半導体レーザーは、規定された仕様に沿って用いないと簡単に故障してしまう。このため、使用環境に合った半導体レーザーを選択し、適切な駆動環境を整えることが重要である。半導体レーザーのパラメータや特長はデータシートに記載されている。ここでは、以下の市販されている半導体レーザーのデータシートを参照しつつ、各項目の説明をする。
Sony SLD1332V

目次

1. 外観と概要
1.1 形状
1.2 概要
1.3 特長
1.4 用途と構造
1.5 絶対最大定格
1.6 動作寿命
1.7 ピン配置
2. 電気光学的特性

1. 外観と概要

1.1 形状

多くの半導体レーザーは、放熱や保護のため、金属製の容器に覆われている。市販されているものでは、筒状の金属で覆われたCAN型、長方形の金属容器にピンが左右対称に配置されたバタフライ型が多い。SLD1332VはCAN型である。

1.2 概要

大まかな性能や用途が示されており、その半導体レーザーの性格を知ることができる。

SLD1332Vは発光素子の構造が発光効率に優れた量子井戸 (QW: quantum well)であり、500 mWという高出力な赤色の可視光が得られる。

1.3. 特長

この項では特長が示されている。

以下はSLD1332Vの特長である。

・500 mWという半導体レーザーの中では比較的高出力が得られる。

・活性層が発光効率に優れた量子井戸構造を持つ。

・直径9 mmの小さいCAN型パッケージである。

1.4  用途と構造

その半導体レーザーの仕様に適した用途が記載されている。また、構造が書かれているものもある。

SLD1332Vはレーザー計測器や、プリンタ、ラインマーカのような可視光で高出力光源を必要とする用途に用いられる。この製品では半導体レーザーの構造が書かれており、AlGaAsP量子井戸構造レーザーダイオードである。AlGaAsPを材料とした半導体で構成されており、この材料からは赤色の発振が得られる。

1.5 絶対最大定格

半導体レーザーを使用する上で限界となる物理特性が記載されている。この値を越える範囲での使用は保証されておらず、故障の原因となる。SLD1332Vでは室温(摂氏25℃)での最大定格が記載されている。それぞれ各項目の意味するところは以下の通りである。

光出力

この素子が保証される寿命の内で動作できる最大出力が0.55 Wであることを示す。

逆方向電圧

素子に加える電圧の極性が誤っている状態において許容される電圧を示しており、この値を越えると素子の損傷につながる。この製品は、レーザーダイオード (LD: laser diode) には 2 V、PDには 15 Vの逆方向電圧が許容される。この素子を扱うときはこの電圧を超えないように保護回路を設ける必要がある。

動作温度

保証された動作ができる使用温度の範囲を示す。この半導体レーザーでは-10~+30℃である。

保存温度

素子を保管できる温度範囲を示し、-40~+85℃の範囲で保管する必要がある。

1.6 動作寿命

素子の平均寿命時間が示されている。

SLD1332Vは室温 (25 ℃)、出力500 mWで連続動作させたときの平均故障時間 (MTTF: mean time to failure)は10.000時間である。

1.7 ピン配置

半導体レーザー素子には、発光素子 (LD)の他、PDやTECなどが内蔵されている。データシートには、これら素子のピン配置が記載されている。PDやLDは極性を持ち、接続方向を間違えると簡単に壊れてしまうため、よく確認をして用いることが大事である。

SLD1332Vには、LDとPDが組み込まれている。3番ピンはLDとPDの共通端子であり、+の電極を接続する。1番ピンがLDの-電極、2番品がPDの-電極となっている。

2. 電気光学的特性

スペックシートには、適切に半導体レーザーを駆動するための電気光学的特性表が記載されている。ここではそれぞれの項目を説明する。なお、各値は室温 (25 ℃)における値である。

以下はSLD1332Vの電気光学的特性である。

発振開始電流

半導体レーザーからレーザー光を得るためには、一定以上の電流を与える必要がある。この最低限必要な電流量を、発振開始電流もしくはしきい値電流と言う。半導体レーザーでは、電流量がレーザー発振のしきい値を越えるまではLED動作する。この素子ではレーザー発振を得るために0.4 Aの電流が必要となる。

動作電流

定格出力が得られているときの電流値を言う。この素子では 0.7 Aの電流量を与えると定格出力500 mWが得られる。また、動作電流の最大値は1.1 Aである。

動作電圧

半導体レーザーに印加できる電圧を示し、この範囲を越えると素子が損傷する。その標準値は2.4 Vであり、最大でも3.2 Vに抑える必要がある。

発振波長

半導体レーザーの発振する波長の範囲を表す。半導体レーザーは発振波長の単色性が高いことが特長であるが、温度や製造上のばらつきで発振波長が変化する。光通信などでは、発振波長を厳しく制御する必要があり、使用温度に十分注意が必要となる。この製品では、660 nmを中心として±10 nmの波長シフトが起こりうる。

放射角

ビームの形状が円形で直進性の高いガスレーザーと異なり、半導体レーザーからは、ビーム断面が楕円形状であり、進行方向に対して円錐状に拡がるビームが得られる。この広がり角を放射角と言う。広がり角度はビーム断面の水平方向、垂直方向で異なるため、両方の広がり角が記されている。この素子では、水平方向では4~15度、垂直方向では15~30度である。

発光点精度

これは発光素子の位置精度を規定するパラメータであり、ビームの広がり角の精度と発光素子の位置精度を示す。半導体レーザーの発光素子は0.5 mmにも満たない非常小さなものであるため、製造上の誤差などでずれが生じると、光ファイバーやその他光学素子との結合に影響を与える。このため、意図した結果を得るためには重要なパラメータとなる。それぞれの精度は、設計値と実際の値の差を表す。

この素子では、水平・垂直方向に±4度、±3度の角度誤差があることを示す。また、位置精度は縦、横方向に50 mmの誤差があることを示す。

微分効率

入力電流に対する光出力の比例係数を表す。単位はW/Aである。この素子では1.0であることから、入力電流と光出力が正比例の関係にあることが分かる。

モニター電流

パッケージに内包されている光出力をモニターするためのPDに流れる電流量を示す。この素子では、500 mWの光出力が得られているとき、PDには0.7 Aの電流が流れる。半導体レーザーの光出力は温度によって変化するため、PD出力をモニターしながら半導体レーザーに与える電流量を制御することで、安定した光出力が得られる。

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