面発光半導体レーザー(面発光レーザー)とは,半導体基板に垂直に光出射することを特徴としたレーザーである.通常の半導体レーザー(端面出射レーザー)は,半導体基板に水平に伝搬した光が,基板端面から出射するのに対し,面発光レーザーは,基板表面から光を取り出すため,レーザーの一括製作や微小化・集積化が可能である.

13・5・1 面発光レーザーの種類

面発光レーザーは大きく2種類に区別される.一つは,基板に水平に共振器を形成し,45°の反射鏡や回折格子の2次の回折条件を用いて,水平に伝搬した光を垂直方向に出射する(水平共振器型面発光レーザー).このため,レーザーの特徴は端面出射レーザーに近い.もう一つは,基板に垂直に共振器を形成する構造(垂直共振器型面発光レーザー)である.レーザー光の共振を基板に垂直に行う構成のため,端面出射レーザーとは設計手法,製作手法が大きく異なり,その特性にも大きな違いがある.

本節では,主流であるこの垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL:vertical cavity surface emitting laser)について説明する.

13・5・2 垂直共振器型面発光レーザーの特徴

面発光レーザーは基板に垂直に光出射することから,図13・32に示すような2次元状に配列したレーザーアレイやレーザーの集積が可能である.また,端面出射レーザーの場合は,素子の分離により初めて製作が完了し,動作テストが可能となるが,面発光レーザーは基板上で製作が完了するため,動作テストも基板上で行えるので,単体のレーザーとしても生産性に優れる.

図13・32

垂直共振器型面発光レーザーでは,波長程度の短共振器にすることで,動的単一モード(単一波長)動作となり,また,狭い出射角度の円形ビームのため,レンズを用いずに光ファイバへ高効率結合が可能である.さらに,素子の微小化が容易なため,極低しきい値電流動作が実現できる.

図13・33に,端面出射レーザーと面発光レーザーの典型的な大きさを示す.電流注入領域(活性領域)の体積は端面出射レーザーに比べて2~3桁小さく,しきい値電流を1/100以下にすることが可能である.このため,小さな電流で高速変調可能となり,低消費電力な高速直接変調光源として重要である.

図13・33

このように,垂直共振器型面発光レーザーは,低消費電力,高速動作,高効率,アレイ化など,これまでのレーザーに比べて優れた特徴を備えたレーザーである93)

13・5・3 面発光レーザーの歴史

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