プラズマの再結合過程を利用してプラズマ中イオンに反転分布状態を作り出す方法はGudzenko,Shelepinによって初めて提案された11).これは,通常の気体レーザーと異なり,完全電離に近いプラズマそのものがレーザー媒質となりうる可能性を示したものである.この方法を多重電離イオン(多価イオン)プラスマに適用することができれば,軟X線レーザーの励起が可能になる.長年にわたる研究の試行錯誤の末,1985年の米国・プリンストン大学における水素様炭素(C)イオンのパルマーα線(18.2 nm)の明確な増幅の観測12)によって,再結合軟X線レーザーの研究が本格的に始まった.

16・2・1 再結合プラズマ法の原理

プラズマの再結合過程には次のようなものがある.

式16・1

z価のイオン(Sz)からなるプラズマの電子温度が下がると,自由電子がイオンに捕獲される再結合によって,z-1価のイオンSz-1が生成される.この再結合によるイオンの電離状態のz価からz-l価へと移る流れが強いときは,再結合したz-1価イオンの高励起準位には再結合による粒子の供給が絶えずなされ,かつ準位間のエネルギー差が小さいために素過程は十分速くつり合うように進行するので,そのような励起準位間の粒子密度分布は熱平衡状態にあり,サハ・ボルツマン分布に従う.

一方,準位が基底状態へ近づくにつれ準位間エネルギーが広がることで放射遷移が優勢になり,なだれ的に粒子の流れがz-1価イオンの基底状態に向かうようになる.このように,局所熱平衡が成り立つ励起準位と,放射遷移で下準位へ粒子が十分速く掃けていけるような準位の聞に反転分布が生じる.これが,再結合プラズマ法の原理である(図16・2).

図16・2

再結合プラズマ法の起点となるイオンとしては,裸のイオンあるいは閉殻イオン(ヘリウム(He)様イオンなど)がよく用いられる.したがって,X線レーザー遷移は価数が一つ下がる水素様イオンあるいはリチウム(Li)様イオンに基づく遷移となる.

16・2・2 水素(H)様イオン再結合X線レーザー

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