商品の販売管理,物流管理,工場の生産管理,図書やビデオの貸し出し管理,また各種書類や伝票の管理など,今や社会のいたるところでバーコードによる情報管理が行われている.レーザースキャナ方式のバーコードリーダは,これらのシステムにおける情報入力装置として広く用いられている.図33・19はスーパーマーケットのレジで使われるPOS(point of sales,販売時点情報管理)システム用バーコードリーダの例である.商品を手に持って読み取り窓の前を通過させるとき,レーザビームが商品上のバーコードを走査し,読み取りを行う.読み取られた情報は上位のコンピュータに送られ,商品別や時間帯別の売上げ推移,在庫状況把握などさまざまな形で販売管理に使われる.

図33・19

バーコードにはいくつかの種類があるが,図33・20は食品・雑貨用に定められた世界共通規格バーコードの例である.4種類の幅をもつ黒白のバー,合計4本で1桁を表している.図は13桁の例であり,先頭の2桁は国別フラグ,続く5桁はメーカーコード,次の5桁が商品コード,最後の1桁はチェックデジットとなっている.日本の国別フラグには49および45が割り当てられており,JANコードと呼ばれている.

図33・20

図33・21にバーコードリーダの光学系構成図を示す.レーザ光源は,以前はHe-Neレーザが一般的であったが,今では小型で安価な赤色の半導体レーザーに置き換わっている.光源を出たレーザービームはモータによって回転するポリゴンミラーで反射され,走査ビームとなる.走査レーザービームは固定ミラーによって反射を繰り返し,読み取り窓から出射される.図では一組の固定ミラーが示されているが,実際には多くのミラーが複雑に配置され,読み取り窓上で多方向の走査パターンを形成している.この走査パターンが窓上を移動するバーコードを捕らえると,レーザー光はバーの白黒に応じた強度で散乱反射され,その一部は破線のように読み取り窓を通って装置内部に戻り,レンズによって光検知器に結像する.ここで電気信号に変換されたのち,復調回路によってバーコードが読み取られる.

図33・21

上記のレーザスキャナ光学系には以下のようなバーコードリーダ固有の要件があり,各社それぞれが技術とノウハウを競っている.

一つ目はレーザビームの整形である.小さなバーコードを読むためには,スポット径を小さく絞って十分な分解能を持たせなければならない.しかし,逆にビームを絞り過ぎると読み取り深度が浅くなってしまうという問題が生じる.そのため,光源を含むレンズ系の最適設計を行うことによって,ほかの多くのレーザ機器とは異なり,ゆるやかに集束するビームを生成している.2つ目はレーザー走査パターンである.商品が読み取り窓上を通過する際の位置,角度,速度によらず,確実にバーコードが捕らえられるように,パターンを構成する走査線の本数,走査線長,走査方向が最適設計されている.バーコードの通過位置や角度の許容範囲を拡大するために,2面の読み取り窓から走査パターンを出射する高性能装置(図33・19参照)もある.

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