【自然放出は真空場の揺らぎによる誘導放出と理解されるようになった】
 ここで、筆者が思い起こすことを記しておこう。重要な物理過程の起源が統計的揺らぎに始まる、という例に、自然放出を思い出す。レーザーの勉強を始めた学生が最初に学ぶのはアインシュタインの誘導放出理論である。1個の原子を考えて、光学遷移だけを考えると、原子や分子のエネルギー準位間の光学遷移には誘導吸収、誘導放出、自然放出が存在する。アインシュタインは外部から侵入した入射光子との相互作用で吸収放出が起こる誘導過程を考え、誘導放出の理論を構築した。そしてその誘導放出確率を、入射光がなくても自然に起こる上順位から下順位に落ちてくる自然放出確率との関係で表現した。レーザーの原理の誕生であった。ただし、自然放出がなぜ起こるか、という点については一切の議論をしていない。元来、1917 年論文が出発点としたのが、黒体輻射の説明としてのレイリー、ウィーン、プランクの式であったように、考察の基礎にあるのは、自然を表すマックスウェル・ボルツマンによる熱分布であった。すなわち、自然はもっともエネルギーの低い状態に安定化していくので、

無料ユーザー登録

続きを読むにはユーザー登録が必要です。
登録することで3000以上ある記事全てを無料でご覧頂けます。
ログインパスワードをメールにてお送りします。 間違ったメールアドレスで登録された場合は、改めてご登録していただくかお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

既存ユーザのログイン
   
新規ユーザー登録
*必須項目