13・2・1 研究開発の歴史

1970年に半導体レーザーの室温動作(AIGaAs系)11)12)と,石英系光ファイバの低損失特性(20 dB/km)が達成され)13),光通信システムの実用化に向けた第一歩となった.以来,より高速でより遠くへ通信可能な光通信用半導体レーザーの研究開発が進められてきた.光ファイバ通信は,波長0.8 μmのAIGaAs系半導体レーザーと多モード光ファイバ(MMF:multi mode fiber)の組合せで始まったが,光ファイバ内の不純物(主にH2O)の除去技術が進み,ファイバを伝わる光の低損失波長帯がレイリー散乱の影響の少ない長波長側に移るとともに,波長1.3 μm帯や1.55 μm帯が用いられるようになった.また長距離伝送化に伴って,モードごとの伝搬速度の差による影響が生じない単一モード光ファイバ(SMF:single mode fiber)が用いられるようになった.光ファイバによる世界初の大洋横断海底通信システムTAT-8(1988年に商用化)では,波長1.3 μm帯のInGaAsP系ファブリ・ペロー(FP:Fabry-Perot)半導体レーザーが用いられた)14)

光ファイバの純度がさらに向上し,ほぼ理論限界(石英ガラスの基礎吸収と格子振動の倍音による吸収で定まる限界)の伝送損失(<0.2 dB/km)が波長1.55 μm帯において得られるようになると,長距離幹線(trunk line)系は,この波長帯に移っていった.この波長帯では伝送可能な距離が光ファイバの分散特性(波長ごとに伝送速度が異なる)に基づく信号波形の乱れで決まるようになる.そこで,変調時にも単一軸モードで動作してスペクトル広がりの少ない分布反射形(DBR:distributed Bragg reflector)レーザーや分布帰還形(DFB:distributed feedback)レーザーの検討が開始され,特に後者の実用化が進んだ)15).エルビウム光ファイバ増幅器の開発)16)17)によって伝送距離が飛躍的に伸びた結果,高速変調に伴って生じる発振波長のダイナミックなスペクトルシフト(チャーピングと呼ばれる))18)19)が伝送距離を制限する支配的な要因となった.このためレーザーを直接変調するのではなく,外部光変調器を用いて光変調する方式が提案された.外部変調器にはニオブ酸リチウム(LN)結晶を用いるものと化合物半導体結晶を用いるものがある.電界吸収形(EA:electro-absorption)光変調器を集積化した変調器集積DFBレーザーは後者の代表例であり,40 Gbit/sまでの高速動作が実現されている20)

この間,発光層はダブルヘテロ構造に代わって多重量子井戸(MQW:multiple quantum well)構造が採用され,レーザー特性がいちだんと向上した.これらの構造は波長1.3 μm帯にも適用され,市線系(access network)やデータ伝送用に適用されている.

1980年代後半に現れた光ファイバ増幅然は,光通信技術に大きな変革をもたらした)21)22).光ファイバの損失を補償することにより無中継長距離伝送(たとえば,10 Gbit/sで1000 km以上)を可能にした.これによりヘテロダインもしくはホモダイン検波による高感度受信が可能なコヒーレント伝送方式にとって代わり,超長距離伝送に実用化された.さらに,多数の波長の光信号をまとめて増幅できるという利点により,稠密波長多重(DWDM:dense wavelength division multiplexing)伝送に発展した)23).また,波長を光信号の経路としてとらえることが可能となり,発振波長を30 nm程度変えることのできる波長可変レーザーが注目を集めている.

なお,光ファイバ増幅器にはファイバ中にドープされた希土類イオンを励起する方式とラマン増幅を用いる方式がある23).これらを励起するための1.4 μm帯(InGaAsP系),0.98 μm(InGaAIAs系)高出力レーザーなども重要な通信用レーザーである.その他,160 Gbit/sを超える高速通信に向けたOTDM用パルスレーザーの開発が進められている19)24)

13・2・2 光通信用半導体レーザーの基本構造

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