44・2・1 クーロン力と核力

よく知られているように原子は電子,陽子,中性子といった素粒子から構成され,このうち陽子と中性子は原子核を構成するため核子と呼ばれる.中性子は電気的に中性であるが陽子と電子はおのおの+とーの同量の電荷(1.6×10-19 C)を持っている.電荷を持つ粒子の間にはクーロンカと呼ばれる力が働く.たとえばq1,q2という電荷を持つ2粒子が距離rを隔てて位置しているとき,両者には,

式44・1

というカが働く.ただし,ε0は真空中の誘電率でε0=8.854×10-12 F/mで与えられる.

上式からもわかるように,これら2粒子の電荷が異符号であれば引力,同符号であれば斥力が働く.さらに,最初2粒子が無限遠に離れている状態(r→∞)をポテンシャルエネルギーの基準点にとると,距離rにまで近づいたときの系のポテンシャルエネルギーは,

式44・2

で与えられる.たとえば2粒子を陽子とし,rを原子核半径(r0式4ページi5×10-15 m)程度とすると,Epo式4ページi0.3 MeVとなる.この距離よりも距離が狭まると核子どうしの間には核力と呼ばれる強い引力が働く.通常はこの強い核力が,陽子や中性子を原子核内の安定的な結合状態に維持している.

図44・1は上に述べたようすを様式的に表したものである.rr0の領域ではクーロンカによる斥力が支配的となり,rr0の領域では核力による引力が支配的となるのがわかる.またr→0でEp→Ep1,(<O)となり,二つの陽子は無限遠に離れているより結合(融合)しているほうが安定であることを意味している.クーロン力に打ち勝って陽子どうしを核カで引き合う距離にまで近づける最も簡単な方法は,全体を一定温度まで加熱することである.イオンはマクスウェル分布に従うことが期待され,このうち相対的に高いエネルギーを持つイオンがクーロン障壁を超え核融合反応を起こす.

図44・1

44・2・2 異なる種類の核融合反応

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