ラマン増幅器は、誘導ラマン散乱の効果から生じるラマン利得に基づく光増幅器である。ラマン活性媒質は、しばしば光ファイバーであるが、バルク結晶、光集積回路の導波路、または気体または液体媒体を有するセルであってもよい。入力信号は、典型的に数十ナノメートル短くなる波長のポンプビームと前方励起または後方励起しながら増幅することができる。シリカファイバの場合、ファイバーコアの組成に応じて、ポンプと信号の間がおおよそ10-15THzの周波数オフセットとなるとき最大利得が得られる。
通信に応用することを考えると、ファイバーラマン増幅器はエルビウム添加ファイバー増幅器と競合する。これらと比較して、ファイバーラマン増幅器の典型的な特徴は以下の通りである:
- 適切なポンプ源を用意すればラマン増幅器は、非常に広い波長領域で動作させることができる。
- 利得スペクトルは、異なるポンプ波長を同時に使用することによって調整することができる。
- ラマン増幅器は、高いポンプ出力(おそらくレーザー安全性の問題を引き起こす)および高いポンプ輝度を必要とするが、高出力パワーを生成することもできる。
- ファイバーの長さを長くする必要がある。しかし、通信システムの伝送ファイバーを使用することができるので、追加のファイバーを必要としない。
- ラマンファイバー増幅器は、ノイズ指数が低い。他方では、レーザー増幅器に比べて、ラマンファイバー増幅器はポンプノイズを信号に直接的に結合する。
- ポンプパワーの変化に対する応答が速い。特に、前方励起ポンプではとても特異な飽和特性をもつ。
- ポンプ波長が偏光している場合、ラマン利得は偏光に依存する。この効果はしばしば望ましくないが、2つの偏光結合ポンプダイオードまたはポンプデポラライザを使用することによって抑制することができる.
通信用ラマン増幅器は、ダイオードレーザーからの連続波光で励起される。前方励起ポンプを使用することにより、超短パルスの効率的な増幅も可能である。しかしながら、群速度ミスマッチの現象は、特にパルス持続時間が1ps未満の場合、有用な相互作用長を厳しく制限する。
ラマン増幅器に使用されるファイバーは、希土類イオンでドープされていない。原則として、通常のシングルモードファイバーを使用することができ、実際には伝送ファイバー自体がしばしば適している(→分散増幅器)。しかしながら、ラマン断面積を増大させた特定のドーパント(例えばゲルマニウム)があり、また単に小さな有効モード領域から生じるラマン利得が増大した特殊なファイバーが存在する。そのようなファイバーは集中ラマン増幅器のために使用され、ファイバーのより短い部分のみが増幅に使われている。
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