13・4・1 短波長半導体レーザーの材料開発

短波長半導体レーザーには,ワイドバンドギャップの直接選移形半導体材料が用いられる.図13・27に各種の化合物半導体材料におけるバンドギャップと格子定数との関係を示す.緑色,青色,紫色にかけての短波長半導体レーザーを作製するには,大きく分けてZnSe系半導体とGaN系半導体の2種類の選択が考えられる.ZnSe系半導体は,ZnMgSSe混晶を用いることにより,GaAs基板との格子整合が可能である.ただし,窒素ドープによりp形が作製できるバンドギャップが約2.9 eV以下に限られるため,電子の閉じ込めを確保できるよう考慮すると,発振波長の短波長限界が約480 nmとなる.活性層には一般にZnCdSeが用いられ,最も作りやすいデバイスの発振波長は500 nm前後である.1991年に初めての低温(77 K)パルス発振78),また1993年に室温連続発振79)が達成され,一時は注目を集めたが,基板との界面からエピ層を横切って伝搬する積層欠陥密度が104-105 cm-2程度存在すること,およびイオン性の強い結晶のために動作中にダークラインの増殖が起こり,デバイス寿命が短いことが明らかとなった.室温2 mW動作時の寿命は400時間程度までしか得られていない80).したがって1995年以降は短波長半導体レーザの主役の座をGaN系半導体レーザーに奪われる結果となった.

図13・27

GaN系半導体は古くから3.4 eVの直接選移形半導体として知られ,結晶作製の努力がなされてきたが,格子盤合する基板が存在しないこと,および伝導度の制御ができないことから発光デバイスへの応用が停滞した時期が長く統いた.しかし,1986年に格子不整合率13%ものサファイア基板上に低温堆積バッファ層を挿入することで,有機金属化合物気相成長法(MOVPE法)により作製したGaN結晶の品質が飛躍的に改善することが報告され81),状況が一変した.従来の結晶ではアンドープでの残留電子濃度が1019 cm-3以上と非常に高く,これがn形における伝導度の制御やp形の作製を妨げていたが,上述の方法により高品質化されたGaNでは,残留電子濃度が1016 cm-3台に下がり,1989年以降,p形の実現や82),n形の伝導度制御83)が可能となった.

これらの技術を用いて,1993年には発光波長450 nmの高輝度の青色発光ダイオードが実現され,フルカラーのLEDディスプレイや信号灯などに実用化された.1995年には電流注入による初の誘導放出光が確認され84),続く1996年には青紫色半導体レーザーの室温パルス発振85),室温連続発振86)が報告されるに至り,その後も飛躍的な速度で特性の改善がなされている.ZnSe系半導体レーザーで問題となったデバイス寿命に関しては,GaN系半導体レーザーにおいても当初109~1010 cm-2もの高い転位密度が特性劣化の主な原因であることが認められたが,低転位化技術(後述)の進歩により,実用上十分なデバイス寿命が実現されている.

さらに最近では,厚膜のエピタキシャル成長により作製された2インチのGaN単結品基板87)が実用化され,青紫色半導体レーザーの作製に用いられるようになってきた.このGaN単結晶基板は,コストは高いものの転位密度が105 cm-2台と低く,電気伝導も可能なことから今後の普及が期待されている.GaN系青紫色半導体レーザーは,すでに高密度光ディスク装置用光源としての応用も始まっており,今後ますます高性能化が進められていくと思われる.

13・4・2 GaN系半導体レーザーの構造および作製方法

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