46・5・1 レーザープラズマ相互作用による高速電子の発生とγ線生成
高強度レーザーをプラズマに照射すると,航跡場によらずしても,数十keVから数十MeVの高速電子が生み出される.レーザー光は,真空から高密度プラズマの中に進入していくに従って,その密度にあった相互作用をおこなう.遮断密度の1/4以下の密度では,パラメトリック不安定性のために散乱を受け,遮断密度のより近傍ではp偏光波は共鳴的に吸収され,残りは反射される.散乱・吸収機械は,レーザー光の強度,偏光,入射角度,プラズマの密度勾配によって決まる(44・3参照).
前者のパラメトリック不安定性のうち,前方ラマン散乱では,入射レーザー光が高速に近い位相速度を持ったプラズマ波を励起し航跡場を形成し,自らはそれによって散乱される.このとき,この速いプラズマ波に捕捉されたプラズマ中の電子は,この波の電場で加速され,高速電子となり,レーザーの進行方向に多く向かう.これは前節で扱った航跡場加速である.
遮断密度付近では,共鳴的に励起されるプラズマ波の電場でプラズマ電子を加速する.加速された高速電子は,プラズマ密度勾配の方向に向かう.
レーザー光の強度が極端に強い超高強度レーザーでは,レーザーの集光点付近で周囲のプラズマを描き取り,あるいは周囲に押しつけ,密度勾配がレーザーの周期で電子が進む距離より小さくなることがある.するとp偏光でも共鳴吸収は起こりにくく,レーザーの電場が電子を直接加速する.これを擬似共鳴ともいう130).
また,レーザーの電場Eと磁場Bが直接,E×B力を形成して,電子とイオンを同時に加速する.この場合は,レーザー光の偏光によらないで,レーザーの進行方向に強く加速される.
このような機構で,まず数十keVから数十MeVの高速電子が生み出される.この高速電子は,レーザーの入射方向と密度勾配の方向に依存するが,それが一致する場合は,レーザーの入射方向に強く加速される.この高速電子がγ線のもとになる.
高速電子のエネルギーは,入射レーザー光の集光強度でだいたい決まる遮断密度付近で生成される場合は,レーザーの規絡化強度をa=eE/mωcとすると,加速エネルギーは,γ2=1+a2という簡単な関係が得られる.γはmc2で規格化した電子の全エネルギーである.もっと低密度領域でラマン散乱で生成される場合は,y=2(nc/np)で与えられる.ここでncは遮断密度,npはプラズマ密度である.密度比が100なら,100 MeVである.
46・5・2 特に制動幅射によるγ線の生成
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