生体組織の光に関する断層像を描き出そうという拡散光トモグラフィー(光CT)1)は,近赤外光が生体組織を透過しやすいことを利用し,数cm以上の比較的厚い組織を対象としている.比較的厚い組織を通った近赤外光は,直進性などの波動性を失い,強く散乱される結果,生体組織内を拡散的に伝搬する.そのため,このような光による生体の断層イメージングは拡散光トモグラフィー(diffuse optical tomography : DOT)と呼ばれる.この拡散光トモグラフィーの研究は1990年代初めから世界各国で開始された1)2).2000年以降,高品質の断層画像が得られ,また,拡散反射光から断層像を得る革新的なアルゴリズムも開発されている.

以下では拡散光トモグラフィーの概念・実際の装置・アルゴリズム,および得られた画像を示す.

38・2・1 生体内光伝搬とそのモデル化

生体組織は近赤外光を強く散乱し,弱く吸収するために,数mmを超える大きさの生体組織内における近赤外光の伝搬3)4)は拡散現象として近似できる.これを概念的に表したのが図38・1である.照射点近傍では波動性を保持し,散乱パターンも生体組織特有のパターンを有しているが,数mmを超えると光は波動性を失い,散乱パターンも等方的となって光があらゆる方向に拡散的に伝搬すると考えてよい.散乱の強さは散乱係数μsで与えられ,散乱パターンの非等方性はパラメータgで表され,生体組織は0.9程度の他をとる(式966ページiで,g=1なら完全な前方散乱,g=-1なら完全な後方散乱,g=0なら等方散乱).光拡散近似が成り立つ領域では散乱の強さは等価(換算)散乱係数μs‘=(1-g)μsで表される.吸収の強さは吸収係数μaで表される.

図38・1

ピコ秒の時間領域で拡散的に伝搬する光は,以下の時間依存の光拡散方程式で記述される.

式38・1

ここで,cは生体組織中の光速,φ(r,t)は光の積分強度(fluence rate)で位置rおよび時間tの関数,D(r)= 1/3μs‘(r)は拡散係数,μa(r)は吸収係数である.S(r,t)は組織内の光源であるが,蛍光などの発光がなければ0である.

生体組織内のμs‘(r)とμs(r)の分布が与えられれば,式(38・1)を必要な条件のもとで解くことができ,φ(r,t)の時間変化および空間分布が求められる.この結果から組織表而で測定される光強度Φ(s,t)=-D(s)∇φ(s,t)(sは表面上の位置)が得られ,この光強度Φ(s,t)を得るプロセスを順問題解析という.測定される光強度Φ(s,t)は内部のμs‘(r)とμs(r)分布の情報を有している.特にμs(r)は酸素化および脱酸素化ヘモグロビンの吸収スペクトルから血液状態に,μs‘(r)は解剖学的情報に結び付けられる.

38・2・2 拡散光トモグラフィーの原理

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