ファイバレーザーの歴史は古い.ガラスレーザーが発振した1960年代には,すでにフラッシュランプにレーザーガラスを引き延ばしたガラスファイバを巻き付け,レーザー発振をさせていた.強い励起をすれば,他のレーザーより長い励起長を持つガラスファイバは,簡単にレーザー発振したはずである.しかし,ファイバレーザーがほんとうに有効なレーザーとなるには,クラッド層を持ったほんとうの光ファイバが必要である.光ファイバとレーザー技術が実用的につながったのは,光通信におけるファイバ増幅器であって,エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA : Erbium doped fiber amplifier)がファイバレーザーの発展に大きな寄与をした.最近では,産業応用に適した高出力レーザーとしてのファイバレーザーが注目され,大きな進歩を遂げているとともに,フォトニックファイバのように光制御の最先端を担っている.

15・2・1 ファイバレーザーとは

光ファイバは空間的遮断周波数を持っており,光の伝播モードを厳密に制御できるところにその特長がある.レーザー発振器を構成する光共振器は,共振器長の制御は厳密であるが,空間的横モードに関しては回折効果によるわずかな損失制御しかモード制御能力を持っていない.光ファイバのモード制御と固体レーザーの高出力特性を兼ね備えるファイバレーザーは,レーザーの実用化時代を迎える今後,最も重要なレーザーの一つとなっている.

光ファイバの最大の特徴は,なんといっても低損失だということにある.ファイバレーザーの優れた特性も,光ファイバの低損失特性にその基礎を置いている.いまでこそ,世界中に張り巡らされた石英ファイバが低損失物質であるということを,誰もが納得している.しかし,光ファイバが提案された当初は,誰も石英ファイバがそれほど低損失だと理解しなかった.現実のガラスは厚さが1 cmでは十分な透明物質だが,厚さ1 mのガラスを作れば,ただちに不透明で損失の大きな物質だった.ガラス内を1万キロメートルも光信号を伝送できるとは容易に想像できなかった.

そこに科学が登場した.科学とは知識ではなく「疑う心」である.1 mの厚さのガラスが光を透さないのは本当に正しいことだろうか.それは原理的に通さないのか,それとも現実のガラスの性質が悪いから通さないのか.理論限界から考えたら,光はガラス内をどこまで通ることができるのか.このように考え,あらゆる損失要因,吸収,散乱損失,光学的不均一性の原因とその限界を探ることで,ガラスファイバは光学材料としてもっとも低損失で,何千kmも光信号を伝送することができると確信するようになった.このように,目の前の現実を信じるのではなく,原理的な証明がなされていないものは信じないという「科学の心」が光ファイバを生み出した.これは今でも残る我々に対する大きな教訓である.

同じことがファイバレーザーの開発でも起こった.極細のファイバを使って光通信の研究が進んでも,わずか5 μmのコアを信号が伝送していることを知っている研究者は,ファイバを通じてパワー伝送したり,レーザー加工をするに充分なパワーを発生させることを想像しなかった.しかし,実際は,極限的に低損失なファイバを用いたレーザーは,非線形効果を発生しない連続出力ではキロワット出力を発生することができる高出力レーザーであった.原理的な限界を極めないで,常識的な判断をすることの危険性をまたしても実感させられる結果となった.光ファイバ,そしてファイバレーザーの開発の過程では,まだまだ,われわれが捉えられている常識の罠を解き放つことが重要だと悟らされる.

15・2・2 ファイバレーザーに関係する保存則と拡大則

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