーは,共振器の内部に外部制御型の光変調器を有し,外部から印可される変調信号に同期してモード同期をかけるものである.

表18・7

能動モード同期レーザーは,近年,GHzを越える高繰り返しで数psの短パルスを発振している178).パルスエネルギーはサブpJである.一方,受動モード同期レーザーでは,数十MHzの繰り返しで,約100 fsの超短パルスを出力している179).パルスエネルギーは数nJの高エネルギー超短パルスの生成が実現されている.能動モード同期,受動モード同期ともに発振波長はEr添加ファイバによる1.55 μm帯が多い.この波長帯は,光通信に用いられる重要な帯域である.受動モード同期ファイバでは,最近,高エネルギー化の観点から,波長1.06 μm帯のYb添加ファイバが注目を集めている.多モードのYb添加ファイバを用いて,100 μJを越える超短パルス光が生成されている180).これらの光源は,すべて実用化に至っている.

図18・9にモード同期ファイバレーザーの基本構成を示す.一般にファイバレーザーは光を変調する変調素子,希土類添加ファイバによるファイバ増幅器,増幅器の励起光源,そして共振器から構成される.共振器は一般にファブリーペロ共振器とリング共振器とに大別される.リング共振器では,光を一方向に通す光アイソレーターが用いられ,単一方向の発振を得ている.また光の偏光状態の制御のために,共振器を全て偏波保持ファイバで構成したり,共振器内に偏波コントローラが用いられる.

図18・9

光ファイバには,コアの太い多モードファイバと,コア径が10 μm以下で,単一モードを伝搬させる単一モードファイバとに大きく分けられる.モード同期ファイバレーザーには,主に単一モードファイバが用いられている.単一モードファイバの構成はステップインデックス型と呼ばれる二重構造でできている.クラッド径が125 μm,コア径が10 μm以下の同心円柱状の溶融石英でできている.コアとクラッドには,微少な屈折率差が持たせてあり,コアを伝搬する光は端面で全反射し,コア内に閉じこめられて伝搬していく.ファイバレーザーでは,共振器全体を光ファイバで構成することができるため,空間的な光の結合を用いずに,レーザーを構成することができる.光ファイバ間の接続は,コネクタを用いて突き合わせる方法と,融着接続器を用いて光ファイバ間を溶融接続する方法の2種類がある.市販のレーザーでは主に後者が用いられている.

希土類添加ファイバには,1.55 μm帯のEr,1.3 μm帯のPr,1 μm帯のYb,Nd,1.8 μ
m帯のTrなどがある.また,Er-Yb添加ファイバのように,2種の希土類が共添加されているファイバも開発されている.光通信技術の進展から,これまでEr添加ファイバを用いた1.55 μm帯のファイバレーザーの開発・実用化が最も進んでいる.近年,受動モード同期ファイバに関し,高出力の得られるYb添加ファイバが注目されている.最近,希土類添加ファイバには,偏波保持型,二重クラッド型,多モード型などの多種の構造を持つファイバが研究・開発されている.また,希土類の添加濃度や材質の制御によって,分散特性や増幅特性の異なるファイバが開発されている.

ファイバレーザーでは,出力光は光ファイバから出力されるため,理想的な空間モード分布を得ることができ,固体レーザーで見られるような,熱レンズ効果などの外乱による空間モードのゆらぎは回避することができる.しかし,熱などの外乱によってファイバの屈折率が微妙に変化し,それに伴って光学距離や複屈折が変化するため,それらを補償する必要がある.温度制御や共振器長制御,偏波保持ファイバの利用やファラデー回転子の利用などの工夫で,レーザー動作の安定化を行うことができる.

18・3・1 能動モード同期ファイバレーザー

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