YAGはYittrium Aluminum Garnet(Y3Al5O12)と称され、熱的な物性値が優れていることから、現在でも高出力・高繰り返し固体レーザーの最も代表的なレーザー媒質である。YAG結晶の高品質・大口径育成技術は、結晶中心部に内部歪みの多い“コア”の発生抑制やストリエーション(結晶成長縞)の低減等の高度な技術が必要である。近年、Heat Exchange法やStatic Temp. Gradient法、Horizontally Directed Crystallization (HDC) 法等により、コアフリーの大型結晶が得られるようになった。

商業ベースで良く用いられているNd:YAGは4準位系のNd3+を添加するため、Nd3+のイオン半径の大きさ故にYAG結晶中にイオンが入りにくく、融液濃度の約17%(偏析係数0.17)が結晶内に取り込まれるだけである。このため、結晶育成過程において、引き上げ速度を無添加YAGの10分の1程度に抑える必要があるので、大口径で長軸結晶を得るには膨大な時間を要する。また、育成時の温度制御や引き上げ速度の不安定さが結晶品質を大幅に低下させる。この結晶を用いてレーザー発振させた場合、光散乱、透過波面歪みが大きいことにより、レーザー出力が大幅に低下する。
Nd:YAG結晶は硬く、他のレーザー結晶に比べ品質管理が進んでいるために、光学的性質が優れている。また、熱伝導率が他のガーネット結晶中、最も高い特徴を有している。結晶場は立法配位になっているため、その蛍光スペクトル線幅は非常に狭く、誘導放出断面積は大きい。Y3+と置換することでNd3+が入るが、Nd3+のイオン半径が約3%大きいため、Nd3+を多く添加すると結晶場が歪み、溶解しにくくなり高濃度結晶でも約1.1at%が限界である。

近年、固相焼結法によるセラミックスYAG媒質が登場し、比較的容易に大型化が可能となった。高純度99.99%のY2O5、Al2O5とNd2O3の粉末を、シリコンエチルシリケートをバインダーとして混合させ、140MPaのCIP圧力でディスク状に成形後、1750℃で真空焼結を行って製造される。焼結YAGの粒径は約50μmで、光学的に完全等方性であり光学透過率特性(吸収スペクトル)はYAG結晶と同等である。発光スペクトル特性においてもブランチング比率、蛍光寿命217μsは結晶とほぼ同じで、レーザー発振特性においても結晶と同じ入出力特性が得られている。焼結セラミックスでは結晶成長より大型化が容易であり、熱特性が同等であることからも今後が期待される材料である。ここでは、YAG結晶とセラミックスYAGの製造過程、熱的特性、機械的特性、光学特性等について比較を行う。

YAG単結晶とセラミックスYAGの最も異なる点はその製造方法である。従来、YAG単結晶は引き上げ法と呼ばれる育成方法によって製造されてきた。この方法は結晶育成に非常に時間がかかり、育成期間中は結晶付近の温度や材料濃度等を均一に保つ必要があるため、大型で高品質の結晶を製造するのは困難であった。
一方、セラミックスの光学的利用の開始された時期は、Maimanがルビーレーザーを見出した時期にほぼ等しく、1959年R.L.Cobleらによって原料粉末並びに焼結条件として数種類の因子を考慮することにより、それまで不透明なものと認識されていたアルミナセラミックスに透光性という機能が付与された。セラミックスについての研究は1960年代から盛んに研究が続けられ、1973年にはNd:Y2O3によりレーザー発振も報告されている。しかしながら、当時のセラミックスの品質は不十分で、セラミックスの光損失以上に励起を投入することによって無理やりにレーザー発振が行われていた。

1990年代に入り、ナノサイズ微結晶製造技術とセラミックスの真空焼結技術により、非常に高い透光性を有するセラミックスの製造が可能となり、本格的にレーザー工学分野で使用されるようになった。また、セラミックスYAGにおいても各種イオンの共添加材料が製作可能となったことで、フラッシュランプ励起のNd:YAGレーザー高効率化のために、Cr3+を共添加したNd:Cr:YAGセラミックスも本研究で使用している。Cr4+を添加したCr:YAGは波長1μmの吸収を持つことから、過飽和吸収体等として利用されているが、Cr3+は波長440nm付近や590nm付近に広帯域の吸収バンドを有し、さらにCr3+による発光スペクトルがNd3+の吸収スペクトルと一致することから、フラッシュランプのような超広帯域スペクトル励起光でも効率的に利用することが可能である。

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