医療診断に使われるX線にくらべて可視光のフォトンエネルギーは1万分の1~10万分の1である.したがって,光は非侵製診断の有力なツールとして注目され,早くも1970年代から血中酸素飽和度の測定をはじめとする光診断の基礎研究が行われている.光診断の主要技術は,生体断面の情報を可視化するための断層光イメージング(光トモグラフィー),生体組織および組織成分を識別するための分光(吸光)および蛍光計測,顕微鏡的な生体組織の観察に大別できる.ここで,光トモグラフィーは,厚さ1 cmを超える生体組織を対象とする透過形の拡散光トモグラフィーと,生体表皮下数mmの範囲内で有効な反射形の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)とに分けられる.また,拡散光を用いた光診断技術として,脳表面に沿って血中酸素代謝分布を表示する光トポグラフィーが実用化されている.

以下に,最近の個々の光診断技術の動向を概説する.

(1) 分光計測

ヘモグロビンやメラニンなどの生体内色素の吸収が小さく,かつ水の吸収が低い波長0.7~1.1 μm帯の近赤外光が診断光として用いられる.この光波長域は生体色素や水の吸収が少ないという意味で生休の分光学的窓とも呼ばれる.なかでも,酸素化へモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの等吸収波長0.8 μm付近の近赤外光を用いて,動脈血の酸素飽和度の測定や脳活動に伴う局所血行動態変化の可視化を中心に技術開発が行われている.

(2) 蛍光計測

主に内視鏡と組み合わせて,がんの診断に利用される.腸壁や食道壁などを短波長光で励起し,このとき得られる蛍光ピーク波長のシフトによって正常組織と腫瘍組織を識別する.これはオプテイカルバイオプシー(光生体検査)のキーテクノロジーで,がんの早期診断に有力である.

(3) 拡散光トモグラフィー

生体中で光は散乱され,厚さ1 cmを超える生体組織内では光の伝搬経路を正確に把握することは困難である.したがって,X線CTと同じように,投影データを逆投影して,断面における光吸収分布を再構築することはできない.そこで,生体中の散乱光を拡散光としてとらえ,逆問題解析手法を用いて断面の光吸収分布を求める方法が検討されている.

(4) 光トポグラフィー

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