44・5・1 核融合点火と燃焼

レーザー核融合の燃料としてDTを考える場合,燃料を10 keVまで加熱するには約1200 MJ/gのエネルギーが必要である.また,DT燃料をフェルミ縮退するまで圧縮するのに必要な比エネルギーは,Ec=0.35 aρc2/3 [MJ/g]で表される.ここでρcは圧縮されたDT燃料の密度,αは等エントロピー圧縮からのずれを表すパラメータである.さまざまな研究によれば,実際にレーザー核融合の実用炉として必要なDT燃料の密度は100~1000 g/cm3と見積もられている.このようにフェルミ縮退の観点から圧縮に必要なエネルギーは7.5~35.0 MJ/g程度になる.実際には,αが2~3になるとされており,さらにそれ以上のエネルギーを必要となる.

燃料を点火させるために必要な温度条件を達成するためには,従来からの中心点火と最近提案された高速点火の2種類の方式が存在する.

中心点火方式の概要を図44・20に示す.中心部にホットスパークを形成するため求心衝撃波による加熱とそれに統く断熱圧縮が必要である.そのために,爆縮に高い球対称性が求められている.また,断熱圧縮過程ではプラズマの圧力がほぼ一様となり(isobaric),ホットスパークの密度は主燃料部の密度にくらべて1/10程度となる.このため,高利得を実現するための高いρRを発生させるには,大きいレーザーエネルギーを必要とする144)115)

図44・20

DT燃料の核反応によって発生する中性子は,燃料コアプラズマに対して透明であるため,点火した燃料の自己加熱では,核反応で発生したα粒子による加熱が支配的となる.α粒子の平均自由行程を考慮すると,点火のための燃料密度半径積は,ρR=0.3 g/cm2程度必要である.この際,中心部分には点火に必要な10 keV以上のホットスポットが形成されている必要があり,これは爆縮の均一性などに依存する.

以上,点火に必要な物理的条件の概要を述べたが,この条件を満たすように燃料を圧縮するためには,レーザーエネルギーが流体の運動エネルギーへ変換する結合効率,輻射,流体力学的なエネルギー損失などを考慮しなければないらない.点火条件を達成するためには約500 kJ以上のレーザーエネルギーが必要であり,燃焼波が伝搬し,高利得爆縮を達成するには2 MJ以上のレーザーエネルギーが必要である.米国では,この考えに基づいて間接照射による中心点火を目標にNational Ignition Faci1ity(NIF)を建設している116)117).たとえば,NIFの爆縮実験では,爆縮速度3~4×107 cm/s,ρR=1~2 g/cm2,密度ρ=1000 g/cm3で利得約10程度の性能を目指している.

44・5・2 高速点火方式

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