冷却能力としては高い熱伝導率、比熱を有する純水が最も優れている。しかしながら、波長1μm帯にOH基による強い吸収があるため、冷媒中のレーザービーム透過損失が大きい。透過損失が大きくなると比較的利得の小さいディスク型増幅器には不利に働き、純水を冷媒として使用することは困難であった。純水とほぼ同程度の物性値を有し、波長1μm帯の吸収も1桁程小さな冷却剤である重水の使用も検討したが、非常に高コストであるとともに重水の純度維持が問題となる。
LLNLのMercuryシステムで使用されているヘリウムガスは、純水よりも大きな比熱と1/4程度の伝導率を有しており、冷却剤の候補として十分な物性値である。しかしながら、密度が致命的に小さいために、大きなレイノルズ数を得るには音速級の流速が必要となり、実際のMercuryシステムでも音速の10%程度で高速循環させて使用されている。むろん、装置の大型化は回避することが出来ず、メンテナンス性も必然的に低下する。
本研究では、Nd:YAG及びNd:Cr:YAGの発振波長である1064nm帯における吸収が非常に小さいフロリナートFC-40を採用した。FC-40は1μm帯の吸収係数が10-5cm-1以下であり、化学的に安定で安全性にも優れた冷媒である。下表に典型的な6種類(窒素・ヘリウムガス・純水・重水・FC-40・HT-110)の冷媒の物性値を示す。冷媒の冷却能力は、下表に示した物性値と流速条件から、熱伝達係数の算出で示した算出方法により熱伝達係数として求められる。
N2 | He | H2O | D2O | FC-40 | HT-110 | |
---|---|---|---|---|---|---|
密度 [kg/m3] | 1.25 | 0.176 | 997 | 1105 | 1870 | 1720 |
粘度 [g/cm・sec] | 1.76×10-4 | 1.94×10-4 | 1.00×10-2 | 1.01×10-2 | 4.10×10-2 | 1.43×10-2 |
動粘度 [cm2/sec] | 0.141 | 1.1 | 0.01 | 0.0109 | 0.0219 | 0.0083 |
比熱 [J/gK] | 1.04 | 5.19 | 4.19 | 4.31 | 1.05 | 0.96 |
熱伝導率 [W/mK] | 0.026 | 0.148 | 0.569 | 0.569 | 0.071 | 0.065 |
熱体積膨張率 [K–1] | 3.66×10-3 | 3.66×10-3 | 6.43×10-5 | 6.43×10-5 | 1.00×10-3 | 1.10×10-3 |
熱拡散率 [m2/sec] | 2.00×10-5 | 1.62×10-4 | 1.36×10-7 | 1.19×10-7 | 3.63×10-8 | 3.91×10-8 |
参考
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