安定形共振器において高輝度化を妨げる要因の一つは,共振器の光軸断面方向において不均一な位相差を生じる素子の存在である.その典型的な例は熱複屈折を生じる固体レーザー素子である.この問題を解決するには,生じた位相差を何らかの方法で相殺し,波面を制御する補償光学の応用が有効である.

方法としては,ひずみ発生原因の素子と共振器鏡の間に位相板やレンズなどの素子を挿入して補正する場合と,共振器鏡において補正する場合がある.静的な光学素子では波面ひずみの完全な補正は困難であるが,非線形媒質による位相共役鏡(PCM:phase conjugate mirror)を用いると,ひずんだ波面を逆行補正することができる(図20・4).

図20・4

位相共役鏡によるビーム質改善は,ダブルパルス増幅務におけるビーム質劣化を補償する手段としても有効であるが,本節では共振器への適用を取り上げる.位相共役鏡の種類としては,後方誘導ブリュアン散乱(SBS),フォトリフラクティブ効果,過飽和吸収,レーザー利得飽和を介した4波混合による自己位相共役(SPPC:self pumped phase conjugator)などがある.

20・3・1 共振器内位相制御素子

共振器内に,熱レンズ効果などにより生じた位相差を相殺・補償する位相分布を有する静的な光学素子を持入することで,レーザーの安定動作領域を拡大し,ビーム品質の劣化が抑制できる.また,基本モードに対する高次モードの損失比率を高めたり,フラットトップに近い振幅分布で回折限界に近いビームを得る場合もある.

この位相補償素子挿入の特長としては,比較的容易に構成できる点,振幅を制御しないので出力の低下が小さいことがあげられる.光学素子の種類としては,単純な球面レンズ,レンズの組合せによるテレスコープ30),非球面レンズ31),位相板32)~34),複屈折素子35),スパイラル上の位相板36),液晶素子37),ホログラフィック素子38)などがある.

20・3・2 共振器鏡での補償

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