通常のレーザーが特定のレーザー媒質を用いて光増幅をおこなうのに対して,自由電子レーザー(free electron laser : FEL)では,高エネルギーに加速した電子ビームを,アンジュレータ(周期磁場などを用いた電子蛇行装置)などを用いて真空中で蛇行させたときに放出される準単色のシンクロトロン放射(アンジュレータ放射)が,電子ビームとさらに相互作用することによって増幅され,コヒーレント光となる.このためFELでは,通常のレーザーのようなレーザー媒質のエネルギーレベルで決まる波長の制約がなく,原理的にはマイクロ波からX線まであらゆる波長のレーザーを発生させることが可能となる.FELはシンクロトロン放射(放射光)にレーザーの持つコヒーレンスとハイパワーを付加した究極の放射光ともいえ,現在世界で稼働しているESRF,SPring-8,APSといった高輝度アンジュレータ放射発生のための大型電子蓄積リング(いわゆる第3世代放射光源)に対して,特に真空紫外からX線域の短波長FELを第四世代放射光源と呼ぶこともある.

FELに用いられるアンジュレータの原型(ウィグラ)は1951年にH. Motz1)によって考案され,その後R. M. Phillips2)が同様の磁場装置に高密度電子ビームを組み合わせてハイパワーのマイクロ波を発生することに成功した.ユービトロンと名付けられたこのマイクロ波管は,FELの原型ともいうべきものであったが,光領域のFELに発展することはなかった.これに対して1970年,これらの研究とは別にJ.M.J.Madey3)(スタンフォード大学)は,量子力学的考察のもとに,アンジュレータ磁場と相対論的電子ビームを用いて光領域のレーザーの発振が可能であることを示し,1977年には同大学の超電導リニアックを用いて3.4 μm付近の赤外域でレーザー発振を成功させた4).これがFELの起源であった.以来四半世紀が通過し,この間,静電加速器,リニアック,蓄積リングなど各種の電子加速器を用いたFELが,ミリ波帯から真空紫外域に至る広い波長域で発振できるようになり,原子・分子励起プロセス,表面科学,半導体物性,バイオ・医療など各種の分野で利用可能となった.

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