高利得を有するレーザー媒質において、自然放出によって誘起されたルミネセンスが、高出力レベルまで増幅されることがある。増幅されたルミネセンスは、低時間的コヒーレンスであるが、良い空間的コヒーレンス(以下を参照)を持つ光が必要な場面で用いられる。自然放射増幅光はレーザーでも起こり、時には、レーザー発振閾値以下でも起こる。

ルミネセンスは、元々全空間方向に進むのに対して、ASE(自然放射増幅光)はアスペクト比の大きな利得媒質方向に強い指向性を持つ。極端な場合として、ファイバーレーザーや、光ファイバー増幅器を考えると、ファイバー方向のASEの伝搬は、無指向性ルミネセンスよりも、断然強いものとなる。

レーザーや、特に高利得増幅器では、自然放射増幅光は、ふつうは不要な効果である。自然放射増幅光によって、シングルステージのファイバー増幅器で得られる利得を、40-50 dBのオーダーまで制限してしまう。例えばパルスの増幅等、フィルターや、ファラデーアイソレーターそして光変調器(スイッチ)で分離されている複数の増幅器のステージを用いると、さらに高い利得値を実現できることがある。もし、他の波長における利得が強いASEを生み出せるほど強ければ、ASEによって、ファイバーレーザーが、極端な波長で発振することを避けることができる。そういった問題は、ファイバー長やドープレベル等に特に注意して、レーザー全体の構成を最適化することで解決できる。また、不要な波長でのASEは、欲しいスペクトル領域外で高い伝搬損失を持つ仕様のファイバー(例 フォトニック結晶ファイバー)を用いることで抑えることができる。同様の試みが、バルクレーザー関連で行われている。例としては、1064 nmの強いASEを持つ946 nmで発振しているNd:YAGレーザーで、946 nmのASE発振を抑えることができる。

たとえ、増幅器内の自然放射増幅光が大きな出力を引き出すほど強くないにしろ、自然放射増幅光は、増幅された信号のノイズに大きく寄与する。レーザー増幅器のノイズ指数は、ASEによって制限されると考えられる。準3準位利得媒質におけるASEの影響は、4準位媒質よりも大きいことに注意すること。

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 1: RF Fiber Power software で計算した、フォワードパンプされたイッテルビウム添加ファイバー増幅器における順方向および逆方向ASE スペクトル。特に、準3準位利得媒質では、ASEスペクトルは、自然放出のスペクトルと大きく変わることがあり、また伝搬方向に大きく依存することがある。

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