レーザーキャプチャマイクロスコピー(laser capture microscopy:LCM),レーザーマイクロダイセクション(laser microdissection:LMD)とは,顕微鏡での観察下に,組織標本の微細な領域をレーザーにより切り取り,採取する技術である.LCM/LMDを用いて組織標本上で形態の異なる領域を分離して採取することによって,形態に応じた遺伝子(DNA)やRNA,タンパク質の状態の違いを直接的に確認することが可能となり,生物組織形態の分子レベルでの理解が進展した.従来,実体顕微鏡下に注射針の針先を用いて採取する方法や,顕微鏡とマイクロマニピュレータを組み合わせる方法などがあった.

これに対し,1996年にLiottaらはレーザーを用いて組織標本から微細な領域を採取する方法を開発した13).この方法の利点は,目的とする領域のみを莢雑物をまじえず,正確に採取できることであり,また,モニター上で採取領域を指定するだけで採取ができる容易さもあげることができる.

42・3・1 LCM,LMDの概要

LCMとLMDでは組織採取の方法が若干異なる.試料調製,機器の構成をそれぞれ解説する.

[1] 試料の調製(図42・6)

LCMは通常のスライドガラス上に数~10 μm程度にカットしたパラフィン包埋(図42・6(a))ないし凍結組織標本を載せる(図42・6(b)),LMD は通常のスライドガラス上にフィルム(紫外線吸収剤を含むポリエチレンナフタレンフォイル)を載せ,フィルム辺縁を両面テープで固定する.フィルム上に数~10 μm程度にカッ卜したパラフィン包埋ないし凍結組織標本を載せる(図42・6(c)).

LCM,LMDとも研究の目的に合わせ,組織標本に対してHE(hematoxylin-eosin)染色などの組織染色を行う.

図42・6

[2] 機器の構成

LCM,LMDとも顕微鏡,レーザー,レーザーマイクロダイセクションモジュールおよびこれらを制御するソフトウェアよりなる.レーザーは顕微鏡光路を経て標的に照射される.

LCMはレーザーとして,半導体レーザー(GaAs)など赤外線レーザーが用いられる.アームにより赤外線吸収材料を含む熱可塑性フィルムを組織標本上に密着させる.レーザーを標的とする領域に照射し,フィルムを融解させ,目的とする組織部位に融合させる.その後,アームを挙上させることにより,組織を採取する(図42・7(a)).

LMDはレーザーとして,N2レーザーなど紫外線レーザーが用いられる.試料を顕微鏡スライドステージに倒立してセットする.標的とする部伎を縁どるようにレーザー照射を行う.光化学作用により,フィルムおよび目的とする組織部位が切り取られ,ともに落下する(図42・7(b)),これをスライドステージ下で回収する.

図42・7

42・3・2 レーザーキャプチャマイクロスコピー(LCM),レーザーマイクロダイセクション(LMD)のがん研究への応用

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